#7
夜の深い闇が自分達を包み込む。恐怖はなかった。むしろ今はこの闇が守ってくれているように感じる。
二人で段差に座り、胡内が持ってきた干し柿を食べた。これがなかなか絶品で、最終的に耶神がほとんど食べてしまった。
「美味しかった……! ごちそうさまです。ごめんなさい、いっぱいもらっちゃって」
「いやー、美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ。持ってきた甲斐がある。というか、売店にこれしか俺が食べれそうなの売ってなくて」
困ったように苦笑する。
彼は本当に穏やかな青年だ。知り合ったばかりだから気を遣っている可能性も有るけど、自然と惹かれてしまう。
「胡内さん、恋人いないんですか? そんなかっこいいのに」
「残念ながらずうっっと独り身だよ。耶神君こそ、そんな可愛かったら女の子達が黙ってないでしょ?」
慌てて首を振った。誰かと付き合った経験は一度も無い。告白したことも、されたこともないと伝えた。
「意外だなぁ。俺だったらすぐにアプローチしちゃう」
「いやっ俺だって! 胡内さんみたいにかっこいい人なら、告白したいです!」
「……それ、ほとんど告白じゃない?」
告白。彼の言葉に数秒固まって、ようやく情けない失態に気が付いた。
うわああぁぁ確かに。これ告白だよ!
しかも互いに不意打ち。耶神はパニックになって立ち上がった。
昨日会ったばかりの人間に告白するなんて異常だ。しかも彼は異性じゃない。同じ姓、同じ男だ。想いを告げてどうなると言うのか。
「ごめんなさい! 今のは聞かなかったことにしてもらえませんか……っ」
震えながら頭を下げた。胡内さんは少しの間呆然としていたけど、すぐに頷いて両手を上げる。
「大丈夫だよ、気にしない。……本当だったら嬉しかったけどね」
「え?」
「……」
どういう意味か分からず聞き返す。胡内さんは俯いた後、申し訳なさそうに手を下ろした。
「ごめんね、何でもないよ。今日はもう帰ろうか」
「は……い」
何故だか、胸のあたりがチクっとした。とても細い針が刺さって、そこから空気が流れだす。頼りない風船のような心がしぼんでいく。
虫の鳴き声が時時聞こえた。そのメロディは生温い空気を振動させる。止まってしまったような時間を後ろから押していく。
二人で階段を下りて、互いに反対の道を進んだ。その先はどこまでいっても闇一色で、光がない。やっぱり、ここは暗すぎる。
「暗いね」
辺りの景色に見とれていると、胡内さんは俺が想っていることを口にした。




