防具と職業
かくして俺は割り箸が武器と
なってしまったわけで、ハードモードを感じつつある。だが、なるようにしかならないので、これも俺の運命だと決めつけるしかない。
「武器の形状ってどうやったら変えられるんですか?」
「方法は一つだけある。敵を倒して行くと、武器のレベルが上がる、レベルが上がると形状が変化していく、かもしれない。
もちろん急に強くなるわけではなく緩やかにだ。」
自分に対する怒りで割り箸を強く握っていた。
握りすぎて湿ってきた、気持ち悪い。
武器のことをくよくよ悩んでいても仕方ない。防具こそしっかりしようと思いオースティンに聞いてみる。
「防具ってどうなってるんですか?」
「防具は技志というんだ。これは最初からみんな纏っているんだ。もちろん魔力を持っていない人は持っていないがな、そんな人はすごく少ないんだ。」
「え?じゃあ今も俺やオースティンさんも纏っているんですか。」
「その通りさ、ちょっと俺の腹に全力で攻撃してみろよ」
中指を立ててオースティンは挑発してきた、俺はせっかく殴っていいのなら全力で殴ろうと思った、別に挑発にのったわけではない、初めに注意情報を教えてくれなかった彼が悪いのだ。
割り箸を一本にまとめて助走をつけてオースティンに突き刺す、もちろん致命的なダメージを与えるつもりだ。恨みはないがな。
結果は俺にダメージがきた。何度も言うが割り箸が悪いのだ。オースティンの腹に割り箸で突き刺そうと、もう少しで腹に届く直前に何か硬い物にぶつかった。汗で湿っていた割り箸が運悪く滑って俺の手のひらに深く突き刺さってしまった。めちゃくちゃ痛い。割り箸を引き抜いて膝で半分に割ろうとしても割れない、なぜならもう半分になっているからというわけでもなく、割り箸自体がとても硬いようだ。
「はっはっは、身を持って実感したようだね。技志は見えないのさ、いうならば透明のフルアーマーかな。これは魔力を上げていけば強くなり、特定の効果も付与されるようになるんだ、ちなみに俺の技志には、弱者の攻撃は衝撃を吸収し反撃する効果もついているんだ。」
「それを最初に言ってくださいよ!怪我しちゃったじゃないっすか」
手のひらからの出血が痛いし、膝で割り箸が割れなかったのも、とてもショックで泣きそうだ。
「すまんすまん。回復の魔法は得意じゃない。
治癒の神よ、我に力を与え我に協力するものの傷を癒せ! リカバー!!」
みるみるうちに傷が回復していく、とても便利だと思い、これがもし元の世界で使えたら人間国宝だと思うと、残念な気持ちでいっぱいになる。
「とりあえず武器と防具の説明が終わったから次は職業だな。」
「職業ですか、確か偉い人が任命することができるんでしたよね。」
「ああ、一応俺も任命できるさ、今決めるか?」
「決めたいですけど何があるんですか?」
「おいおい、その本に書いてあっただろ、よんでおけよ」
俺は割り箸をポケットにしまって持って来た本を読む、この本、付箋が貼って調べやすい。
職業とはそれぞれ自分がなりたい職業をイメージしておけばなることができる、マジックカードで確認可能。職業によって能力に補正がかかる場合がある。主としての職業は
戦士
・攻撃力が上がる
・体力が上がる
魔法使い
・知力が上がる
・魔力が上がる
弓使い
・運が上がる
・攻撃力が上がる
僧侶
・知力が上がる
・魔力が上がる
盗賊
・素早さが上がる
・体力が上がる
商人
・体力が上がる
・知力が上がる
などがある、これ以外にも職業は沢山あるが紹介しきれないので割愛させてもらおう、あとはユニーク職業があってそれは人それぞれだ。適性力が高いので能力補償される 。職業にはジョブレベルというのが設定されており、それが上がっていくとその職業の上位互換の職業につくことができる。ジョブレベルのあげ方は職業に合った行動を取れば上がっていき、上がるに連れて職業保証も増えていく。
と記述されている。職業につくデメリットは特に無いので就いていた方が得策のようだ
「ユニーク職業ってどうやったら確認できる?」
「それは任命ができる人にしか確認できないんだ。 ちなみに君のユニーク職業は『槍使い』と「ブラックスミス」だ。槍使い自体はユニークじゃないけど上位互換が化ける可能性があるんだ、しかしブラックスミスは聞いたことないな…」
「そうなんですか、では早速槍使いにしてください。少しでも早く冒険に出て見たいんですよ。」
鍛冶屋なんて毛頭興味は無い、少しでも攻撃力をあげるためには槍使いは重要だと思ったらからだ。
「まあまあ、焦るなって、職業を変えるのには時間が大切なんだ、時間は夜になり始めた夕方が丁度いいのさ、時間つぶしに倉庫にでも行ってトリップセットでも整えるか。」
俺たちはギルドの裏側にある倉庫へと向かった、とても大きな倉庫でいろんなものがありそうだ。もしこの倉庫に泥棒が入ったらどうなるのだろうか。
「こんな大きな倉庫、よく泥棒が入りませんよね。」
「ああ、それなら問題無しだ。泥棒退治専門のエキスパートを常時やとっているのさ、もし盗みなんて働いたらあそこに行くことになるからな。」
泥棒退治専門とかいるんだな、元の世界でもいたけど警察みたいなもんなんだな、さぞや給料が高いだろうに。
そんなことを考えながらオースティンが指差している方向を見る、そこには物々しい建物が立っていた。
「あれなんですか?」
「ああ、あれは牢獄だ、冒険者だろうとトップシークレットだろうと入ってもらわなきゃいけない場合は入ってもらう場所さ。事件なんて起こすなよ、身元が異世界とか、どうなるかわからん」
「そんなことの無いように気をつけます。」
気を撮り直し俺たちは倉庫の中に入った、明かりが灯っていて暗くはなかった。
「悪い、俺ちょっとトイレ言ってくるから待っててくれ、倉庫の中見ててもいいぞ。」
そう言ってオースティンは急ぎ足で去って行った。
俺はゆっくりと倉庫内を見る、装飾物から生活用品までいろいろな物が置いてあった。その中でも一番高価そうなものを大きな荷物の裏側で見つけた。それは淡く光っており神秘的なオーラを出していた。俺はそれを手に取ってみる。すると体の中にスッと入って行ってしまった。
「お前は誰だ!」
ドキッ!とびっくりして俺は後ろを振り向く。
「動くな!」
そこには大柄で体格の良い男がこちらの首元に長剣を突きつけて立っていた。これってまさか、さっきオースティンが言ってたエキスパート?