名前の無い物語
Nice to meet you!
『友と明日のために!!』です。
今回、初めて小説を書いたのでかなり駄文だとは思います……。
『それでもいいよ♪』という、とても心の広い人はお読みください。
「好き!!私はたくみのことが好きなの!!」
夕日で照らされる風凪学園。その屋上で、永井巧は告白された。他でもない幼馴染みの坂上楓に。
「たくみはどうなの? 私のこと嫌い?」
「い、いや。そんなことないけど………」
思わず言葉を濁らせてしまう。楓が自分のことをそんな風に思っているなんて夢にも見なかったからだ。だが、それは仕方がないのかもしれない。幼馴染みは近すぎる存在だ。だからこそ、今まで恋人とか好きな人とか………、そういう視点で見ていなかった。
……なるほど。夕日で照らされ、頬を桜色に染めている楓は確かに可愛い。そういえば、と、たくみは思い出す。つい先月の広報部が作ったアンケートによると、彼女は学園内でも5本の指に入るほどの美人ということを。
「けど、なに?」
楓はあまりの不安に、消え入ってしまいそうな声で尋ねる。『彼女を悲しませてはいけない』たくみの本能がそう叫んでいる。だが、そんな曖昧な理由で告白を受け入れられても、彼女は本当に幸せなのだろうか? 答えはNOだ。そんなことは自分が相手の立場になればわかる。
「ゴメン。いきなりだから答えはまだ出せないよ」
たくみは正直に答える。たぶん楓は傷付くだろう。事実、目の前にいる楓は泣く寸前のような顔をしている。幼馴染みのそんな姿にたくみは耐えることは出来そうにない。だからこそ、今日という日をやり直す。
「……………」
楓が何か言おうとしたが、たくみはその前に行動を起こした。右手に力を込め、目をつぶる。たったそれだけの行動だ。しかし、次に目を開けたときには現実は驚くまでに変化していた。場所は屋上から自分の部屋に変わり、着ている服も制服から寝巻きに変わっている。たくみはその事を確認したあと、最後に机の上に置いてあった携帯で日時を確かめる。7月8日の午後6時38分
「よし。ちゃんと戻れたな」
日付は告白された………、いや、告白される2日前に戻っていた。
「…………ッッ!?」
たくみの頭に激痛が走る。無理もない。たくみには、幼馴染みの楓しか知らない特殊な力があるのだが、それを使う度に激痛が走るのだ。しかもそれだけではなく、一旦戻ると、調子が良くても1日は戻れない。
とは言っても、それはいまのところ心配ない。いま考えるべき問題は………
「楓に告白されないようにすることだな」
そう。時間を戻したので『楓が自分に告白した』という事実は無くなったのだ。だから、楓の心はまだ傷ついていない。あとは告白さえされなければ、何事もなかったことになる。
その事を再度確かめると、たくみは色々と作戦を考え始めた。
「うーん。学校を休めば大丈夫か……?」
いや。学校を休んでも無駄だ。自分のことを看病しに来るだろう。そうなれば、仮病ということがバレる。そこまで考えて、やっと気づいた。楓が自分に対してどんなに優しかったのかを。もしかしたら、心の奥底では好きなのかもしれない。優しいだけではなく可愛いし。だが、そうならば。何故あの時言葉を濁らせてしまったのだろう。疑問に感じるが、たくみは意識を切り替えた。いま考えるべきはそれではない。
「楓のことを無視する、とか………。ダメだ」
自分の考えを、たくみは自分で否定した。そんなことしたら、楓は傷付くだろう。それだけは嫌だった。
「んじゃあ、どうすれば良いんだ……?」
その後1時間かけて、やっと決まった。まだ告白されていないこの状況だからこそ、楓の心はあまり傷つかないかもしれない。
そして、たくみは決心した。かなり自分勝手な行動だが、それが楓のためだと信じて。
次の日、たくみは学校で楓以外の違う女子と付き合い始めた。最低な行為だと理解しているが、これが一番確実な方法だと思ったのだ。いくら幼馴染みでも、付き合っている男性に告白は出来ないだろう。
「これで良いんだよな………」
本来なら楓に告白される日の放課後。自分の机の中に(本来あるはずだった、楓からの)手紙がないことを確認してから、たくみはポツリと呟いた。自分の予想通りの展開なのに、その声は何故か悲しい響きを奏でている。
たくみは自分の恋人を先に帰らせ、なんとなく屋上に行った。
「………、なに考えてんだろ、おれは」
もちろん、そこには誰もいない。あるのは夕陽に照らされた街だけだ。本来ここにいたはずの、あの幼馴染みはいない。たくみの頬に一筋の涙が伝う。これで本当に良かったのだろうか、と、自分に尋ねながら。
END.
そんな風に、たくみが夕陽を見ながら黄昏ていると、トトト、という急いで階段を上る足音が聞こえた。
その足音は、確実に自分のいる屋上に近づいている。そして…………
バンッ
という音と共に、屋上の扉が開いた。そこにいたのは………
「………、楓」
そう。そこにいたのは、自分の幼馴染みである坂上楓だった。
「な、何でここにいるんだ?」
思わず聞いてしまう。歩いてここに来たのなら景色を眺めるためかもしれない。だが、景色を見るために、わざわざ息を切らしてまで走る必要はない。ということは……
「たくみ。やっぱりここにいたんだ」
やっぱり?一体それはどういうことだろう?
