第23話 伏見:超常的殺戮録
「鈍い鈍いッ!やはりお前には警察官は向いてなかったんじゃないかッ!」
「っ……お前ッ……!」
伏見が岸を挑発する。
岸は伏見に向けて指を差し続ける。
「零……これは俺の因縁の問題だ」
「何言って……」
「お前らは式部と言う名の正体を明かしに行け」
岸は真剣な顔をして俺の肩を掴む。
「岸……お前は結果だけに囚われ過ぎている……」
すると戒が言う。
「お前は……赫の仇を討ってくれ……俺たちの為にも……赫の為にもだ……」
「……わかったよ……赫の仇は俺が討つ……!」
戒はそう言って焔と雅と一緒に式部と言う男を追って行った。すると岸が語りかけてくる。
「……ああ、確かにそうだ……だが、アイツを殺さないと俺の心に大きな穴が空いたままだ」
「結果に至る過程が結果を分ける……俺と一緒に伏見を殺す、俺も赫の借りがある」
すると、上から伏見が語りかける。
「過程だと……?結局は結果だけが確定的な運命なんだッ!過程など結果に対する評価にしかならないッ!」
「くッ……やはりお前はここで殺さないとダメだッ……!」
「黒野……お前を殺すようバルザーヌに命令されたんでな、さよならだ」
伏見が飛び掛かってくる。その姿は幽霊そのものだった。右足は欠損しており、足ではない何かをつけている。
「空気反発ッ……!!」
全開の拳が伏見の顔面を捉える。空気は伏見の顔面を引きつける。
「ウグッ……」
伏見は拳を食らいながらも、笑みを浮かべた。
「いい拳だ……だが、惜しいな」
次の瞬間――俺の視界がぐにゃりと歪んだ。
「なッ……!? 見えない……!?」
「言っただろう、黒野。結果だけが残るんだ。過程なんざ、感じる必要は無い」
伏見の声が、耳の奥で直接響く。
「零ッ!下がれッ!」
岸が叫ぶ。指銃の狙いを定めるが――伏見の気配は、もう掴めなかった。
「僕の感覚の能力は感覚を操り、奪う事が出来るッ……お前らは既に仕上がっているッ!」
次の瞬間
頭に激痛が走る。まるで何かを引っこ抜かれたかのように。
「うッ……!」
「大丈Bかr〜.-/,,[÷<…+・」
ダメだッ……岸の言葉が聞こえない……いや、届かないッ……!
そう考えてるうちに、伏見の拳が視界に入る。
「全力超躍ッ!」
空気を圧縮して時の流れを遅くする。これが全力超躍の能力ッ!
「見えないが感覚で分かる……ここだッ……!!」
拳に微かな感触があった。
しかしその感触は決して人に対する攻撃ではない。
「惜しいな、だがそれも一興……お前の負けだよ……黒野零ッ!」
「僕はお前の触覚を奪った。残るのは結果だけだ、感覚を奪われたお前だけが残る」
伏見が笑いながら迫ってくる。
微かながら感じる。
「クソッ……!」
俺は必死に空気を集めるが、もう距離感すら掴めない。
その瞬間――銃声が響いた。
「俺の自由は伏見……お前から自由を奪う」
岸の弾丸は伏見に命中した。
「岸ッ!?舐めた口を聞きやがってッ!」
「伏見ッ……これ以上お前は何も奪えないッ!」
もう俺は戦線離脱だ。
体が動かせない、後は岸に頼るしか出来ない……
「そうか、わかったよこれで奪うのは最後にしてやるよ……」
「岸ッ!お前の命でなッ!」
見えない、ハッキリと見ることは出来なかった。でもそれは確かな確信に変わる。
「うっ……」
「ふッ……!」
不敵な笑みを浮かべる伏見……
その先には血まみれの岸。
「俺は……近距離戦闘が苦手でな……お前には姑息な手を使うしか無いんだッ……ゲホッ……」
「なんだッ?まだ足掻くのかッ……?」
岸は口元から血を垂らしながら、それでも指を突きつける。
「……あいにく、俺には……まだ残ってるんだよ。同僚の仇を討つっていう、最後の過程がな……!」
指先に宿る光――。
「自由の象徴……因果が俺たちを自由へ導くんだッ……!」
至近距離で放たれた弾丸が、伏見の胸を撃ち抜いた。
伏見は目を見開き、吐血しながら後退する。
「バカな……俺の結果は……ここで終わるはずじゃ……」
岸は崩れ落ちながら、零に振り向く。
「零……これで……過程が結果を変えるって証明した……だろ……?」
その言葉と同時に、岸の身体は地面に沈み込んでいく。それと同時に感覚が戻って行く。
「ッ……岸……お前は同僚のところへ行ったのか……?」
俺の問いに帰ってくる返答は無い。
「そうか……報告しに行ったのか……」
静かに閉じ行く幕、それは世間には到底及ばない世界だ。
「バカな……バカなのはお前の方だッ……!岸流浪ッッ!!」
背後から伏見の声が聞こえてきた。恐怖が抜け落ちない。信じられない状況に現実を見れない。
「なッ……!?伏見ッ……生きてッ!?」
「何が過程だッ……!貴様の……ゲホッ……過程は無駄死にじゃないかッ!」
「空気反発……」
全開の拳を振りかざす。しかし、それは当たらない……いや当てられない。
「自由の象徴……お前は喰らった時点で……因果律はお前を殺した」
「……ッ何……!?岸流浪ッ……!?どこにいやがるッ……!」
岸が俺の拳を止めたように感じた。次の瞬間
「ウグッ……!?心臓が……痛いッ……!?」
俺はそっと拳を下ろした。
「結果がッ……結果は変わるはずがないッ……!」
「お前は過程に負けた。それが結果だ」
「人間は死ぬために生きるッ……運命など結果までの道のりに過ぎないッ……この僕が死ぬことは断じてないバズだッ……」
「それが運命だッ……お前は死ぬ運命だったんだッ!」
伏見は俺を睨みつけながら叫ぶ。
「お前如きがッ……僕に対して語るんじゃないッ……グハッ……」
息を飲み込む間もなく伏見は動かなくなった。
「これで……終わったのか……?」
空は青く輝いている。
水滴が光を反射して虹が映し出されている。
「赫……岸……お前たちの仇は討ったよ、お前たちの分……俺はこの世界を堪能するよ……また会った時は土産話が出来たらいいな……」
惹きつけられるような雲、明日死ぬかもしれない……けれど恐れずに生きた者に明日がある。どんな形でも……それが過程かな……?
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