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アクマで恋してる  作者: 時雨瑠奈
10/10

エピローグ ~悪魔少女と素直じゃない少年の恋~

 大森悠とリリンは、手をつなぎながら

二人で歩いていた。

 両方の顔は真っ赤で、かなり緊張して

いる事が窺える。

 氷雨梨々ことリリムがいなくなり、

リリンが人間になってからもう一週間が

経とうとしていた。

 リリンは今は悠の家ではなく、リリムが

以前暮らしていたマンションの一室へと

居を移していた。

 悠の両親にも認められ、晴れて二人は

正式なカップルとなったのである。

「や、やっぱり、こういうのって恥ずかしい

ですねぇ……」

「で、でもカップルって、手をつないだり

とかするもんだろ? 僕付き合ったの初めて

だから分からないけどな」

 顔を赤らめながら見つめてくるリリンを

内心可愛いと思いつつ、悠は平気な風を

装っていた。

 顔が赤いからバレバレなのだけれども。

「それにしても、僕は氷雨先輩が悪魔だった

って事がびっくりだったな」

「リリンも、お姉様だとは思わなかった

ですよぅ」

 以前からずっといた先輩だと氷雨先輩の事を

思っていた悠は、リリンの氷雨先輩への告白を

聞いた時絶叫したのだった。

 悠やリリンはもちろん彼女の事は忘れては

いないのだが、菅野栞太や、清水実里先輩や、

月島翔真先輩や、城崎日向先輩や、オネエ

教師や他の生徒や教師、そして校長先生に

いたるまでが彼女の記憶が全くなくなって

しまっていたのだった。

「また、会えるのかな氷雨せんぱ――

リリムに」

「氷雨先輩でいいって言ってましたよお姉様。

この前手紙が来たんです。悠の事はそれなりに

気に入ってるそうです」

「そ、それなりかよ……」

「お姉様は素直じゃないですから。本当は悠の

事好きだと思いますよ?」

「そっか……それならいいけど」

 氷雨先輩ことリリムは厳しい女性だったけれど、

悠は彼女の事が嫌いではなかった。

 悪魔だと知ってからもずっと。

と、さっきまで笑顔だったリリンの顔が不機嫌

そうにぷぅっと膨れていた。

「ど、どうしたんだよ?」

「悠は、リリンよりリリムお姉様の方がいいん

ですか?」

「そ、そんな訳ないだろ。すねるなよリリン。

僕にはお前が一番だって」

 エヘヘ、とリリンは笑って公園のベンチへと

腰を下ろした。バスケットを開き、今ではちょっとは

まともな味になってきたサンドイッチを取り出して

悠に渡す。

 今日のサンドイッチは蜜柑やキウイや苺を、

生クリームを塗ったパンにサンドした色とり

どりのフルーツサンドだった。

「そろそろ、お弁当にしましょうよ悠」

「そうだな」

 リリンは人間になってからずっと料理の研究を

続けている。

 元は魔界の人間だった彼女が、人間界の料理を

学ぶというのは並大抵の事ではないだろう。

 なので、悠はよっぽどでもない限りは美味しいと

表現する事にしていた。

 ……実は悠は甘い物は大の苦手なのだが、

彼女の料理なら何故か食べられる気がする。

 初めて、妻のために甘ったるいオムレツを

美味いと頬ぼる父親の気持ちがよく分かった

悠だった。

「うん、美味いよこのサンドイッチ」

「よかったですぅ、悠のために作ったんです

から」

 お弁当を食べ終わると、二人は腹ごなしに散歩を

する事にした。再び手をつないで歩いていると、

ふいに悠が立ち止まる。

「そういえば、さ」

「なんですか? 悠」

「何で、お前僕のために命までかけて魔法をかけ

ようとしてくれたんだよ?」

 リリンはその言葉に、可愛らしく微笑むと……。

「それは、秘密です」

 人差し指を桃色の唇にあてがって悪戯っぽく

ウインクして見せた――。

 今回で「アクマで恋してる」は完結します。

後はスピンオフの短編を残すだけとなりました。

 雪宮さんから原案をいただいた作品だったの

ですが、最後まで楽しく書けてよかったです。

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