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余剰の月

青紫雨、私の視界を一瞬にしてそれが塗り潰した。雨音の集き、すべてが一つの色に溶けていく。むせ返るような生暖かい湿気と土の匂い。霞の中で薄く広がって滑り落ちていく。思考の狭間で微かに揺れる。


横超、物質D、欲望する機械、秋桜、ZONE、脱領土化、プロキシマ星系産の地衣類、そろそろ登れカタツムリ、北条時政、トロツキー、ヴェルダンの肉挽き機、雇用、利子および貨幣の一般理論、等活第九小地獄、小さな青い花。

どこまでもズレていく。どこまでも歪んでいく。

空は遠い。


認識の欠如は自我の崩壊ではない。思考の欠如は存在の消滅ではない。私の空白はなおも存続する。

はじまりはおわりではない、理解はその瞬間に理解ではなくなる。

空白は空白ではない。空白は虚無ではない。空白は空ではない。

空白は夜ではない。空白は私ではない。

空白は余剰の月だ。


無限に続く反復運動、雨は巡る。空と大地と海を繰り返し繰り返し、往還する。

存在は空転し続ける。遥けき彼方、分断された宇宙。時間の外にある私の目。


対象が自己に可能な認知を超える存在であるとき、事態の把握は原理的に不可能である。

答えのない問いに対して、私達が下す解釈が、一つの回答として選択され世界に影響力を行使する。


2つの空がみえる。掴む事のできる空は1つしかない。

右目と左目でひとつずつ、太陽と月、星空と青空、ひかりが見える。

余剰の月、雨粒で滲んだ瞳にたくさんのひかりが見えた。


存在は無を慟哭する。

茫漠とした魂は、虚空に漂う。

空をみて、夜を見て星をみて、余剰の月を見た。


無限と永遠、救済と安寧。苦痛と虚無、有限と存在。

問いは繰り返される、回答も繰り返される、けれど終わりはない。

私は雨が好きだ。夜が好きだ。空がすきだ。私は無意味さが好きだ。私はやるせなさが好きだ。私はどうしようもなさが好きだ。私は私が好きだ。

砕けたように舞い散る、残響のように刹那にこだます、雨粒が好きだ。

それは、余剰の月だ。余剰の月は私だ。

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