第12話 届かなかった想い、重力の中心にて叫ぶ
※この話は第1章のエピローグ的な内容となっています。
物語をより深く理解するために、ぜひ第1話から順にお読みいただくことをおすすめします。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
地面が揺らぐ、雲が崩れ、青空が落ちる。天空戦線が崩れた……
世界は要の"重さ"に耐えきれなかった。
「なッ……天空が……崩れてッ……」
「イヤァァァァァー、私の天空戦線がァァァァァ」
俺を連れてきた赤髪の女が悲鳴をあげている。彼女が能力を解除したのではない、これは……おそらく要の重力によるものだろう……
「おい……女……」
「なッ……なんですか……?」
このまま崩れたら何が起こるかわからない……彼女に頼んで解除してもらおう。
「この空間……お前が作ったんだろ……?」
「そッ……そうだけど……」
「この空間から俺たちを外に出してくれ」
「そッ……それがぁ……」
彼女が言うには、作った空間は自分の能力では消す事ができない、そして出す事はできるが、壊れかけの空間から出す事は難しいらしい。
「じゃあ、このまま崩れるのを待つだけなのか……?」
「そうだね……でも大丈夫!きっと安全に戻れるよ……!」
次の瞬間、足元が崩れる。
その隙間から見えたのは、元々居た烏ヶ山神社の天空だ……
「安全ってなんだよッ!?」
「えへへ……」
俺たちは成す術なく落ちて行く。
後は死を待つだけかな。
と思っていたら、瞬間……俺の身体に光るバンドが巻き付く。
「この光……まさかッ……!?」
「大丈夫かッ!零!」
「戒ッ……!」
戒が手を差し伸べる。
俺も手を差し出す。
その時、あの男が言い残した言葉を思い出した。
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「傀儡戒にこう伝えてくれ……」
「お前は……何処にいても、最愛の弟だ……だから許してくれ……叱ってくれ……忘れないで……く……れ……」
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「零氏〜大丈夫か〜!」
「零、無事かッ!」
「焔、赫、お前たちも無事だったか!」
「俺のことを舐めてもらっちゃあ困るぜ」
すると遠くから、女の悲鳴が聞こえてくる。
「イヤァァァァァ、落ちちゃうゥゥゥゥゥゥ」
雅だ、雅が成す術なく空を舞っている。
「俺に任せろ!」
戒がそういうと、雅の身体に光のバンドが絡みつく。
「うわァァァァァ、何これェェェェェェ!」
そして焔が空気を固めて紐にし、雅に向けて発射する。
そして光のバンドに引っ掛けて引っ張る。
「零ちゃん!無事だったのね!」
「れッ……零ちゃん……?」
「戒ちゃんたちも無事なのね!」
「ああ、なんとか」
「影狼ちゃんと要ちゃんは?」
……ッ
そうだ……そうなんだ……
言えない……言いたくない……
このまま忘れたかった。
悲しみを共有したくない……
悲しむのは俺だけで良いんだ……
「きっと……」
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「傀儡戒にこう伝えてくれ……」
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「ぶ……」
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「お前は……何処にいても、最愛の弟だ……だから許してくれ……叱ってくれ……忘れないで……く……れ……」
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「……ッ」
「零ちゃん……?どうしたの……?泣いちゃって……?」
死と言うものは実に残酷な事だ。
けれども、それは美しい物でもある。生命は誕生し、成すべく事をして死ぬ。それが生命という物なのだから。あの男も戒に……
まて、あの男は何故戒に……まさか……
「話を……逸らすことになるが……戒、お前に兄弟っているのか……?」
俺が戒に聞くと、顔色を変えた。
「何故それを」
「さっき……言われたんだ」
「お前は……何処にいても、最愛の弟だ……だから許してくれ……叱ってくれ……忘れないで……く……れ……」
「要は……そいつを殺した」
「……ッ、刃か……」
「要ちゃんはどうなったの……?」
雅の表情は悲しみの表情に変わった。けれども、どこか安らぎのある、見たら心が安らぐ表情だった。
「……ッ」
「死んだ……刃と……相打ちだッ……」
戒の表情は変わらない、だが悲しげの表情でもあった。
「ああ、アイツは死んで当然の兄だった……」
「幼い頃から、他人を容赦なく殺して何度も少年院に入れられてた……」
「ただ……アイツは俺のことをずっと守ってくれて、それで人を殺したんだ……」
「戒……」
やはり……
バルザーヌ・ドンドレド、貴様はこの世には存在してはいけない奴だ。必ず貴様を討ち滅ぼす。
貴様に苦しまされた人たちと同じ苦しみを味合わせてやる。
影狼……要……フレア……そして刃……
失った者は戻らない、それは誰であろうと。だが、それも覚悟の上でフレア、影狼、そして要はここに来て散っていった。
結局、人間は死ぬ。
ただそれが早いか遅いかの違いでしかない。それが運命というものなのだから。だから俺ほ運命に従う。ただ波に乗るように運命に沿って生きていく。
第一章 届かなかった過重 完
シュート《Shoot》を読んでいただきありがとうございます!作者のLeakと申します。
この度は、みなさまのおかげで1章『届かなかった過重』を無事に完結させることができました!
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