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アクマで恋してる  作者: 時雨瑠奈
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3/10

第三話 悪魔少女の転校と大作戦

 大森悠はこれから大丈夫なのか、と思いつつ

朝になってもまだ寝ている悪魔の少女リリンを

冷めたような目で見つめていた。

 昨日は結局悠が夕ご飯を作ったのだ。

今まで食べた事もないはずの料理を、美味しい

美味しいとルビー色の目を輝かせながら言われた

時はちょっと嬉しかったのだけれど、まだ悠は

リリンを信頼してなかった。

「おい、朝だぞ、起きろよ」

「んん~、あ、悠。お早うございます……むにゃ」

「また寝るなよ! 起きろって言ってんだろ!!」

 悠はリリンを起こすのにかなり体力を使わされた。

その後、リリンがまともな料理が作れない事が判明した

ので朝ご飯も悠が作る事になる。

 母親はすでに仕事に出かけているらしく、朝ご飯と

お弁当は自分で作ってねというメモがテーブルに

置いてあった。

 今日はかなり早くに出たので悠のお弁当を作れ

なかったようだ。

 悠が手早く作った朝食を、リリンは美味しい

美味しいと昨日と同じように食べてくれた。

 作ったとはいっても、チーズとハムをはさんだ

サンドイッチとスクランブルエッグという簡単な

メニューだったが――。


 悠は裏口からリリンと共に学校へと入った。

なぜ正門から行かなかったのかというと、銀色の

髪にルビー色の瞳のリリンを連れて入ると

目立つからだ。

 校舎に一緒に入ってから教室の前でリリンと

悠の想い人である日向先輩と結ばれるための作戦を

しばらく練ってから離れた。

 悠はかなり早く学校に来ていたため、幸い誰にも

知られずに済む。

 リリンと別れてからちょうどいいタイミングで

クラスメイト達がずらずらと教室に入って来て、

さらに少ししてから短い黒髪に強面な顔立ちの

癖に、オネエ言葉を使うオネエ教師(本名は郷田

聡)が入ってきた。

 悠はオネエ言葉がうっとうしいのであまり好き

ではないが、授業が面白く性格も快活なため、他の

クラスメイトからは評判のいい教師ではあった。

 親しみを込めてサトちゃん先生と呼ばれている

ようだ。

「今日もいい朝ねぇん、皆さん。今日は転校生の

紹介をするわよん」

(転校生……? そんなの来るはずだったか……)