心の中のそんな質問を、楓はたくみの表情で分かったらしい。答えはすぐに返って来た。
「能力を使ったでしょ?」
ギクッ、とたくみの体が強張る。あまりのことに言葉が出せないたくみに、楓はさらに言葉を重ねる。
「ふふ。何で知ってるんだって顔ね。分かるわよそれぐらい。幼馴染みなんだから」
ヤバい、このまま楓の勢いに乗せられたらまずい。自分の頑張りが水の泡だ。
「べ、別にそれがどうしたんだよ。明日の試験の問題を見て、戻ってきただけだって!!」
妥当な言い訳だと思う。だが、楓はどうじなかった。
「嘘つき。そんな反則はしたことないでしょ? だいたい分かるよ? たくみが何で能力を使ったのか。だから私はここにいるの」
「……………………」
もう、たくみは声を出せなかった。この幼馴染みには勝てないや。そう思いながら、たくみは楓の次の言葉を待っていた。
「たくみに伝えたいことがあるの。………、もう言っちゃったかもしれないけどね」
楓はあの時と同じように、夕陽をライトアップにして、その頬を桜色に染めながら言う。
「好き!!私はたくみのことが好きなの!!」
言葉はあの時と全く同じ。しかし結末は変わっていた。
その言葉を聞いたたくみは、右手に力を込めてゆっくりと目を閉じたのだ。あわてて楓が止めようとするが………
…
……
………
「「あれ?」」
2人して、驚きの声を上げる。場所はさっきと同じ。制服もしっかりと着ている。ということは……
「能力が発動しなかったのか?」
そう思ったが、どうやら違うようだ。楓が驚いた様子で携帯を見ている。
画面には7月8日の午後6時38分と表示されていた。
「………ッッ!?」
その表示を見たすぐ後、まるで忘れていたかのように頭に激痛が走る。楓はあわてて「大丈夫!?」と言って、頭を撫で始めた。
しばらくすると痛みは治まり、楓が言葉をかけてくる。その声には優しさが含まれていた。
「たくみは覚えてる? 昔のこと」
「昔のこと?」
うん、と楓は頷き。
「ずっと昔………、みんなでかくれんぼしたこと。覚えてない?」
たくみは首を振った。少しだけだが覚えている。
「いつの間にかみんなが帰って、楓が1人残されてやつか?」
「うん。あの時、たくみが私のこと必死に探してくれて嬉しかった。知らない場所で隠れてたから、たくみが見つけてくれたとき本当に嬉しかったんだよ?」
本当に嬉しそうに楓は話す。
「そっか。まぁ、そのあとの帰り道が分からなくて、2人とも警察のお世話になったんだけどな」
帰ったあと、親からの長い説教をされた記憶がある。「あの時からなんだよ? 私がたくみのことが好きになったのは」
楓は照れながらも話し続ける。まるでこの時間をなるべく延ばそうとしているかのように。その態度を見てやっとたくみはわかった。あの時、言葉を濁らせてしまった理由が。
「………楓」
ビクッ、と楓の体が強張る。その様子を見て、たくみは確信した。
たぶん、不安なんだ。
今の二人の関係が、この日を境に無くなってしまうかもしれないから。だから楓は必死にたくみと会話をする。少しでも最後かもしれない時間を延ばすために。だから自分は、あの時すぐに答えられなかった。曖昧な気持ちで答えて、それに気づいた楓がいなくなるのが嫌だったから。
たくみの言葉を、楓は緊張しながら待っていた。幼馴染みを………、いや、自分の大切な人を早く安心させないとな。そう思いながら、たくみは言葉を紡ぐ。
「…………」
それはとても短い言葉だった。しかし、それ故に自分の想いが相手に伝わったという確信が持てた。
夕陽が屋上にいる少年と少女を祝福するように、力強くそして綺麗に輝いている。少年と少女は抱き合い、少女は安堵と嬉しさから泣いていた。その涙が煌めく夕陽や虹よりも綺麗に輝いている。いつまでも………。
数日後。学校に登校するために家を出ると、そこには見慣れた顔の少女がいた。「おそいじゃない!! 遅刻しちゃうよ!?」
幼馴染み+恋人の坂上楓だ。あの日以来、毎日一緒に登校している。
「えっ!? まだ余裕だぞ?」
自分の時計ではまだ7時になったばかりだ。このままでは早すぎるぐらいだ。
楓の時計が狂ってるのかな? と思ったがどうやら違うらしい。楓は頬を桜色に染め、小さな声で言った。「………緒に………たいの」「えっ? なんか言った?」
本当に小さな声だったので聞こえなかった。だからたくみは聞き返したのだが。なぜか楓は怒ったような大きな声で………
「い、一緒に歩いて学校に行きたいの! 女の子に何回も言わせないでよね!!」
そこまで大声で言い切った楓は、ハッ、としたように顔をさらに赤らめた。もはや、桜どころかリンゴのように赤い。そのことを笑いつつも、たくみは楓に手をのばす。
「ほら。いくぞ」
楓は一瞬だけためらい「う、うん」と言ってたくみの手を握った。
そして、二人は手を握りながら登り始める。
長い、長い坂の道を。
END.
またまたこんにちわ。
『友と明日のために!!』です。
さて、今回投稿したこの小説はどうだったでしょうか……?
正直、他の作品を見ていると自分の作品がとてつもなく低く見えてしまいます(事実上低いのですが……)。
とは言うものの、いつまでもそんな低レベルのままでいるつもりはありません!!
少しずつでもいいので、皆さんに「この作品いいなぁ」と言ってもらえるように精進したいと思っています。
それでは最後に、このような小説を読んでいただき本当にありがとうございました♪




