ギルドマスター
『好きこそ物の上手なれ』ということわざがあるじゃないですか? 好きなことは上手くなれる自身がある。今まで中途半端に生きてきた俺にも上手くなりたいと思った物がなかったな
★★★
目が覚めたら建物の中にいた。ベットの中だ、高級ではない。ゴワゴワという心地があんまり好きではない。
「目が覚めましたか?」
「はい…」
「申し遅れました私の名前はロザリンド = カータレット、この修道院で働いている一人です。」
カータレットと名のる女性は、水の入ったコップを俺に渡してきた。彼女は赤毛ロングの高身長、スタイル良しと、なかなか整った体型をしていた。顔はどちらかというとアメリカンであった。赤毛も天然のようだ。
俺は渡された水を一気に飲む。日本と同じか、それ以上に美味い。水ごときにお金は出せない所にすんでいたが、高級レストランで出そうな美味しさであった。
周りを見渡すと日本の住宅とは全く違う作りをしていた。何と言っても天井が高い。あとは機械類がまったくないことだろう。時計も無い。
緊張が解け、我に返ってみると、痛い、全身が痛い。腹の痛みもあるが足も痛い。
そう思えば、スライムにやられて倒れる前は満身創痍だったな。一日やそこら寝ていただけでは治らないはずだな。
「怪我をしていますね。今から治すんで少し、辛抱しててください。」
「回復の神よ、我に力を与え我に協力するものの傷を癒せ! ファルア・リカバー!!」
は!?今なんて言った?こんなことを学校のクラスで言ったら確実クラスで浮く発言をしたぞ。
約一秒のタイムラグの後に俺を淡い光が包み込む。その光は暖かく安らぎを与えてくれるものであった。その安らぎの中で数秒ゆったりする。次第に光が消えていく、俺は余韻を楽しんでふと我に返る。あんなに痛かった身体中が痛くないのだ。あんなにあちこちボロボロだった身体の異常が。
「これは…なんですか?」
「魔法ですよ。体の調子は大丈夫ですか?」
「魔法、ですか…一応体の方は大丈夫です。」
「記憶が消えてる可能性がありますね。状況の把握ができずに混乱していると思うのでもう一眠りしたらどうですか?」
「そうします…」
俺は遠慮なく布団に入り、今起きたことを理解する。今のは魔法であった。
この異世界は魔法が使えるということ。それと魔法は特別ではないということだ。正直なんにもわからないから記憶喪失ということにした方がいい。そういうことにしよう。
そんなことを考えながら再び眠りへとつく
★★★
「ん〜よく寝たな。」
背伸びをしてベットから起き上がる。同時に軽く絶望する。『夢』では無かったんだ。夢なら良かったんだがな。先行きが不安だ。
「目が覚めましたね」
「はい…」
「記憶は元に戻りましたか?」
「いえ、曖昧というか無くなっているっていうか…」
「それは大変ですね。あなたはこの街の近くにある林の中でモンスターに襲われているところをこの街のギルドマスターが助けたんですよ。」
「ギルドマスターだったんですか。お礼を言いに、会いに行くことってできますかね?」
「大丈夫だとおもいます。彼も最近は暇でしょうし」
「ではお礼に行きたいと思います。場所ってどこですか?」
「ここの修道院から出てまっすぐいったところの右側にあります。道中気をつけてくださいね。外傷は治しましたけど体力はあまり戻ってないと思うので。」
「はい。ありがとうございます。では、行って来ます。」
俺はそんな機械的な会話をして外に出ようとすると、彼女に止められた。
「あなた、名前はなんて言うの?」
「おれの名前は轟崎流星です。多分これからもお世話になると思います。」
「流星さんですか。困ったことが会ったら私に相談しにきなさい。聖職者としてバックアップしますよ。記憶喪失は大変でしょうから…」
「ではお言葉に甘えて、そうさせてもらうとします。まずはお礼に行きます」
そう言って俺は修道院の外にでた。外は晴天だった。周りの建物はテレビで見たようなヨーロッパ風の建物であった。どうやらこの修道院はメインストリートの中心部に位置しているらしく、ドアを開けたら正面の大通りが良く見渡せた。
