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出会い

翌日の早朝、だと思われる。


冷水をかけられて目が覚さめた、気分は最悪だ。ビックリしすぎて寿命が縮まっただろうか、心臓がバクバク言っている。そんな瞬間頭脳覚醒水(グッドモーニング)を用意してくれた人物を探すと、そこには体全体を黒いローブで覆った背の低い人が立っていた。

「どうだい、私からのサプライズは?」

アヒル声であり、棒読みという明らかに人間とは思えないような声が聞こえてきた。俺には彼だか彼女だか知らないが、到底、声真似できないだろう、いや、縁日で売っているヘリウムガスを吸えばできるかもしれない。

「ありがとうございます、おかげで目が覚めました、あなたが人間かどうかわからないくらい声を持っているので、疑えるくらい目がとても冴えてます。なんのようですか?」


皮肉を持ちながら言う。


「それはそれは、わたしの魔法を喜んでもらえてなによりです。今日はあなたに報告があって来ましたので一応耳に入れておいてください。

単刀直入に言うと、あなたは買われました」


「へ?」


「あなたは奴隷として、この人間界の汚点であり囚人の溜まり場である、光無しの牢獄(ライトエンドプリズン)のとある人物の使用人として働くことになりまたした。拒否は不可能です、いまから出発するので目隠しをさせてもらいます。」


事情が良くわから無いが早速俺は売却されたというのに気付いた。この牢獄から出れるのは良いが、物凄い治安の悪そうな所に売られていく、というのがすごく不安だ。これから馬車馬のように働かなければならない、かもしれないものと比べれば、まだここの方がよいかもしれないが。

「ちなみにその光無しの牢獄(ライトエンドプリズン)とはどのくらい危険なんでしょうか?」

「そんなの自分の目で確かめれば早い、あまり遅いと依頼主に文句を言われるから少し気絶していてくれ。」


ローブの男はそう言い終わった瞬間フッと消えた、こんな時は後ろに瞬間移動することがテンプレだが、俺はあえて上をみる。

「テンプレで悪かったな」

そんな後ろからの抑揚の無い声が聞こえた後に、俺の意識はブラックアウトしていった。俺はこの瞬間にこの牢獄との別れを告げた、悪い思い出しかないけどね。



☆★☆★☆★☆



冷たい。

気絶していた俺に水がかけられた、本日二度目の瞬間頭脳覚醒水(グッドモーニング)だ、相変わらず気分は最悪だ。ローブ男を探すがいない、と言うよりも俺の今居る場所ははっきり言って馬小屋だ、藁が積んである所に俺は寝かされていた、あの硬いベッドの、数倍心地悪いということは、どれだけベッドがあるということが良かったということを思い知らせられる。本当に馬がいたのであろうか藁から悪臭がする、吐きそうだ。吐き気を我慢し起き上がりステータスをチェックする。


轟崎 流星

Lv:1

HP:25/25

MP:15/16


志操(しそう):割り箸

技志(ぎし):ただの衣


体力は全回復しているようだ、ステータスのチェックにはMPが1必要のようだ、PADのバッテリーは魔力なのだろう。

MPを使えば最大MPも増える。と今はいない、某裏切り者から貰った本に書いてあったからそれも実験しなければならない。


ステータス画面を開いたり閉じたりする、1ずつ減っていき、0になったが再度開くとHPが3減った、どうやらMPが切れると消費MPの3倍HPを削られてしまうようだ、迂闊に効果力の魔法を連発してしまうと即死する可能性があるのは恐ろしいと思う。肝心な最大MPは上昇していなかった。簡単に容量を上げられる程そう甘くはなさそうだ。


「起きたようだな」


渋い声が聞こえてきた、太った50代のおっさんだ、見た目からして金持ちそうだ。


「今日からここで寝泊まりしてペットの面倒をみてもらうぞ。ほら、キャベツ、こいつにブラッシングしてもらえ。」


後ろにいた生き物が建物の中に入ってくる、例えるなら狼に例えられそうだ、大きさで例えるなら大型犬の2倍くらいの大きさで、色は紺、突き刺すような黒色の深く鋭い瞳を持っている、今にも飛びかかられそうだ。


「さあ、遊んでやれ、キャベt」


言い終わる前にキャベツという、ちょっと変わった名前の狼が主人の喉元に食らいついた。勢い良く血が飛び散りあたり一面が血の海へと変貌した。俺は光景がショックすぎて固まってしまった、静まり返った建物の中でブチブチクチャクチャと雇い主だった塊を咀嚼する音が聞こえる。数分、いや、数秒かもしれないが咀嚼をやめてキャベツはこちらを見た。口についた肉と血を舌でペロリと舐めるとこちらに喉を鳴らし近づいてきた。

