#2
泥のついたシャツと、黒のズボンが足元に落ちる。そうして現れたのは、自分の貧弱な身体。誰にも見せたことのない自分の全てを、目の前の青年に晒していた。
「恥ずかしい? 大丈夫だよ、俺も脱ぐから。ちょっと待ってて」
胡内も慣れた動作で服を脱ぎ、手ぬぐいを腰に回した。
おぉ……。
どうせなら自分も欲しいと思ったけど、入れてもらう身で我儘は言えない。我慢して、彼の後についた。
熱いお湯に浸かっても茹で上がらないとは、生き物は……いや、人間は強いんだな……。
「はー、男二人で入っても余裕があるし、本当に良い宿だよね」
胡内はずっと上機嫌だ。反対に、耶神は緊張して動きがぎこちない。木の椅子に座った時には完全に体が硬直していた。
隣の浴槽ではずっと湯気が立ち上っている。浴室全体の気温が高く、早くものぼせてしまいそうだ。いや、全裸姿を人に見せている……精神的なものも大きいか。
胡内はシャワーヘッドを取った。直後、大量のお湯が噴き出る。それだけで耶神の押さえ込んでいた恐怖は爆発した。
「うわっ! やっぱりちょっと待って!」
お湯が近くまで迫った時、飛び上がって部屋の角に逃げた。胡内はきょとんとしてたが、すぐに苦笑してお湯を止める。
「あはは、ごめん。怖かったか」
そして近くに置いてある桶を取り、浴槽のお湯を豪快にすくう。そして床に置いて手招きした。
「足を入れてごらん。大体、この熱さだから」
「……っ」
彼はどこまでも優しく、俺のペースで進めようとしてくれる。怖かったけど、せっかくの心遣いを無下にできない。恐る恐る片足を浮かせ、桶の中のお湯に浸けた。
あ、これなら何とか。熱いけど耐えられないほどじゃない。頑張れば少しの間は浸かっていられる。
耶神がほっとしている様子を眺め、胡内も密かに笑った。
「俺と一緒にお風呂入ってみる?」
「……」
時折怪しく揺れる瞳。彼に見つめられると、不思議と従ってしまう。言うことを聞かないといけない錯覚に陥る。
誘われるまま手を取り、とうとう彼と同じ風呂桶に入った。でもそこはさっきの湯温の比じゃなくて、心の中で大絶叫した。熱い。めっっちゃ熱い。死ぬ死ぬ死ぬ……。
「耶神くん、大丈夫だから。動かないで」
「ひえぇ……」
この状況で動くなって、彼は意外とスパルタなのかもしれない。熱湯を恨めしく思って半泣きになる。
けど少しすると慣れたのか、茹で上がりそうな熱さもマシに思えてきた。熱いは熱いけど、さっきよりは確実に耐えられる。




