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前略 異世界の土の上から  作者: ハチ
王都旅行 編
14/16

第十三話 王都迷宮探索決着 ※必ず前書きをお読みください

どもです。


注意書き

第十三話には、シリアス、残酷な描写及び女性のかたを不快にさせる表現があります。特に前半部分にありますので、そういう表現が苦手な方は


第十三話

王都迷宮探索決着


よりも下の部分からお読みいただくようお願い申し上げます。

よろしくお願いいたします。

「お母さん…」


声が聞こえる…。遠い、遠い昔に聞いたことがある声…。なによりも大事な、私達の宝物…。


「%$'&%]


声が聞こえる…。遠い、遠い昔に聞いたことがある声…。私達を包み込み優しい声…。

でも、もう思い出せない…。自分がかつてなんと呼ばれていたのかを…。

思い出せるのは私の罪の記憶だけ…。

思い出せるのは辛い記憶だけ…。


そう、あの日まで私達家族は幸せに暮らしていた。私は'%$&('家の三女で、彼は&$%'家の跡取りで、貴族の家にしては珍しく恋愛結婚だった。

結婚して五年、子供一人に恵まれて私達家族は幸せに暮らしていた。

夫は王国の城に近衛騎士として仕え、その剣の腕は誰もが認めるものだった。私も元々は女性近衛隊の一員で、夫とは職場結婚ということになる。

結婚して私は仕事をやめた。本当に絵に描いたような幸せな家族だった…。


だがある日、私の家に一人の貴族が現れた。

その貴族は私達よりも位が上の貴族で、その男は事もあろうか私に結婚しろと迫ってきた。

もちろん、夫と別れ別の男と結婚するなどありえないので、私はその申し出を断った。だが、その男はそれで諦めずしつこく結婚を迫り、時が立つに連れその方法は過激になっていった。


後になって思い出したが、その男とは以前一度戦ったことがあった。その男は私に負けたことを恨み、私の幸せを壊すためだけに私と夫を別れさせようとしていたのだ。


そして、男は実力行使に出た。


あろうことか、男は敵国に通じ私達の国へ攻め込んできたのです。

そう、夫を殺し私を手に入れるために…。

何故あの男がそこまでして私に執着するのかわかりません。ですが、私たちはあの男の言いなりになるつもりはありません。


私も軍に戻り夫と共に剣を取り戦いました。私達二人の率いる騎士団はは多くの戦場で勝利を収め、当初私達の国は優勢でした。ですが、私達以外の戦場で裏切りが相次ぎ、徐々に戦況は相手側に有利になっていき、私達の国は和平の条件として私達家族を差し出そうとしたのです。


私たちは逃げました。祖国の追手から…、あの男の追手から…。


ですが、ついに私達は追い詰められてしまいました。今まで殺してきた追手の数は百を下らないでしょう。


そして…。


私の目の前で夫は首を刎ねられ、息子は魔獣の餌とされました。さらに私は自害できないように体を拘束され、女性としての尊厳を踏みにじられ、両手足を斬られた後、迷宮の中に打ち捨てられました。


本来なら、手足を斬られた痛みで死んでいるのでしょう…、ですが…、ですが、これで死に切れましょうか?

私達親子がなにをしたのでしょうか? ただ親子三人、幸せん見暮らしたかった…、ただそれだけだったのに…。


私は呪いました…。


男を…、国を…、人を…、神さえも。


そして私は魔に落ちていったのです。迷宮に溜まっていた魔力とが、私の憎悪と共鳴したのです。魔に落ちた私は男を殺し、私達を売った人達を殺し、目についた人々を殺していきました。

