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時時  作者: 七賀ごふん
一泊

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7/15

#7



夜の深い闇が自分達を包み込む。恐怖はなかった。むしろ今はこの闇が守ってくれているように感じる。

二人で段差に座り、胡内が持ってきた干し柿を食べた。これがなかなか絶品で、最終的に耶神がほとんど食べてしまった。

「美味しかった……! ごちそうさまです。ごめんなさい、いっぱいもらっちゃって」

「いやー、美味しそうに食べてくれるから嬉しいよ。持ってきた甲斐がある。というか、売店にこれしか俺が食べれそうなの売ってなくて」

困ったように苦笑する。

彼は本当に穏やかな青年だ。知り合ったばかりだから気を遣っている可能性も有るけど、自然と惹かれてしまう。

「胡内さん、恋人いないんですか? そんなかっこいいのに」

「残念ながらずうっっと独り身だよ。耶神君こそ、そんな可愛かったら女の子達が黙ってないでしょ?」

慌てて首を振った。誰かと付き合った経験は一度も無い。告白したことも、されたこともないと伝えた。

「意外だなぁ。俺だったらすぐにアプローチしちゃう」

「いやっ俺だって! 胡内さんみたいにかっこいい人なら、告白したいです!」

「……それ、ほとんど告白じゃない?」

告白。彼の言葉に数秒固まって、ようやく情けない失態に気が付いた。

うわああぁぁ確かに。これ告白だよ!

しかも互いに不意打ち。耶神はパニックになって立ち上がった。


昨日会ったばかりの人間に告白するなんて異常だ。しかも彼は異性じゃない。同じ姓、同じ男だ。想いを告げてどうなると言うのか。

「ごめんなさい! 今のは聞かなかったことにしてもらえませんか……っ」

震えながら頭を下げた。胡内さんは少しの間呆然としていたけど、すぐに頷いて両手を上げる。

「大丈夫だよ、気にしない。……本当だったら嬉しかったけどね」

「え?」

「……」

どういう意味か分からず聞き返す。胡内さんは俯いた後、申し訳なさそうに手を下ろした。

「ごめんね、何でもないよ。今日はもう帰ろうか」

「は……い」

何故だか、胸のあたりがチクっとした。とても細い針が刺さって、そこから空気が流れだす。頼りない風船のような心がしぼんでいく。

虫の鳴き声が時時聞こえた。そのメロディは生温い空気を振動させる。止まってしまったような時間を後ろから押していく。

二人で階段を下りて、互いに反対の道を進んだ。その先はどこまでいっても闇一色で、光がない。やっぱり、ここは暗すぎる。


「暗いね」


辺りの景色に見とれていると、胡内さんは俺が想っていることを口にした。




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