第4話 赫耀破者エリート
翌日
――ザザザァァッ
今日も雨だ、土砂降りだ。
昨日は久しぶりに晴れたというのに……また憂鬱な学校が始まってしまった。
「おはよう、零」
「どうした?そんな浮かばない顔して」
「ん……ああ、少し考え事を」
それにしても……
昨日だけで色々なことが起きすぎて頭の整理なんて出来たもんじゃない。
「昨日は大変だったな」
「そうだな……」
稲光が煌めく空を眺めながら自転車を漕ぐ。
――キーンコーンカーンコーン
「まずい!?もうこんな時間!?」
戒の言葉で我に帰る。
「へっ!?嘘だろ!?」
「まず〜い!遅刻しちまうぜ、戒!」
俺達は自転車を置いて全速力で教室に向かう。
――ガシャン
勢いよく教室の戸を開く。
それと同時にクラスメイトが俺達に目を向ける。
「ふ〜間に合った〜!」
安堵の吐息を消し飛ばす勢いで背後から怒号が聞こえてきた。
「零ィィィ!なぁに遅刻してるんだぁぁァァァァァ!」
声量と勢いに思わず背筋が跳ね上がる。
「あっ……!」
「さ〜て、黒野零……今日はみっちりお仕置きしてやるからな……!」
クラスメイトの目の前で実質的な死刑宣告を受けた。
「お……終わったぁ……!」
教室は笑い声でうるさくなる。
戒も遅刻したくせに笑いながらさりげなく着席していた。
「よーし、黒野零」
「今日のお前の席は俺の隣だ!」
最悪だ……!
なんてことだぁ!
嫌だぁ!
助けてくれぇぇぇぇ!
――放課後
「イヤァァァァ」
「今日も部活あるからみっちりお仕置きしてやるぜ!」
そうだ、よりによって宮田先生は俺のクラスの担任で部活の顧問だ。それに他の生徒の何倍も仲が良いから無駄にキツいお仕置きをされる。
――部活中
「よ!零、お疲れ様!」
戒の労りの言葉にとてつもない棘を感じた。
「戒……あおってやがるぜ……!」
「ハハハ!俺の代わりにみっちりお仕置きをされてくれたんだな!」
「零はやっぱり聖人だな!」
こ……こやつ……!
戒は真面目な性格とは裏腹に、俺をイジり倒す意地悪な奴だ……!
まあその性格も相まって憎めない奴なんだがな!
「戒め!」オラッ
俺の投げたボールは戒の頭上を通り抜け、校舎の裏側へと飛んで行った。
〈イデェッ!?
校舎の方から低く、デカい悲鳴が聞こえてきた。
「あ……まずい……?」
――ダッダッダッダッダッ
ものすごい足音と共に砂埃を立てて向かってくる。
「おい……てめー!」
外れた馬券を見るような目、ゴリラの様なガタイ。
葬蘇赫だ……!
「あっ……赫……!」
「どうしたんだ……そんなに怒って……!」
動揺しすぎている。
明らかに怪しすぎる。
「オメーだよな……!俺に石をヘッドショットした奴は!」
「いや……ボールじゃ……?」
「どっちでも変わんねぇだろォォォ!」
「うわっ!?来るな赫ァァァ!!」
――バゴォォッ!
地面が……へこんだ!?
赫が拳を叩きつけた場所が、まるで地盤ごと沈み込んだように崩れていた。
「嘘だろ……!?」
「ふざけてたんじゃないのか……!?」
赫は怒りに任せて拳を握る。
「ボールの罪はボールで償えェェェ!」
「いや意味わかんねぇよ!?」
「戒〜!なんとかしてくれ!」
「……まあ、赫。落ち着け」
戒が前に出ると、赫の動きがピタリと止まる。
赫の巨体を光るバンドが締め付ける。
「うわっ!なんだよこれは……!」
「離せ!離しやがれ!」
赫が暴れるもバンドはびくともしない。
「落ち着けって、赫」
「俺は……常に落ち着いているゾォぉォォ!」
誰が見たって落ち着いていないんだよな。
「おい、赫」
「アァン?なんだよ」
「お前……デウスが居るのか……?」
俺が問うと、赫の体からよく見る煙が舞い上がる。
「俺のデウスは……」
「破者……だッ!」
その姿はまるで悪魔の様な見た目で紅色の眼光、強靭な腕。
「エリート……!かっこいいな……!」
「へへっ、そんな褒めんなって!」
「お前じゃねえよ!」
俺達は笑いながらグシャグシャのグラウンドで寝転がっていた。
部活をサボってて宮田先生に叱られたのはまた別のお話……
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