第24話 虚偽は真理を見透す
【戒視点】
「課長……式部の情報はわかりましたかッ……!」
「盗まれた資料にしっかり記載されてるわッ!」
俺は零と別れた後、課長と焔と共に式部と言う男を追っていた。
恐らくだが式部と伏見が繋がっていて、その裏にバルザーヌが糸を引いてるはずだ。
「ふぅ……少し休憩しよう」
「そうね……!」
腰を下ろして資料に目を通す。
そこにはこう書かれていた。
__________
『没落王族"式部家"』
歴史に突如として現れた"式部"と名乗る王族。歴史には非人道的な殺戮を繰り返していた。
しかし、今から120年前に突如歴史から名が消えた。未だに詳細は明らかになっていないが、恐らく現代にも"式部家"の末裔が存在しているだろう。
ある情報者から提供があった。
"式部"の名を持つ者が発見された。
その者の名は"式部圭人"
__________
「本当はその後にも書いてたんだけどね〜……アイツに破かれた……」
「話の流れ的に大事な情報がありそうだったけど……」
「私はそう言うの覚えれないんで〜」
そういえば、零たちは伏見を倒せたのかな……?バルザーヌの情報を得ることができたのかな……?
そんな事を考えていると、焔が話しかけてくる。
「戒氏、その式部圭人って言う奴さ王族なんだろ?」
「ん……ああ、そうらしいがそれはあくまで式部家が元々王族だったと言うわけで式部圭人が王族とは限らないぞ」
「あーそうだよな、一応なんだが俺の家の近くに豪邸があるんだよ。もしかしたらそこに式部が居るんじゃないか〜なんて思ったんだよ」
俺は一度、焔の家に行った事があるが、確かに豪邸が近くにあったのを覚えている。
「確かにそうだな……行くだけ行ってみるのはありだな」
「だろ!」
「いいじゃん!行こ行こ!」
そうして、焔宅付近の豪邸へ向かうことになった。ちなみに俺たちが向かってた方向は豪邸の真反対だ。
〜焔宅付近の豪邸〜
「ここか、なかなかの豪邸だな」
「そうね……少しくらい何か貰っていってもいいかな……?」
「おッ、良い案だな!」
「シンプルに窃盗をするな、俺たちは式部圭人を探しているだろ?」
俺が式部圭人の名前を出した瞬間、カーテンが閉まった。わかってはいたが、ここには確実に人がいる。それが式部がは不明だが。
「とりあえずインターホン押そ!」
「そうだな」
――ピーンポーン
応答がない。確実にここには人がいるはずなんだが。
「アレ……?やっぱり居ないのかな……?」
――ピーンポーン
応答がない。やはりここには式部圭人が居るのか……?そう考えながら、豪邸の入り口に手を掛ける。
ガガガガガガ
「あ……開いた……」
「なーんだ、開いたじゃん!」
「よし、入るぞ戒氏!」
(俺たちは誘われてるのか……?)
ガチャッ
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔するぜー」
「お邪魔します……」
豪邸内に広がるのは真紅のカーペットと目に余る美しい内装。中央には大きなシャンデリアが。
「なんだか不気味だ……」
「どうしたの、戒ちゃん?もしかして怖いの〜?」
「少し黙れ」
しかし、目の前に広がるホール。
やはり違和感がすごい。
大理石の床は足を動かすたびに軋む音が聞こえる。
「式部圭人……ここに居るのかッ!」
大声で式部の名を叫ぶが反応どころか物音すらしない。
「やっぱり居ないのか……?」
「少し探索しましょ!ついでにお高そうなものがあったら……」
「窃盗はやめろ」
__________
あの後、3人で別れて探索する事になった。
「うーん……こっちには何もないかな」
――バキッ
「痛ッ……!」
突然、地面に足がはまった。
まるで穴が空いたように。
しかし地面には何もない。
傷ひとつない、俺の足は地面に飲み込まれたかのように。
「……おかしい……床に穴なんてないはずだ……!」
足を引き抜こうとするが、何かが足に引っかかり抜けない。
だが視線を落とせば、大理石は傷一つなく、ただ冷たく光を反射しているだけだった。
(……これは、幻覚……?)
目の前に広がる違和感だらけの豪邸。式部と言う不確定要素。
「戒氏ー! そっち大丈夫かー?」
遠くで焔の声がする。
「……ああ、大丈……」
答えようとした瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。
真紅のカーペットが血の川のように波打ち、シャンデリアが無数の眼球に変わってこちらを見下ろす。
「マズッ……攻撃を受けッ……!?」
__________
「ガルルルルルルッ」
目の前から猛獣が走ってくる。
「なッ……何故豪邸……に……?」
おかしい、さっきまで豪邸に居たはずなのにいつの間にか草原のど真ん中にいた。
「来るなッ……!!?」
猛獣が襲いかかってきた。
「離せッ……精巧ッ!」
しかしフィネスは出てこない。
俺はそのまま猛獣の拳を顔面にモロに喰らってしまった。
__________
【雅視点】
「……ああ、大丈……」
(戒ちゃんの声……?何かあったのかしら)
――ガサッ
「誰……?」
後ろを振り返ると、赤い何かが私の目を目掛けて飛んできた。
「燃ゆる軸!」
間一髪で飛んできたものを防いだ。
「なんなのよ、もう!」
視界の先にはもう何も見えない。
しかし、視界の端には人影が見えた。
「誰……?まさか、式部ちゃんかッ!」
そう言いながら、人影を追う。
__________
【焔視点】
「戒氏……戒氏……!大丈夫か……?」
「なッ……何故豪邸……に……?」
戒氏は地面に片足が刺さっている。しかし、まるで透過しているかのように穴が見えない。
「来るなッ……!!?」
そして戒氏の目の周りには赤い液体が張り付いている。
「離せッ……精巧ッ!」
「なっ……待てッ!」
戒氏の体から煙が立つ。
「神速ッ……!」
近くにあった壺を戒氏にぶつけた。そのまま戒氏はピクりとも動かなくなった。
「危ない……すまないが戒氏は寝ててくれ」
「それにしても……どうして急に俺を攻撃して……」
――カダッ
「なッ……なんの音だッ……!?」
部屋の奥から鈍い音が聞こえた。
「誰か……居るの……かッ……」
――バサッ
「死は貴様らに対する情けだ」
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