黙々と歩きギルドを目指す。大通りでは、店屋の宣伝や立ち話が聞こえてきた。なぜ、あの聖職者や、道端で話している人々に日本語が通じるのか不思議でしょうがない。
そんなこんなでギルドの前についた。建物は至って普通だが、中はどうせ荒々しい筋骨粒々の戦士やら剣士が俺を見て笑うというテンプレに発展すると思うので、俺の不安を煽る。
中に入ってみるとやはり起きてしまった。まさにテンプレだ…
「なんだあのボロボロの格好、みっともねぇ」
などの声がコソコソ聞こえた。確かに今の服はスライムに溶かされてしまったのでボロボロだ。
なぜカータレットさんは服を用意してくれなかったんだ、助けてもらって「服欲しい」とか言いにくいんだよ。それぐらい察してくれよ…いや、そもそも用意する必要なんて無い、他人の善意に甘えすぎた。
俺は聞こえてくる罵声を鍛え上げられた鋼の心によって聞こえなかったことにする。
ストレスが溜まって行く中、カウンターにつく。
「どういったご用件でしょうか?」
「ギルドマスターに会わせてください。」
「わかりました。では右の通路をまっすぐ行った突き当たりに部屋があるのでご自由にどうぞ。」
受付嬢と会話をして歩き出す。ギルマスがアポなし面会OKとかどんだけ暇なんだよ。
マスター室へとつく。ノックをする、3回だ。これは面接での教訓だ。
二回じゃトイレだ
マナーも気をつけなきゃいけないのもストレスがたまる。ここは日本では無いのだ。というよりも日本のマナー=『ここ』のマナーじゃないというのはめんどくさそうだ。
どうぞ。
中から声が聞こえてくる。俺はドアを慎重に開けてマスター室へと入った。この部屋はマスターのコレクションが多そうだ。死んだ生き物やモンスター、虫までいろいろの剥製が管理されている。どうやらギルドマスターは剥製を見るのが趣味のようだ。
「君は…」
「この間林の中でモンスターに襲われている時にお世話になりました。ありがとうございます。」
「そうか。俺の名前はオースティンだ。この街のギルマスを務めている。」
彼は身長は高く、暗めの茶髪で優しそうな雰囲気だ。彼の隻腕は今までの過酷な経験を数々の剥製と共に
物語っている気がする。
「折り言って質問があるんですけれども良ろしいですか?」
俺は言う。
「いいよ。俺も今は暇だからな、聞きたいことを聞けよ。言える分は話してやる。」とオースティンと名乗った中年男性は言う。
「この剥製ってコレクションなんですか ?」
「おお、良くぞ聞いてくれた、これは、いままで倒して来たユニークモンスターの剥製だ、かなりレアな物が多いぞ。って、それ、本来の質問と違うだろう、なんでもいいから言ってみろ、知ってることは教えてやる。」
「俺は違う世界から来た。って言ったら信用しますか?」
雑談もそこそこにして。本題に入る。オースティンは少しの沈黙の後に
「信じるぞ…」
さっきの自慢げな顔が一変し、いきなり深妙な顔になり、言葉を続けた。
「俺は異世界から来たという人を知っているんだ。」
なんだと…
いきなりの爆弾発言をしたが爆弾発言で帰って来た。
「俺の知っている異世界から来た奴は、魔法が無く科学が発展している世界から来たと言っていたがお主の世界もそうだったのか?」
「はい。魔法を使っている人なんて見たことないですし、ここよりかは便利な道具があり、文明が進んでいると思います」
「やっぱりそうか、これは驚いた。まさかこの世界の住人でもない人にもう一度会えるとは! これは神様に感謝しなきゃな。」
彼はこどものように、はしゃいで嬉しそうだった。そして机の引き出しから水晶玉を取り出す。
「これは魔力を測定できる道具だ。どのくらいの能力素質があるのか、何の魔法に適性があるのかが、だいたいわかるという便利なものだ、それでもこの水晶玉は希少価値が高く、質の良い魔力をたっぷり時間をかけて充電しなければいけないし、どんなに魔力を注いでも使い捨てだ。そのため一般では使われなくなってしまったんだ。」
