緊急事態!?
ちょっとベトベトしたようなその空間は、とても居心地が悪かった。
生暖かいような風がどこからともなくふいていた。
「ヴぅぅぅ~」
底の方から叫ぶようなうなり声が聞こえる。
「あ」
少しづつ明るくなっていった。その先に緑色の『何か』が見える。
「え?って、驚いてる暇ない!ゆ~か~り~!!!!HELPME!!」
{芽以出てこれる!?}
ここから私どう出るの!?
「ダメ!!下がベトベトしてて足が滑る!」
{だよね~・・・}
のんきに言ってる場合じゃないでしょ!!!
「てか、ここどこなの!?」
{ん~驚かないで聞いてよ}
だから早くしゃべってよ!!
{トリケラトプスの口の中}
「っ!!!!!!!!!」
そんなことを話している間に、その口は緑(おそらく、というか確実に葉っぱだとおもわれるもの)に近づいていく。
や、やばい感じ~!?
このままじゃ、葉っぱと一緒に私はトリケラトプスの胃の中に!!??
「ぃや~~~!!!!」
外に向かって滑る舌の上を全力で走った。
なんとか口先まで言ったはいいものの、大きな恐竜から地上に飛び降りるというのは、そこまでの高さが無くとも、上を向いているわけだし少し怖い。(まあ、空から飛び降りた私が言うことじゃないけど)
「ほっ!」
ジャンプしてすぐそばの枝につかまる。
小さいころから山や森に行った経験が、こんなところで役に立つなんて・・・。(木登りは結構得意だったんだよね)
するすると幹へ近づき地上に降りる。
{芽以スゴイ!!}
「でしょ?」
由加里の声がした上を見上げながら言う。
「うっわ」
私はあの口に中にいたのか・・・。
10mはあるんじゃないかと思うほど長い体長。3つの大きな角は少し痛そうだ。
{芽以、大丈夫だった?}
なんとかね。
{ならいいけど・・・}
・・・ねぇ、由加里。恐竜のいる時代に、『黒い心を持った人類』いないよ?
{うん、『黒い心を持った人類』はいないけど、『黒い心を持った恐竜』はいるよ?}
・・・え??
{バグっちゃったんだから、やるしかないよ。頑張ろ!}
で、でも、恐竜としゃべれないよ?
{大丈夫!言葉通じるから!}
大きさ違いすぎて、こっちに気づかないかもよ?
{大声で叫べば何とかなるでしょ?}
肉食恐竜とかに食べられるかも!
{頑張って逃げるか、頑張って分かり合おうね}
・・・。
{口、空いたまんまだよ?}
・・・。どれが、黒い心を持っているんですか、由加里さん。
{わっかんない}
は?
「ちょ、ちょっと待って!!わっかんないって何!?わっかんないって!」
この妖精、何言っちゃってんの!?
{話してみないと心なんてわかんないもんだよ}
いやいやいや。なに悟ったように言っちゃってんの!?
{いいから、行くよ?}
・・・納得できない。
{納得してもらおうなんて思ってないよ。私はただ芽以に、まず黒い心の持ち主を探してほしいの}
何それ。
{お願い}
・・・わかってるよ。やらないとだめなんでしょ?
{ありがと}
はぁ。いこっか。
{うんっ!}