 ざわざわと教室の中が騒がしくなった。

悠とて訳が分からなかった。この教師は昨日そんな

事は一言も言っていなかったからだ。

 オネエ教師がガラリと教室の扉を開けると、日向

先輩と悠とをくっつける作戦を実行中だったのか、

そこに立っていたリリンが目を大きく見開いた。

 馬鹿! 早くどっか行けと悠が視線で伝えようと

した次の瞬間。

「あらぁん、もう来てたのねぇん李厘りりんちゃん。

さ、入って入って。あなたの紹介をするわよん」

「え、えっとあの……」

 悠は何が起こっているのか訳が分からなかった。

それはここにいるリリンも同じなのだろう、ルビー色の

瞳を迷わせながらも教室に入ってくる。

 オネエ教師が黒板に『大森李厘おおもりりりん』と

リリンの偽名のような物を黒板に書いて説明した。

「李厘ちゃんは大森君の親戚の女の子なのよん、仲良く

してあげてねぇん」

『はい、サトちゃん先生!!』

 呆然としている悠とリリンには構わず、リリンは転校生

として学校で扱われる事になってしまったのだった――。


「何でお前が僕の親戚として転校してくるんだよ!」

 お昼休みに購買のメンチカツサンドと、紙パック

コーヒー牛乳を購入した悠は、ジャムパンとチョコ

コロネと紙パックのココアをリリンに買い与えてから

校舎裏にやってくると声を荒らげた。

 多少声は抑えてはあるがそれでもかなりの大声に

なっていた。リリンは大事そうにパンと飲み物を

抱えながら、泣きそうな顔になっている。

「り、リリンも知りませんよ! だって、リリンは

何もしてないんですから」

「お前が校長先生とかを操って転校手続きをしたとか

じゃないのか?」

「人を操る魔術はとても高度なんです。リリンはまだ

使ったことがないし、多分使ったとしても成功は出来

ないんじゃないかと思いますし……そんなに怒らないで

くださいよ悠……」

 リリンのうろたえた様子はとても演技には見え

なかった。本当に訳を知らないのだろう。

 悠がもういいと言うと、リリンはホッとしたよう

な顔になってジャムパンにかじりついた。

 とろりとしたイチゴジャムの甘い香りが鼻をつく。

悠は甘い物が嫌いなので食べたことはないが、クラスの

女子がよく食べているのは見た事があった。

 綺麗な赤色のジャムがリリンの口にべっとり

ついている。人は喰わないのかと悠に問われて、人間

なんて食べる訳がありませんよ!と叫んでいた彼女だが、

口元にジャムがベタベタとついてまるで血のようだと

悠は思った。

 悠は微かに口元に笑みを浮かべながら、「口拭けよ」

と鞄から出したポケットティシュを差し出した。

 リリンは首をかしげながら受け取って口を拭き、

べったりとジャムがそれについたのに気付き顔を

赤らめていた。

 その様子が少し可愛いかもと悠は思わず思ってしまい、

それからハッとなるといいやあいつが可愛い訳がない

とかぶつぶつ言いながらメンチカツサンドにかじり

ついた。

 たっぷりとお肉をつかった、ジューシーなサクサクの

メンチカツの味に舌鼓を打つ。悠は母親の弁当があるので

あまり購買は利用しないのだが、いつも美味そうだなと

購買の前を通りかかるたびに思っていたのだ。

 パンも柔らかく焼き上げてあり甘辛いソースと

よくあう。

「お、悠! こんなところにいたのかよ!!」

「いてっ!」

 いきなり頭を小突かれたので振り向くと、親友(だと

はばかって譲らない)の菅野栞太がそこにはいた。

「何すんだよ!」

「悠がいつも俺と食べてるのに今日は違う場所に移動

してたからだろ!」

「別にお前と食べるなんて約束してないし。行くぞ、

リリン」

「ええっいいんですかぁ悠!? お友達は大事に

しないと!!」

 栞太がブーブー文句を言っていたが、悠は構わずに

リリンを連れ校舎の中に戻ってしまった――。


 そのまま悠は五時間目の授業をサボり、リリンと

いろいろな対策を立てた。

 長い黒髪に黒曜石のような瞳をした少女、城崎日向

先輩が、親友の金色に染めたサイドポニーの髪をした、

清水実里先輩とペアを組んでバスケットボールのパス

練習をしている体育館をこっそりのぞきながら

説明する。

「あれが日向先輩だ、よく見とけよ」

「リリン知ってますよ。昨日、悠と一端別れた時に飴玉を

くれた方が彼女の名前を呼んでいるのを聞いて

しまったので……」

「ああ、氷雨先輩な。あの二人図書委員で仲いいからな」

 日向先輩と清水先輩の連携は抜群のようだった。

お互いの顔をしっかり見ながらパスのラリーを続け、一度も

体育館の床にボールが落ちない。

 きっとあの二人が一緒にプレイしたら活躍できそうだ。

日向先輩の楽しそうな様子に悠は釘づけになっていた。

 そうこうしている間に時間が経っていたらしく、日向

先輩達がボールを片付けて更衣室に慌てて向っていった。

 少し時間が過ぎてしまったのかもしれない。

「あの人と俺を結ばせてくれるなら契約してやってもいい。

どうなんだよ、出来るのか?」

「はい! リリンいい方法を考え付きました!!」

 それはなんだと悠が聞こうとした時だった。

パッと何かが光ったかと思うや、いつの間にか悠は別の

場所に移動していたのだ。

 辺りを見回した悠はぎょっとなった。

ここは、さっき日向先輩達が向かった女子更衣室だった

のである。リリンが魔法を使ったのか、と悠が気付いた

頃にはもう遅かった。

『きゃああああああっ!!』

 当然周囲には先輩方がたくさんいるわけで、突然現れた

悠に悲鳴が上がった。日向先輩が「大森君?」と言いたげに

驚いたような顔をしている。

「おい、大森! 何してんだてめえ!!」

 悠に食って掛かったのはまだ下着姿の清水先輩だった。

日向先輩を隠すように前に出ながら悠の胸倉を掴み上げる。

「いえ、あの、これは違うんです。間違って入って

しまって……」

「どうしたら間違えて女子更衣室に入るんだよ!? 

 お前は女子か!? あ!?」

「ち、違うんです! 誤解だ――!!」

 リリン覚えてろ! と思いながら悠は真っ赤になって

絶叫した――。


 悪魔少女リリンが転校してきました。

悠と日向先輩をくっつけろ作戦が開始

されますが、そのせいで悠が悲惨な目に

合ってしまいました。

 リリンには全く悪気はないんですけどね。

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