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THE HOLE  作者: chobe
3/4

後編

こうなってしまったものは仕方がない。

どうする?


逃げるか。

いや、あの状況から逃げ出す方法が思い浮かばない。


じゃあ逆ギレしてみるか。

くしゃみなんて生理現象だ。誰だってするだろう。


いや、あのレスラーは何も悪くない。




謝るか。


実際これ以外他に方法がないな。

しかし謝って許してもらえるものか。

いきなり見ず知らずの男に唾を吹きかけられてレスラーは激怒している。



俺は目を瞑りながら悩んだ。


こうしている間に何度か近くで落下音が聞こえた。



みんな苦労してるんだな・・・。


自分だけが辛いと思っていたが、みんなそれぞれに辛い思いをして生きている。

あのレスラーだって本当は人前で怒鳴りたくなんてなかっただろう。



俺は急に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



そうだ。

恥ずかしい思いをした以前に俺は他人に迷惑をかけたのだ。


謝罪しなくてはいけない。


素直に謝ろう・・・。


許してもらえなかったらその時はその時だ。

自分が悪いのだから逃げてはいけない。



謝ろう。



そう思った瞬間俺の体はまたしても宙に浮いていた。



今度は間違いなく浮いていた。



霞ゆく視界の中で大仏のおっさんが微笑んでいるのが見えた。


今度は俺も微笑み返した。



頑張れよ、おっさん・・・。




急に視界が明るくなり目の前に悪役レスラーが現れた。



「てめぇ!!黙ってないで謝ったらどうなんだ!!」



大声でレスラーが怒鳴っている。


「この・・・。」



「すみませんでした!!!」



俺はレスラーの怒鳴り声をかき消す程の大声で謝罪した。



思わずレスラーが俺の胸から手を離す。


呆気にとられるレスラーと乗客をよそに俺は勢いよくその場に座り込んだ。


そして床に手をつき頭を下げる。



「本当にすみませんでした!!!!これ使ってください!!」



俺はポケットからハンカチを差し出す。



「わ、分かればいいんだよ!」



レスラーは俺のハンカチで頭を拭くと、次の駅で降りて行った。


「何か調子狂うぜ・・・。」



レスラーが降りて行った後、俺は他の乗客にも謝った。



「お騒がせしてすみませんでした!!」



深々と頭を下げてから俺は堂々と立ち上がり吊り革に掴まった。



もう羞恥心などない。


電車は何事もなかったかのように揺れる。



俺の胸は清々しい気持ちでいっぱいだった。



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