六章 違和感の正体
馬車に乗った師匠は少々荒めに座った。
何か考えているみたいだけれど、世界教皇様ともっと話したかったのかな?
「カルティナーレ総長・・・私ばっかり話しちゃってすみません」
眉を顰めたソラはアイリアを見てそう言った。
「良いよ。宗教にはそこまで興味ないし」
アイリアは窓から外を見てそう言った。
「どうしてそんなこと聞いたの?」
アイリアはソラを見てそう言った。
「何か考えてるみたいだったので」
ソラはアイリアを見て笑みながらそう言った。
「・・・今日の世界教皇、どこか変じゃなかった?」
少し悩んだアイリアはソラを見てそう言った。
「変?」
ソラはアイリアを見てそう言った。
「違和感というか、そう言うの感じなかった?」
「・・・言うのは憚られるんですが・・・」
「何?」
「香水変えたのかな~とは・・・」
ソラがフヒフヒ笑いながら言ったその時、アイリアの端末に着信が来た。
「ヒルデガルトだ」
師匠はそう言うと電話に出た。
「殿下はそっちに着いた?」
「着いたんだけどさ、違和感感じなかった?」
「違和感?どんな?」
「わからないけど・・・例えば、香りとか」
「香り?」
ヒルデガルト様の声には疑問符がついている。
「燦煌教会には梨々香が居たし、殿下と食事もしていた。香りが違うなら梨々香が真っ先に気付くはずだ」
ヒルデガルト様から話を聞いた師匠が私の方を向いた。
「香水、どんな匂いからどんな匂いに変わったか説明できる?」
携帯端末を持ったアイリアはソラを見てそう言った。
「調香師とかじゃないんで種類までは・・・」
ソラはアイリアを見て困ったように言った。
「雰囲気でも良い」
「普段は優しくて、少し甘くて、それなのにキリッとしてて、どこか力強くて・・・」
ソラはうっとりしながらそう言った。
「・・・今日のは?」
アイリアはじれったそうに言った。
「青っぽいような・・・土っぽいような雨っぽいような・・・」
「少し引き返して様子を見てくれないかい?少し気になる」
「わかった。運転手、ここで下ろしてくれ」
黒鞘に納まった刀を握ったアイリアは運転手を見てそう言った。
「へい!」
運転手はそう言うと、馬を止めた。
私は師匠と共に馬車から飛び降りて教会へ向かった。
二人の勇者が帰った後、私は不快な臭いを嗅ぎながら聖書を見始めた
かつての仲間たちの死、友人の死、様々な死の記憶が私の瞼を刺激する
次回
七章 青白い沼の少女の眷属




