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裏切り


え?


俺は今動けずにいた。なにしろ喉元に武器を突きつけられて動けない状態にある。


「な、なんですか?」


「罪人に話すことなどない!とにかく来てもらおうか!」


全然意味がわからない、なぜ俺が罪人なのか、まだ悪事はしていない…はずだ。ただわかるのは一つだけ、相手は多分相当強い。やはり泥棒退治のエキスパートなのだろうか、割り箸でどうにかなるような相手ではないことは見た目と武器で理解できる。もしかしたらオースティンと同格、いやそれよりも強いかもしれない。


「罪人って、俺は何もしてませんよ!」


「嘘をつけ!お前の持っている本はこの間オースティンが無くして捜索願いを出しているものだぞ!ここにきたのはどうせ貴重品を盗むためだろう!」


なんのことだろうか、俺の持っている本はオースティンから貰ったものだし、ここはオースティンに連れられてきたところだ。オースティンがここに戻って来れば身の潔白を晴らすことができるはずだ。彼が帰ってくるのを待つ。


「なんだよ黙りこくって、さっさとついてこい!」


俺はゆっくりと歩く、願わくば倉庫から出る前にオースティンに助けられることを。


とうとう倉庫から出てしまった。オースティンは現れなかった、トイレってどこにあるんだよ。それにしてもトイレ長いよ。


「おお、オースティンじゃねえか、ようやく見つけだぜ!例の、こそ泥をよ」


うつむきながらノロノロ歩いていた俺だったがその声を聞いてパッと前をみる。

そこには救世主となるはずであろうオースティンがいた。

これでようやく無実を証明できる…


「おお、よく捕まえてくれたな、褒美を給料に加算しておこう。」


は?今こいつ、何て言ったんだ、まるで俺が本当の犯人ってことじゃないか。


「オースティンさん、俺ですよ、ここの倉庫で待ってろって言ったじゃないですか」


俺は抗議の声をあげる。


「は?知らないな。誰だお前は?」


なんなんだよコレ、俺を知らないってどういうことだよ!

ハメられた?まさか今まで親切にしてくれた人にいきなり裏切られるとは思っていなかった。


「誰だって…それはないでしょう!先日から今日まで、あんなに親切にいろんなことを教えてくれたじゃないですか!」


「さあな、人違いじゃないか?

犯人逮捕協力感謝する。下がっていいぞ、あとは俺がやっておく。」


そう言って体格のいい男を後ろに下げさせる、大男はこの場所を去って行った。


「今言ってたことって全て嘘なんですよね?この場を逃れるためのハッタリですよね?」


俺はオースティンにすがるように聞く。


「うるせーな!じゃまだ!俺はおメーみたいな異世界人が大嫌いなんだよ!!」


蹴られた、とても痛い、スライムのタックルと同じくらいの威力だ。さすがは元プロの冒険者、体術もなかなかだ。


「な、なんで親切にしたんですか?嫌いなはずなのに…」


「 そんなの知ったこっちゃない。あえて言うなら、上げて落とせば、より深く絶望すると思ったからな。」


「そ、そんな、信用してたのに…」


「とにかくお前の罪名は窃盗と不法侵入だ、奴隷牢獄の刑に処する!」


どす黒い感情が心のなかを渦巻く。俺が何をしたって言うんだ、いや、何もしていない!どうしてこんな目に合わなければいけないんだ!理不尽だ!こんなことになるならまだ元の世界の方がマシだ!


手錠をかけられ強引に引きずられる中、そんなことを考えているとオースティンが話掛けていた


「そう思えば、お前、職に就きたいって言ってたな、じゃあ就かせてやるよ!ほぼ意味のない職業、ブラックスミスになぁ!実戦じゃ使えない武器でも作ってろ、まあ奴隷に武器創る権限はないがなぁ!」


めまいがしてきた、怒りが心を蝕む、ただ冒険を楽しみたかっただけなのに…これからタクロウも見つけないといけないのに…奴隷ってなんなんだよ…誰かに売り飛ばされて、一生異世界で働くなんてまっぴらごめんだ。何もかも今、目の前にいるオースティンが悪い、殺してやる、ゼッッタイ殺してやる!

それでも今、殺せるような武器もないし、割り箸でどうにかなるような相手でもない、オマケに手錠付きだ、

唇を噛みしめる、ツーっと出血する、悔しくてたまらない。


「どうした?そんなにも悔しいのか、目がひどいことになってるぞ、だがその絶望に染まった表情、見てて飽きない」


いつの間にか俺はオースティンを睨んでいた、小学校の時に、俺の友達の鉛筆を盗んで、俺のランドセルに盗んだ鉛筆を入れて、帰りの会で、俺が鉛筆を盗んでランドセルに入れた、だとかヘラヘラしながら暴露した盗人クソ男を睨んだ時と同じ、いや、それ以上、殺さんばかりに睨みつけていた。自分の感情をうまく整理できない。


「ほら、着いたぞ、こっち来い!」


牢獄に着いた、どうやら牢獄は地下施設のようだ、一本の階段が下まで続いている、まるで入ったら永遠と出て来れない奈落の底というイメージだ。

どんどんと階段を下って行く、200歩目くらいだっただろうか、場所に着いたようだ。そこには小さな牢屋があり簡素なベッドが置いてあるだけであった。


「共同部屋じゃなくて個部屋というのに感謝するんだな、まあここではそう長くは居ないと思うけどな」


そう言ってオースティンは俺の着ている物をパンツ以外全て奪った、もちろん本もそうだしオースティンのへそくりでもあったお金もそうだ。


「じゃ、これで俺は失礼するぞ、と、その前に奴隷にしとかないとな、『このものに絶対服従の印を刻め!奴隷化!!』」


すると俺の左手の甲には棒人間に罰が着いたマークが浮かびあがった。大方、人権はありません!とでも言っているのかと思うけど実際どうだろうか、俺にはわからない、というよりも理解したくない、自然と脳が理解という絶望を拒んでいる。


「では、これにて」


「てめぇ!!いつかゼッッタイ殺してやるからなー!俺にこんなことしといてタダで生きてけると思うなよーーーー!!!」


ガンガンと格子戸を揺らし、言いたいことをぶちまけた、少しは怒りが収まってきた、


「ふん、負け犬の遠吠えだな」


そう言って帰って行った、俺は唐突に虚しくなる、これからのことが本当に不安になる、アドレナリンの分泌が収まってきたようでズキズキと蹴られたところが痛む。


ああ、これは夢なんだ、彼が裏切るはずがない、何か悪い魔物にでもとりつかれてしまったのかな、とりあえず寝てみるか、ここになって冷静に考え出すと切りが無いから夢オチを信じてベットに横たわる、とても硬い、眠れたもんじゃないが疲れているということもあって次第に意識レベルが低くなっていく、


夢オチだったらいいな


そんなことを考えながら俺の意識は深い闇に蕩けていった。裏切られることは嫌いだ。



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