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時時  作者: 七賀ごふん
一泊

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8/15

#8



「耶神君の家はここから近いの? さすがに危ない気がするから今日は家まで送ろうか」

「えっ。だ、大丈夫です! 俺の家は本当にすぐそこなので!」

……そんな風に否定するものの、本当はまだ別れたくなかった。叶うなら朝まで彼と話していたい。

けどそんな我儘は言えない。これ以上彼を困らせるようなことは言えなかった。下手したら愛想をつかされて、もう会ってもらえないかもしれない。


それに人は、朝起きて夜に寝るもの────。


「俺は大丈夫だから。胡内さん、気をつけて帰ってくださいね」

「そっ、か。わかった。……おやすみ」


彼はいつもの穏やかな顔で微笑み、闇の中に消えていった。

あ。また会おうって言われなかった……今日は。

ひとり佇んで、渇いた唇に触れる。無音が辺りを支配する。そのとき、例えようのない孤独感に襲われた。

でも変だ。寂しいわけじゃない。ひとりは慣れているはず。

母を亡くしてからもう何年もひとりで過ごしてきた。一日二日一緒に過ごしただけの人に依存するのはおかしい。

軽く頭をかいて、深いため息をついた。もやもやして焦っている。別れたあとも彼の姿が脳裏にちらついて離れなかった。


彼は久しぶりに気が合った人。だから嫌われたくなくて、無意識に必死になっていた。一週間しかこの町に滞在しないと分かっているから……なおさら舞い上がっていたのかもしれない。

やっぱり、さっきのは告白に入る……。

気持ち悪い奴だって思われたんだろう。だとしたら彼はもう自分を避けるかもしれない。ショックだ。せっかく仲良くなれたと思ったのに。


耶神は深呼吸して、どこまでも広がる星空を見上げた。夏の夜、たまに吹く風の音が草木を揺らして唸りを上げる。それに呼応するかのように虫の鳴き声が辺りに響く。鳥が羽ばたく。木陰の小動物がダンスする。

本当に何もない、空っぽな町だ。そこが気に入ってるけれど、心が空っぽのときはただただ寒々しい。

告白って……しちゃいけないもの、なのかも。

再び道を戻り、階段を上った。そしてさっきまでいた神社の祠を眺める。

両想いじゃなかったとき、告白する側もされた側も不幸になる。想いを告げなければよかったという後悔、想いを受け入れてもらえなかったという心痛、そして最後に残るのはどうしようもない寂寥感。告白された側は、突き放した罪悪感に囚われる。

好きじゃない相手から受ける好意は反応に困ってしまう。断ることも労力がいるし、後ろめたい気持ちになる人もいるだろう。実際はどちらも悪くないのに、自分を責めてしまう。告白は人を苦しめる。


いや、でも……これは人に限ったことじゃないか。




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