第八話 休息補給宿屋後道連
大雨です。
誤字脱字はデフォ…。(´Д`)ハァ…
「本当にありがとうございました! 助かりました!!」
自分の眼の前に用意された食べ物を、勢い良く食べ尽くした女性は司とリッドに向かって勢い良く頭を下げてきた。
「いえ、困ったときはお互い様ですから」
女性の言葉にリッドは優しく微笑みながらそう答え、司もその件には賛成だという感じにうなづいている。
ただ、ディーだけは何故か司の背中に隠れ、恐る恐ると言った感じに様子をうかがっていた。
「どうしたのディー?」
「おねえさん、おくちおおきかった。カバさんみたいでこわいの」
「ぐあはっ!?」
どうやらディーは女性のあまりの勢いのよい食べっぷりに驚いてしまったようで、司の後ろに逃げ込んでしまったようだった。
「ううっ…」
「あははっ」
落ち込む女性に対し、司にできることといえば苦笑いを浮かべることだけだった。
そして、食事も終わり一息ついた所で話は女性が何故こんな所で行倒れになっていたのかという話題になった。
「私はアダラ。見ての通りのダークエルフです。少し前まで森の集落で暮らしていたんですが、ハンターに憧れて、この間ハンターギルドに登録しました。今はランク2です」
「それで、どうしてあそこで倒れてたんですか?」
「お恥ずかしい話で、あまりうまく依頼をこなせてなくて…、ぶっちゃけてしまうとお金ないんです」
そこまで話してアダラと名乗った女性は自分の頭をかく。しかし、司の知っている情報ではダークエルフは火と土の魔法を得意とし、弓の扱いに長けており、決して魔獣を狩ることが苦手だったはずではない。
「だって、スライムさんとか可愛いじゃないですか! 倒すなんて出来ませんし!」
「はぁ…」
それはハンターとしてどうなのかと司は考えたが、まぁ本人がそれでいいのならいいかと考え、特に突っ込まないことにした。
「ヤコブの街は通りますから送っていきますよ」
「本当に何から何までお世話になります」
「いえいえ、旅は道連れですよ」
第八話
休息補給宿屋後道連
「それでは、明日の朝までお預かりいたします。補充用の荷物は積み込んでおきますので」
「お願いします」
ヤコブの街にたどり着いた司達は、馬車を預けた後少なくなったものを補充してもらい、自分達は今晩泊まる宿を探しに街の中に入っていく。
アダラとは街に入った所で別れており、どうやらそのままハンターギルドへと向かったようだ。
「ぶらーんぶらーん」
大通りを歩く三人は右から司、ディー、リッドの順に並び、ディーは司とリッドに手をつないでもらってブラブラと遊んでいる。
ヤコブの街は司達のいる大陸で11番目に大きな街で、特徴としてあげられるのが街の中に闘技場があることだろう。
闘技場は人間同士が戦う『決闘』と、人間と魔獣が戦う『生存』の二つが行われている。
「とても賑やかな街ですね」
「ホントですね。リッドさんはこの街に来るのは初めてなんですか?」
「はい」
「ディーも初めてー」
ディーはぶらぶらするのに飽きたのか、司に話しかけながら抱っこをせがみ、司は直ぐにディーを抱き上げた。
「どこかいい宿はありませんかね?」
リッドはそう司に話しかけながらも周囲を見渡して宿の確認をしている。そういていると、一件のある宿屋がリッドの目に入った。
「ツカサさん、あそこなんてどうでしょうか?」
「あの宿ですか?」
「はい」
「自分はかまいませんよ」
「ディーもいいよー!」
司にはリッドがどうしてその宿を選んだのかは分からないが、何かしらリッドには感じるものがあったのだろうと思い、リッドの指定した宿屋に入っていく。
「すいません。部屋あいてますか?」
店に入りった司達は空き部屋があるか受付で確認すると、運良く三人部屋が開いているというので、その部屋に泊まることにした。
「いいんですかリッドさん? おれが同じ部屋でも?」
「はい」
リッドに平然とそう答えられた司は男としてみられていないのだろうかと一瞬思ったが、実は平然と答えたように見えたリッドにしても心臓が張り裂けそうなほどに緊張していた。
と言っても、同じ馬車で寝起きしているので今更という感じが強いのだが…。
部屋に荷物を置いた司は、宿の一階で昼食を済ませると、リッドはディーのお昼寝のために宿に残り、司は街の観光に出かけることにした。