そして、多くの人を殺した私は、気がつけば自分が魔に落ちた迷宮に戻ってきていました。家族の仇を討った私はもうどうなっても良かったのです。

後はそう…、魔獣として朽ち果てるだけだった。なのに…。


『貴方が受けた仕打ちを考えれば、貴方がしたことになにも言うことはできません。ですが貴方は気がついていますか? 貴方が殺した人の中に…、見てご覧なさい』


その人が指差す先には、私の剣によって首をとばされた死体がひとつ…、そう、ちょうど私達の息子ぐらいの歳の男の子の…、死体がひとつあったのだ。


「あああsrfじぇおうぃgふぇげjをpgんうぃbgh9w0いgbwh0wr98hgq9えg0@?!!!!!!」


私は叫びました。いや、叫んだつもりでした。ですが、その時私の体の半分は腐り、まともに声を発することができませんでした。


『貴方はあの男と同じになってしまったのです。あの男と同じ、自分の感情に振り回され無垢な小さな命を奪ったのです』


違う! 私はあの男とは違う!! 私はそう訴えました。ですが心の中ではわかっていたのです。ただ、心が真実を受け入れられなかったのです。


『いつか貴方の呪縛を解く人がこの地に訪れるでしょう。ですが貴方は罪のない人々を殺してしまった罪を清めなければなりません。その時、貴方は再びかけがえのない物を手に入れるはずです』


私は誓いました。例え幾星霜の時が流れようと、どのような責め苦を受けようと、再び私にとってかけがえのないものを手に入れてみせると。

そして、私に与えられたのは人々の力の糧となることでした。力の殆どを封印され、意志もなく殺されていく日々が続きました。


そして、出会ったのです。


私の罪を清め、あの方の…、女神ミハイエルの祝福を受けし戦士に、私は出会えたのです。


戦士よ…、どうか私の罪を清めてほしい。その清らかなる魂で、私の穢れを祓ってください。




第十三話

王都迷宮探索決着




「…!」


司は目の前に振り下ろされる剣を紙一重で何とかかわし、一気に間合いを詰め攻撃を放とうとする。だが、相手は司が踏み込むタイミングに合わせ、盾を前方に突き出し司の動きを制限してくる。


(後一歩が踏み込めない!)


司にとって最も威力のある一撃を放つための、最後の一歩が踏み込めないでいた。その状態でも攻撃ができないわけではないが、威力のない一撃を闇雲にはなっても相手に有効なダメージが与えられないため、司は攻撃ができずにいた。


そしてもう一つ、司にはどうしても躊躇してしまうことがあった。最初、スケルトンであったはずの相手が、今はなぜか普通の女性の姿に司には見えるのだ。

それは、頭のなかに流れてきた映像にある女性の姿そのままで、相手の攻撃からはこちらに対する敵意や憎しみはなく、ただただ…、悲しみに溢れていた。


そのため、後一歩が踏み込めず防戦に回っているのだった。

司はなんとかして相手を倒さずに終わらせる方法はないかと考える。このままでは目の前の女性があまりにも可哀想だと感じてしまったのだ。


「私に情けはいらないのです。私は罪人…、貴方だけがこの罪を清められるのです。この身はただ生者を襲うだけに成り果てた私の残骸…、もう私の思う通りには動かず、魔獣と人を殺めていた頃の私の記憶を元に人を殺すだけなのです。だから、ためらう必要はありません」


「貴方の罪が何なのか知りません! でも…、死ぬことがだけが罪を清める方法なんて…、それではあまりにも貴方が…!!?」


「…優しい戦士よ。貴方にも大切なモノがあるはずです。私にもかつてありました。もう一度…、もう一度その大切なものを、私に取り戻させてはくれませんか? どうか、この浅ましい女の願いを聞いてください」


司にそう懇願する女性の声音に司は奥歯を噛み締める。


「わかり、ました。僕にできるかわかりませんが、あなたの願いを叶えて見せます」


司はそう告げると、相手の盾に蹴りを放ちそれが受け止められると、その反動を使い大きく後ろへと飛び退った。


「…」


司は呼吸を整えながら思い出す。ペトロに教わったことを、基本にして応用である体の動かし方を。


「静は動より生まれ、動は静より生まれる…」


そして、いつか聞いた言葉胸に留め、それを実践する。水が高い所から低い所に落ちていくように、岩にあたり流れを変えるよう柔軟さを。

その流れを持って岩を削り全てを流すかのように力強く。


(いける)


