第20話 明けない夜に差す光、消えて行く輝き
〜葬蘇赫視点〜
俺は何をしていたんだ。
意識を急に失って、それから何も思い出せない。
体が重い。
「かッ……赫ッ……!」
誰だッ……誰が俺の名前をッ……!
声にモヤがかかって聞き取れない……
それに、体も起こせない。
まるで地面に磔刑されているようだ。
「おいッ……赫ァ……!」
「クソッ……俺があの時止めてればッ……!」
2人……誰が俺の事を……
それに何を話しているのか?
理解できない。伏見かッ……!
「生きろッ……生きろよッ……!赫ァァァァァ!」
何言ってんだよ……
俺は生きてるだろ……
光が差し込む。
目が霞む程の光。
「なッ……赫ァァァァァッッッッッ!」
「誰だッ……よ……」
茶髪でアホ面な男と黒髪の男が居る。誰だ……?ダメだ……頭の奥底で思い出す事を拒否している。
「焔……諦めろ、次期に赫は死ぬ……」
「だけどよォォォォッ……!悔しいだろッ……!仲間が殺されてよッ!」
うるさい奴だ……
俺はまだ生きて……
「なッ……」
今にも心臓が止まりそうだ。
なんで……なんで俺の……
――なんで俺の下半身がッ……?
「そうか……全部思い出した……」
俺は妹を助けるために。
伏見禄と言う男を殺すために。
傀儡戒と雷電焔を振り切って。
「なんで俺は……こんな事を忘れてッ……」
悔しさと無念さ……それと寂しさが俺の心臓をグシャグシャにしてくる。
「陽……華……凛……」
『葬蘇赫――死亡』
〜???視点〜
「かッ……赫ッ……!おい……目を覚ませよッ!」
「焔ッ!いい加減現実を見ろッ!
赫は死んだんだッ!」
「テメーには人の心ってもんがねーのかよォォォォッ……!」
フン、醜い争いだ。
葬蘇赫は既に死んだ、悲しみなどただの過程に過ぎない。
結局は結果だ、過程は死に様の評価にしかならない。
「ただし葬蘇赫、僕はお前をしっかり弔ってやる」
僕は前々から周りにこう言われていたんだ。
『お前ってやっぱり俺等と違うよな』『それな、何考えてるか分からない』
そうだ、確かにそうだ。
僕は他人と考え方が違う。
男は殺すが女と子供には手を出さないし、殺した人間は弔う。
なんでこんな考え方なのかは僕自身にも分からない。
「赫ァァァァァッッッッ……!」
「また奴の犠牲者が……」
また別な奴が……
ん?アイツは……
誰だ……?
前に会った事が……
「そうか……アイツか……!」
「そうだった、アイツは僕が殺した警察の同僚か!」
覚えているぞッ!
あの時の絶望に浸っていた顔をしっかりと目に焼き付けたからなッ!
「クソッ……誰がッ……誰が赫をォォォォッ……」
「落ち着け……零、焔……お前らの気持ちはよく分かる、だけどもう終わった事だ」
あの男、僕と気が合いそうだ。
僕と同じ考え方をしているんだな!
「それより早く退いてくれないかな……?」
「まあ構わんか、僕はただ高みの見物をするだけだ」
――パァァァァン……
「なッ……なんだッ……!」
何かが僕の顔を掠めた?
まさかアイツか……?
あの時も指から何か出してたなッ……
「伏見禄……!今度こそお前を殺す」
「ッ……!?」
しまった……!
どうやらアイツらにバレたようだ。
クソッ、今日はついてない。
「ああ!そうさ!この僕こそが葬蘇赫を殺した張本人さ!」
今ここで戦って、僕が黒野零に勝てるとは思えない。ひとまず、バルザーヌとか言う男の元に戻るか。
「やろう……!空気反発ッッッッ……!」
「よくもッ……よくも赫をッ……!神速敗者ッ……!」
今の僕では到底、黒野零には敵わない。だけど…….
「ウグッ……!」
逃走経路は既に出来ていたッ……!
「さらばだッ!黒野零……!ゲホッ……」
「次はお前を殺してやるからなッ!」
ひとまずバルザーヌに報告かな。
だが……
何故黒野零ではなく葬蘇赫を殺すよう命令を……?
僕が他の人と考え方が違うからか、よく理解ができない。
「待てェェェェェェ……!逃げるなッ……このドグサレがァァァァァァ!」
「これは逃亡ではなくッ!勝利はの戦略的撤退だッ!」
葬蘇赫、お前は必ず弔ってやる。
ルーティーンと言うのは毎回やらなきゃ後味が悪い。
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