第26話 最期の精巧《フィネス》
※この物語はストーリー重視の作品です。
世界は全てを記憶する。
最期の記憶も、原初の罪も。
どんなに叫んでも世界は待ってくれない。
それでも俺は――
『この無情な世界に着いて行く』
世界は俺に応えている。
シュート《Shoot 》最終章、開幕。
「バルザーヌッ……!」
「怖いか、それとも怒りか?我には関係ないことだがな」
バルザーヌが不敵な笑みを浮かべる。その姿は悪魔そのものだ。
「影狼をッ……よくも!」
拳を握りしめる。足に力を入れて、飛び上がる。
「全力超躍ッ!」
拳から大量の空気が溢れ、時が遅くなる。そして、拳はバルザーヌの顔面を捉える。
「喰らえ、バルザーヌッ!これは影狼の分だッ!」
「無限の死」
バルザーヌの手中から、死の気が溢れ出ている。無限の死。影狼を葬った即死の攻撃……!
「だけどよ、俺には遅く見えるぜッ!」
ゆっくりと流れる時の中で、確実にバルザーヌの攻撃を避ける。そのまま、拳はバルザーヌの顔面を殴る。すると、背後から戒の声が聞こえてくる。
「零……避けろ……!」
ふと、バルザーヌに目をやると、放ったはずの攻撃をもう一度繰り出そうとしている。
「ッ……!危ないッ!」
なんとか回避するが、死の気が俺の頬を掠める。遅い時の中でも、奴の攻撃はとても早い。
「ッ……はぁ……はぁ……危なかった……!」
「気をつけて、零ちゃん!」
雅が肩を触る。
そして、俺に下がれと言わんばかりに前に出る。
「燃ゆる軸!」
バルザーヌの周りを業火で囲う。
目にも見えない回転が摩擦で火を起こした。
「やはり東方雅……さすがはルナドールを葬った実力者だ」
「だが、いいか。その程度の力で、我が4柱に叶うはずがない」
すると、体の中から空気が溢れる。全開が俺に問いかける。
「貴様は聞いたか、4柱という言葉を」
「4柱……なんのことだ」
その事を全開に問う。明らかに"4柱"という言葉に反応していたのは確かだ。
「思い出したぞ……全ての元凶が」
全開の言葉を遮るかの如く、バルザーヌが語り始める。
「4柱の目的、それは原罪の赦しだ。我が思い出したのはシュートが発動してからだ」
その言葉に全開が飛び上がる。
「フィアリーはどうしたッ……!」
フィアリーと言う名前にバルザーヌが反論する。
「既に喰らった。シュートは我々が引き起こしたのだ。貴様は原罪に裁かれ続けるのか?」
淡々と語り進めるバルザーヌに戒は警戒を解かない。
「気をつけろ……零。奴がいつ襲ってくるかはわからない。気を抜くなよ」
すると、全開がバルザーヌ目掛けて拳を掲げる。
「全力超躍ッ……
!」
「待てッ……全開ッ!?」
バルザーヌは何もせずに全開を見つめる。しかし、微かに死の気配を感じる。
「一体何を企んで……」
すると背後から戒が叫ぶ。
「零ッ!伏せろッ……!」
「なッ……!?」
バルザーヌが目の前に現れた。全開ですら気づいてなかった。全開が攻撃したバルザーヌは偽者だった。
「全開ッッッッ!」
全開の名を叫ぶがもう遅い。既にバルザーヌは死の気を放つ寸前だ。
「間に合わないィィィィッ……!」
ドガァァァァァァァァァ……
まるで時が止まったようだった。
世界の時がゆっくりと流れて、死の気が戒を蝕んでいく。
「か……い……?」
「はぁ……はぁ……ギリギリ……間に合ったみたいだ……!円光は発動したッ!」
戒がバルザーヌの一撃死を無効化して、その場に立ち尽くす。しかし、すぐに膝から崩れ落ちた。
「戒……大丈夫かッ!」
「だが……死の力は俺が思ったよりも強いようだ……俺は……もう死ぬ……」
「なッ……何言ってるんだよ……戒!」
戒の衝撃的な言葉に俺の心は音を立てて崩れ落ちた気分だ。すると、戒の拳が俺の胸に当てられる。
「零ッ……最期だッ……最期の精巧だッ!どうか、伝わってくれッ……!」バサッ
倒れた戒の体から光が発せられる。
その光はバルザーヌの死の気を浄化し、静かに消えていく。
「か……戒……?」
その顔は安らかに……けれどどこか寂しげに眠っている。
「あ……ああ……ッ……うごぁあぁあぁぁぁッ!」
何も考えられない。何も聞こえない。俺は世界に拒まれるのか?何もわからない……なぜ世界は俺をこんなにも……
「零ちゃん……!油断したらダメ!」
──
【???視点】
「戒……許してくれたか?」
視界を光が見たし、謎の声が俺の名前を呼ぶ。
「俺は……何を……」
「戒……俺はお前を守り続けた、だけどお前を救うことはできなかった」
その声はどこか懐かしく、聞き覚えのある声だ。その声はどんどん近づいてきて、ついには背後から聞こえてくる。
「誰……だ……」
勢いよく振り返る。
そこには、自分の顔とよく似た男が立ち尽くしている。
「戒、俺はお前の為になったかな?」
「あ……お前は……ッ……」
視界が濁る。涙がどんどん溢れて、視認すら難しい。
「刃……じゃねえかよ……クソ兄貴ッ……」
「俺を叱ってくれるか?俺は殺人鬼だ、そんな俺を叱ってくれるか?」
「クソ兄貴ッ……お前はブラコンで、俺のことをずっと大事にしてくれた。だけど、お前の正義は度がすぎてるんだよッ!だから死んで当然だと……だけどよ……俺はお前とまた遊びてえよッ!」
傀儡戒は光となって消えた。
その光は数々の想いと記憶を世界に保存するだろう。
傀儡戒、死亡
――
ドカァァァン
衝撃波がボロボロの俺を襲う。
雅が身を挺して、俺を庇う。
「ダメだッ……ダメだッ……もう……」
心がボロボロだ、友人を5人も失った。影狼、要、赫に焔。さらに目の前で戒が死んだ。
「雅……俺はどうすればいいんだッ!」
雅に手を伸ばす。雅はバルザーヌの攻撃を受けてかなりの傷を負っている。即死攻撃ではない。ただし、それでも奴の攻撃は危険だ。
「どうやら今、ここで世界は再び生まれ変わるだろう。新世界に貴様らは存在しなくて良い。我ら神々の世界として生まれ変わるのだ」
バルザーヌが俺たちを見下し、嘲笑する。俺の体は鼓動と他の振動で揺らがされる。
「ッ……ここで終わるのか……?」
振動がさらに強くなる。それと同時に、真空戦線が揺らぎ始める。
「なんだ、この揺らぎは。アルス、確認しろ」
バルザーヌはアルス、赤髪の少女に命令を下すが、一向に動かない。
「アルス、聞いているのか?」
バルザーヌがアルスに立ち寄ると、太陽が輝き、爆音を立てて砕け散る。
ドガァァァァァァァァァン
砂煙が舞い上がり、その中に2人の影が映る。
ここまで見てくれてありがとうございます。
そして投稿遅れてすみません
ついにシュート《Shoot》が最終章を迎えました。
最終章は零の仇、バルザーヌ・ドンドレドとの最終決戦。物語の都合上、短い章になりますが!ぜひ最後まで、零の旅路を見届けてください!
予定では全2話の最終章を予定しています。
後日談、エピローグも書く予定ですので気長にお待ちください。