気持ちを切り替えた司の動きは目に見えて良くなっていく。それに合わせ攻撃の時間も徐々に司のほうが長くなり、その攻撃も相手の体を捉え始めた。


「はぁぁぁぁぁぁ!」


「…」


司の一撃を受け亡霊騎士の盾が後ろへと吹き飛ばされた。


「見事です」


「次で決めさせてもらいます」


「どのような結果になったとしても、私は貴方に感謝をするでしょう」


司は自然体に構え小さく呼吸を繰り返す。そして極限まで集中力を高める。


そして、相手が攻撃を繰り出そうとわずかに持っている剣に力を込めた、その瞬間…。

司の姿は亡霊騎士の眼の前にあった。


俗に無拍子といわれるものに近いのだろう。相手の体に力が入る一瞬、司は自分の動きにある無駄を最小限まで省き、さらには最短距離で相手まで移動する。

司にしてもそうできたのは全くの偶然であり、同じ事をやれと言われれば今の時点ではまず難しいだろう。


「貴方のことは私が忘れません」


繰り出されるは正拳突き、ただ一撃。司が全身全霊を乗せた一撃は、あたった瞬間に拳に乗せた魔力を開放し、見事亡霊騎士の心臓の位置を貫いた。

そして、その一撃を受けた亡霊騎士は吹き飛ばされず、その場へと崩れ落ちた。


「見事…、見事です。私の穢れを…、罪を清めるに足る一撃でした」


亡霊騎士はそう言いながらその場に立ち上がる。だが、本体であるスケルトンの部分はその足元で灰になっており、立ち上がったと思われたのは、亡霊騎士の魂のみなのだろう。


「これで私は消えることができます。戦士よ、貴方に感謝を…」


亡霊騎士の魂はその言葉を残し、徐々に姿が薄くなっていき、そしてそのまま消えていくのだった。


「これで、良かったのか? もっといい方法があったんじゃないのか?」


一人自問自答する司に声がかけられた。


【司さん、これでいいんです】


「!? 貴方は…」


司が声のした方向に振り向くと、そこにはいつも自分についてきてくれるあの精霊がいた。だが、その口から聞こえる声は、あの日聞いたミハイエルのものだった。


【彼女の魂は救われました。私からもお礼を言わせてください】


司はミハイエルから、彼女が亡霊騎士になった理由を聞く。その理由を聞く司はなんとも言えない感情を抱いてしまう。

仮に自分が同じ立場だったらと…。


【司さん、胸を張ってあげてください。彼女は、その罪を許されたのですから】


「…はい。すいませんミハイエルさん、心配おかけしたようで」


【ち、違いますし!? べ、別に司さんのことが心配だった訳じゃありませんし!? 女神として当然ですし!?】


「はい」


【そ、その笑顔に騙されませんし!?】


最後にそう言って精霊の体を借りていたミハイエルは消えてしまった。

それから二時間後、司は迷宮から借りている宿に戻ってきていた。夕食を終え、部屋にあるソファーに座っていた司の横に、リッドが腰をかけてきた。


「ツカサさんおつかれですか?」


「そうですね、今日はちょっとつかれたかな?」


リッドに返事を返す司の言葉にはいつもの元気がなく、リッドは少し心配になり正面から司を顔をのぞき込んだ。


「ど、どうしたんですか?」


「…」


司の表情を見たリッドは司の横に座り直すと、徐に司の肩を引き寄せた。


「え、ちょっ…」


そして次の瞬間に、司の頭はリッドの太腿の上にあった。そして、司がなにか言うよりも速く、リッドが優しく司の目を覆い隠す。


「なにも言わないでください。でも、辛いのを我慢しないでくださいね?」


「…、少しだけ…、少しだけこうしていてくれますか?」


「はい。司さんの気の済むまで」


司は自分の目にあてられる少しだけひんやりとするリッドの掌の感触を感じながら、そのまま眠りへとつくのであった。

どうでしたでしょうか?

次回からはほんわかが続く予定です。

ではまた。

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