「なんでそんな物使ってるんですか?明らかにコスパ悪いんではないでしょうか?」
「そうなんだがこの水晶玉の的中率は95%と高めなんだ。故に魔術の才能を知りたい冒険者見習いなどがこぞって大金をはたいて使うんだ。でもこの水晶玉はちょっと違う。」
「秘蔵のものなんですか?」
「ああそうだ。この水晶玉は特別製でな、30名の偉い魔術師が10日かけて空っぽになるまで魔力を毎日注いだ代物だ。普通は10人で10日なんだけどな。」
「何が違うんですか、使い捨てでは無くなるってことなんですか?」
「そういう意味じゃなくて、戦闘や
、魔力だけではなくて自分の他の素質も測ることができるんだ。今までにこの水晶玉は二回しか製造してないんだ。何しろコスパ悪いからな。量産なんてできたもんじゃない。」
「そんなにレアな物をを俺に使わせてくれるんですか?」
「おう。使っていいぞ。何しろ言われたからな、俺が最初に会った異世界人にな。」
「その異世界人ってかなり優しい人だったんですね。っていうよりも他人への配慮が上手い人ですね。」
「そうだな。あいつは最初に会った時はお前よりオドオドしてたからな」
俺は聞き流しながら水晶を受け取って念じる。正直言って使い方わかんないけど多分こんな感じでいいだろう。他の異世界人なんて興味がない。そんなこんなで水晶玉に文字が浮かび上がった。
轟崎 流星
<戦闘素質>
攻撃力 A
防御力 A
素早さ S
体力 A
知力 A
魔力 S
運 B
<適性武器>
剣 刀 槍
<魔法素質>
炎魔法 S
水魔法 F
氷魔法 F
風魔法 F
闇魔法 F
光魔法 F
雷魔法 S
土魔法 F
回復魔法 B
補助魔法 D
妨害魔法 D
<特殊能力 >
言語翻訳
ダブルマジック
と書かれていた。詳しくオースティンに聞いてみる。
「素質ってのはな、変わらない物なんだよ。良ければ強くなるし悪ければ強くなれない。お前の場合、戦闘能力の素質は高いが魔法の素質が正直言って微妙なんだ。冒険者になるなら前衛向きだな。どうだ?うちのギルドに加入して冒険者になって見ないか?少なくても俺の知っている異世界人は冒険者だったぞ。なんでも最強になりたいとか言ってたな。」
冒険者か、いいな。どっちにしろタクロウを探さないといけないんだ、ついでにギルドに入っとけばいろいろと便利そうだからな。
「じゃあ冒険者になりたいと思います。」
俺はオースティンに言った。
「決まりだな。じゃあここにサインして。」
オースティンは何やら手を掲げたかと思うと一つのカードが出てきた。
「これはマジックカードと言ってな、持ってるといろいろと便利なんだ。」
俺はオースティンからペンを貸して貰いサインをすると消えた。
「マジックカードと心ん中で念じてご覧、さっきのカードが出てくるよ」
俺は言われた通りにして見るすると15cmくらいのカードが俺の前に出現した。そこにはこう書いてある
轟崎 流星
男 ランクF
<称号>
異世界人
いろいろと聞きたいことがあるがぐっと我慢するするとオースティンは戸棚へと向かい一冊の本を出してきた。
「これもプレゼントだ。」
広辞苑くらいの大きさの分厚い本をもらった。本は青色の表紙で『冒険者のイロハ』と書いてある。
「これは普通は買うんだが、俺のお古だ。大事なところにチェックが入ってるからそこを重点的に読めよ。」
俺はその本を受け取る。ずっしりとして思い。
「ありがとうございます。またきます。」
俺はギルドを出て行き修道院へと戻った。部屋に戻り椅子に座りペラペラと本を眺める。
絶対に大事な内容をマスターしてやる。心に決めて取り組み始めた。
今までに挑戦したことのない目標ほどやる気は出ますよね。苦手でもないし好きでもないものが多いんだから。人はこう考えるだろう。【上手になりたい、ニガテにはしない】と。俺はあえて言っておこう『好きこそ物の上手なれ』だ。夢にまで見た魔法を使えるよにするため、真剣に本の内容を覚え上手くなるよう努力する、とな。