闘技場があるだけあって、街の中には様々な武器防具屋がありそれらを見て回るだけで司にとってかなり有意義な時間になった。
「へぇ、こんな武器もあるんだ」
中には司が今まで見たことのないようなものまであり、あまりに集中していたため気がつけば日が傾きかける時間になっていた。
「そろそろ戻ろうかな」
司は暗くなる前にと、宿屋に向かって帰ることにした。
そして、司が宿に帰り着いた頃には日は完全に沈んでいた。
「おかえりなさいませ!」
「はい?」
宿に帰って最初に出迎えたのは、昼前にわかれたアダラだった。
「なにしてるんですか?」
「はい! ここで働いてます!」
「それは見たらわかります」
司が話を聞いてみると、このままでは今度こそどっかで野垂れ死ぬんじゃないかと心配したギルド員に、本来ならこんなことはしないのだが、アダラにバイト先を紹介したということだった。
「ということなんです」
「はぁ…、そうでうすか」
ひと通り話を聞き終わった司は取り敢えず部屋に戻ることにした。部屋に戻るとディーがリッドに絵本を読んでもらっているところだった。
「あ、お帰りなさいツカサさん」
「おにいちゃんおかえりなさい!」
「ただいまディーちゃん。リッドさん今帰りました。夕食の準備ができているようなので、夕食にしませんか?」
「わーいごはんだー!」
「わかりました」
そして、案の定というかなんというか、アダラの姿を見てリッドは目を丸くしていた。
「あら、この料理おいしいわ」
「この料理も美味しいですよ」
「おにいちゃんあれたべたい」
「あら、ツカサさんほっぺにお弁当が…」
どっからどう見ても仲のいい家族にしか見えない食事風景を当たりに見せつけながら、三人の食事は進んでいく。
「でも本当に美味しい料理ですね。リッドさんはこの宿のこと知っていたんですか?」
「知っている、という程ではないんですが、昔祖父の知り合いがこの宿を始めたといわれているんです」
リッド曰く、自分の祖父の時代に集落に住んでいた一人の男性が、村に来た人間の女性と恋に落ちたそうだ。しかし、当時は異種族との結婚などには厳しい時代であり、二人はなかなか周囲に認められなかった。
そしてある日二人は駆け落ちをし、ひっそりと宿屋を経営し始め、その宿屋はいかなる種族にでも部屋を貸すという噂がひろまり、様々な問題を抱えた種族の人たちが利用するようになっていったそうだ。
その噂はだんだんと広まり宿屋の経営は楽になっていき、次々と新しい宿屋を作っていった。
そして、噂は何時の日か『この宿屋に泊まると幸せになれる』と言う噂に変わり、一時期は国内で最も有名な宿屋になったこともあるそうなのだ。
但し、今現在はその話自体を知っている人物が少ないため、大手の宿屋という認識しか人々の間に伝わっていないということだった。
「そうなんですか」
「はい。最も私も祖父に聞いた話なんですけどね」
話を聴き終わり、ツカサ達は自分たちの部屋へと戻っていくのだが、話を聞いて司の中にはある疑問が生まれたのだが…。
(リッドさんって…、何歳なんだろう?)
という疑問なのだが、何故かそのことだけは決して聞いてはいけないことなような気がし、司はその疑問を心の奥深くに押し込めるのだった。
明けて翌日、補給を済ませた馬車を受け取り、司達は王都目指した移動を開始した。
そして、移動し始めて少しした頃ある人物と再開する。
「ほっほ。これは奇遇じゃの」
「あれ? ペトロさんここでなにしてるんですか?」
「実は久しぶりに王都に戻ろうと思っての移動しておったところなのじゃ」
「王都にですか?」
「うむ」
ペトロの乗っている馬は芦毛で、あまり馬のことがわからない司が見ても、いい馬だろうということがわかるくらいに、素晴らしい馬だった。
「もし良かったら一緒に行きませんか?」
「ふむ? よいのですか?」
「ええ、旅は道連れ、ですよね? ツカサさん」
「そうですね。迷惑じゃなければ一緒にどうでうすか?」
「うむ、ありがたいのう。お主は良い妻を見つけたの」
ペトロの言葉に司とリッドは揃って顔を赤くし、互いにもじもじとしながら何か目配せをしあっていた。
「おにいちゃんもおかーさんもおかおりんごみたい」
二人の顔色が治まりかけたころにディーにそんなことを言われ、二人はまた揃って顔を赤くするのだった。
今日のミハイエルさんの一言
「な、なにかキャラ被ってますし!? 困りますし!?」
いかがでしたでしょうか?
ではまた。