第8話 邪悪は悪と気付けない
「フレア、神崩しは何故俺らを狙って来るんだ」
「早く口を開いちゃったほうが身のためだぞ〜!」
ああ……
始まった。
地獄の時間、尋問時間。
毎回思うんだが、この光景を見てるとどっちが悪人かわからなくなるんだよな……
「殺せ……早く殺せよ……!」
「殺すかよ、吐け」
フレアは死を望んでいるようだが、
要はやはり情報を求めている。
死んだほうがマシだろうな……
「早く……殺せよォォ……!」
「炎砲」
――シーン……
「俺のフィネスは能力の発動を封じることができる。どういう原理かは知らないが」
「ッチ……貴様ら……」
「テメーは、なんで死なねーんだ」
「あぁ?」
確かに、何故自害しないんだ?
前に会ったキキョウという奴は尋問される前に自分で口封じした。
「お前、死ぬのが怖いんだろ」
「……ッ」
「ああ、怖いさ……それの何が悪い」
そりゃあ、死ぬのは誰だって怖いだろう……
俺も死ぬのは怖い、きっと母さんや玲奈も怖かっただろう……
「なあ、フレア……」
「……なんだよ」
俺らフレアに同情してしまった。
死を恐れないのは、自分の命よりも大事なものがある狂信者だ。
フレアにはそれを感じない。
他の奴よりも人間味を感じる。
「お前……神格者……だろ?」
「何ッ!?」
「……何故わかる」
神崩しに人間は居ない。
マックスから聞いた。
マックスは神格者がわかる。
フレアは人間だ、その性格からもわかる。
「フレア……お前は脅されてたんだろ?」
「……バルザーヌ、奴は貪欲で被人道的な奴だ」
「バルザーヌか……やはりアイツは殺さなくては」
案の定フレアは神崩しに脅されていた。死が怖いのはそういう事があったからだろう。
「確定だ……必ず神崩しを滅ぼす」
「了解〜!要っち!」
「その呼び方やめろよ……」
うん……!皆んなもやる気満々だ!
必ずバルザーヌを討ち、フレアを救わなくては……!
「フレア……先程は済まなかった、俺にはお前の恐怖を見抜けなかった」
「構うな、バルザーヌを殺してこい。俺も奴らを許せない」
「だが……」
フレアは悔しがるように話した。
「奴らを殺せば、世界はきっと滅びる」
「何……?」
空気が変わった。
神崩しを滅ぼせば、世界が滅びる……?一体何故だ?
「バルザーヌから聞いた、シュートは世界を滅ぼす、だから我らは止めなくては……っと」
「なるほ……」
「構わん、殺してしまっても」
「要……?」
「あの外道に慈悲など要らん、始末した方が零のためでも、フレアのためでもある」
「でもそしたら……」
「所詮はヴィランの戯言だ、無視してしまっても構わん」
要の目の色が変わった。
その目には慈悲はない、ただ殺すという一つの単純な意志が映し出されている。
「フレア、お前って学生だろ」
「ああ、18だ。人間だ」
やはりフレアは人間だ、それに学生……しかも俺と歳も近い。
そんな彼を脅して、利用する。
アァ、わからん。どっちが悪かわからない。
「バルザーヌはどこにいるんだ」
「……言ってもいいのか?」
「言え、これは問いではなく命令だ」
「要……!よせ、フレアはまだ学生だぞ……!」
「黙れ影狼、俺は差別なんてしない人間だ。たとえ女だろうが子供だろうが俺は平等に扱う」
「フレア……無理をしなくてもいいんだぞ」
「烏ヶ山……あそこにある烏ヶ山神社の境界だ、あそこからこっちの世界に来ている」
烏ヶ山……
俺達の学校の近くにある山だ、あそこは色々な噂が流れていて、神隠しが起きるだとか、人喰いの化け物が現れるとか言われていた。
「行くぞ、ここに居ては何も進まん。それにこの惨状、バレたら捕まる」
「本当に行くか……?」
「もう引き返せない。俺らが神崩しと対抗してる時点で運命は決まっている。お前は運命を否定するのか……?」
もう……引き返せない
だけどそれも承知の上でここに来た。覚悟があるからここに来たんだ。
「俺は、覚悟があるからここに来た。そしてお前たちと共に戦った」
「零の言うとおりだ」
「もちろんだぜ……俺様が居ればパルメザンなんてボコボコだ!」
「バルザーヌだぞ!赫氏、パルメザンはチーズだぜ!」
「そうよ!影狼!」
「影狼……皆は既に覚悟を決めている。お前は覚悟の上で俺についてきたんだろ」
「わかった……行くさ、だがこれだけは言っておく」
「何があっても俺はお前たちを助けない、俺は自分を救うために戦う」
みんな覚悟が決まった。
必ずバルザーヌを討ち、救う。
影狼が言ったとおり、自分を救うためにだ。もちろん仲間も救いたいが、自分のことだけで頭がいっぱいになるだろう。
「行くぞ……対神崩し科……!」
『おー!』オー……!
「フレアも行くのか?」
「俺も行っちゃ悪いか?」
「ふっ、聞くのは野暮だったか」
フレアも、俺たちも、要たちも、バルザーヌ率いる神崩しを撃つために、覚悟を決めたんだ……!
自分を裏切るな黒野零、必ず勝って美味い飯を食うんだろ!
……これって死亡フラグか……?w
なんて考えながら、俺達は燃え尽きた住宅街を歩んで行った……
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