一応割り箸を取り出し、パシッと割って身構える、何も無いよりマシだと思いたい。っていうか俺って今、絶対絶命のピンチだよな。笑えない


キャベツは一気に助走をつけて喉元に向けて飛びかかってきた、すがさず俺はキャベツの両目に割り箸を突き刺した、いくら速いといっても行動はバレバレだ、もし違う手段で来たら俺は対処は無理だったであろう。


地面に落ちてピクピクしているキャベツに眉間に割り箸を突き立ててトドメをさした、案外、動物を殺すのに自分の心は抵抗しなかった。これがもし人や人型のモンスターでは、また違ってくるのだろうか。


動かなくなったキャベツを前に立ち尽くす。障害は亡くなった。今からすることは状況整理だ。


雇い主が死んで、飼われていた狼も俺が殺した。辺りには静寂が訪れ、自分の荒い息遣いだけが聞こえる。狼を見ると、白い粒子状になっていく、それがふわふわと俺の中に入っていく。


粒子が俺の体に入っていくと、少し力がみなぎった気がしたのでステータスをチェックすると変化していた。



轟崎 流星

Lv:3

HP:57/57

MP:15/16


志操(しそう):割り箸

技志(ぎし):ただの衣



雇い主だった塊の様子を見るが、服などはキャベツに引き裂かれてしまっているので着れないと予想できる。今の俺はパンツ一丁だ、なんとかしなくちゃいけないので着れる部分を探す、血が手に着くが気にしない。探してくうちに一つの袋を見つけた。


ゴソゴソと漁ってみる、金が入っていたら吉だろう。というより小さい巾着袋のはずなのに、どこまでも手を入れることができる、四次元ポ○ットはこんな感じなのではないだろうか。

PADの持ち物欄を見ると、中には奴隷の服が二着入っていた。奴隷の服の表示を意識して袋をガサガサすると、手にゴワゴワした感覚が伝わる。引き抜いてみると、とても簡素な作りをしているボロボロの服が出てきた、ノミが湧いてそうな服だ。我慢してそれを着るがめちゃくちゃ痒い、すぐに脱ぎたいが我慢する。そして自分に言い聞かせる


無いよりマシ、あった方が良い、マッパよりもマシ、と。


だいぶ痒みが落ち着いてから周りの状態を把握する、死体2つと藁の塊があるだけだ、キャベツを道具袋に入れる。ちょっと近づけるだけでスルスルと入っていった、とても便利だ。持ち物を見てみると"キャベツ"と追加させられていた。


これは間違ったら大変なことになりそうだ。主に料理中に取り出したら、と考えるとシャレにならない。


とにかく、危機は脱出したし雇い主の靴を拝借して外にでる。光無しの牢獄(ライトエンドプリズン)

とは言ったものだ、辺りは薄暗く全体的に汚い、漂ってくる匂いは刺激臭だ。周りには薬をやっているのだろうか、ガリガリの人達が奇声を発しながら争っている、俺の精神は限界を迎えていた。ただでさえグロテスクな現場を見てグロッキーだった俺がこんな糞みたいな光景を見て耐えられるはずがない。


俺は走りだした。いわゆる現実逃避だ、だがすぐに止まる、薬中っぽい身長2mはあるくらいの、スキンヘッドの人にぶつかってしまった。


「すみません。」

「おいおい、いてーじゃねーかよっ!!」


いきなり右頬を拳で強打してきた、フラフラしているところを頭突きをされて視界がブラックアウトした。あ、俺死んだな、そう思った瞬間であった。


☆★☆★☆★☆


起きたら独房の中だった、水をかけられずに目覚めることができたのは少しだけラッキーかもしれない、痛みの残る右頬をさすりながら周りを見る。


「気がついたようだニャ」


そこには女性がいた、俗に言う獣人なのだろう、薄暗くあんまり見えないが猫耳と尻尾を生やしている。


「あんたも大男に連れられてきたのか?」


そういうのにツッコむ主義は無いので本題に入ろうとする。


「ああ、そうだニャ、ところでお前さん、狼を連れた太った50代くらいのおっさんを知ってるかニャ?」


「ああ、知ってる、俺の雇い主のはずだったっぽいが、狼に食い殺された。」

「そうだったのかニャ、ほんとうはわたしもその修羅場にいる予定だったニャ。」

「じゃあどうしてここに?」

「それは来る途中のことニャ、スキンヘッドに絡まれて、臆病な雇い主がわたしをスキンヘッドに譲ったのニャ、ちなみにわたしの名前はルクレースだニャ、よろしくニャ!」


薄暗く見えないが多分笑顔になっているであろうルクレースと名乗る獣人はサラッと自己紹介も言う。


「おお、よろしくな、俺のことはリュウセイって呼んでくれ。」


かくして俺は気の会いそうな女の獣人と出会ったのである。出会いは最悪だが仲良くなれる、そんな気がした。



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