表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/28

第11話 天国の重力(ヘブンズグラヴィティ)

【同時刻】東方雅の戦線


「その呼び方をやめろ、神経が苛立つ」


「ふふ、そんなんで怒ってちゃ血管破裂しちゃうよ!」


「まあいいさ、東方雅」


「これから貴様を殺す」


「やれるならやってみな!」


回帰回路リバースジャイロ……!」


次の瞬間、私の周りで甲高い音が響く。目には見えない高速回転で近寄るものを消し炭にしちゃうんだから!


「ルナレイン!」


ルナドールちゃんの拳が私に降り注ぐ。しかし目の前で拳が消える。


「何ッ!?」


「貴様……何をしたッ!?」


「私の周りには目に見えない回転があるんだよ!触れたら全部削り取っちゃうから!」


月光覇罪ルナジャロウ……!貴様は動けない」


ルナドールちゃんがそういうと、私の周りが急に暗くなった。

そして次の瞬間、暗闇を照らす光が私の周りを照らす。


「喰らいなさい!ルナドールちゃん!」


私が足を前に出すと、腕の一部が光に触れてしまった。次の瞬間、私の腕が裂かれ、血が吹き出した。


「痛ッ!?も〜なにこれ〜……!」


「言っただろう、貴様は動けないと」


「も〜私知らないよ〜!怒っちゃったからね〜!」


「必殺!無限回転インフィニティジャイロ!」


次の瞬間、私の周りで再び回転を始めた。しかし回転が見える。

この回転は存在しない速さで回転して、その回転が空気で摩擦し炎を巻き上げる。


「よ〜し!もう倒しちゃうよ〜」


「って聞こえないんだった」


私の無限回転インフィニティジャイロは物理的な物以外も通さない!ルナドールちゃんは見ることもできない!その代わり私は息できないけど……!


「んも〜!早く倒さないと!」


走り回ればきっと倒せるよ!

その代わり能力解除が早くなっちゃうけどね!


________________


「なッ!?どこ行った……東方雅……!?」


「クソッ……逃げたのか……?いや、しかしアルスの能力発動は解除できないはずだ……」


ルナドールが足を一歩……また一歩と進める。

そして次の一歩を踏み出した瞬間に足が消えた


「ッな……!?何ッ!?」


「足がッ……!?」


しかしその苦痛は一瞬にして終わる。雅の無限回転インフィニティジャイロが既に迫ってきていた。徐々にルナドールの体が削られていく。


「ウガぁッ!?やめろ……!やめるんだ……!?」


しかしその言葉は雅には届かない。そのまま雅の無限回転インフィニティジャイロはルナドールの心臓部に到達し、削り取る。

……ルナドールは死んだ。粉微塵になって死んだ。これが東方雅の能力だ。


________________


「ふう……ふう……倒したかな?」


危なかった〜!

息が持たないよ〜!

でも倒せたっぽいね!やったよ〜!でも……


「どうやってここから出るんだ〜?」


【同時刻】傀儡戒の戦線


「君たちは既に包囲されてる」


「クソッ、神崩しの奴は少なくとも2人はいるのか……」


「喰らえ!俺のジェットで吹っ飛ばしてやるぜ!」


焔が空気を固めて、背後の女に向けて吹っ飛ばした。


「どうだ!」


しかしその空気を止めるように、空中から水の塊が落ちてきた。


「フォルトーヌが言っていただろう」


「神崩しは10人居ると」


「我が名はイルスカ、水を操る能力者だ」


「案外礼儀正しいんだな」


3人か……

フォルトーヌという奴をなんとかしてくれれば、かなり楽になるんだが……


「焔!赫の事を操ってる敵を探してくれ!」


「ああ!どこに居るか知らねーがやってやるぜ!」


さて……

どうするか……

フィネスが戦闘向きだったら良かったのにな……

あいにく拘束しか出来ないし……


(拘束しか出来ないだと……?)


「誰だ……?」


「何を急に……独り言か?」


突然頭の中に誰かが語りかけてきた。聞き覚えのある声、あの時急に話しかけてきた声と同じだ。


(それは貴様が出来ないと思い込んでいるからだ、不可能を可能にではなくて可能を実現するのがデウスだ)


精巧フィネスは……ただ拘束するだけではない」


「なんだよ……怖いだろ……」


(紐を強く引けば物を切ることができる。我が光円アディも強く締めれば物体を切り落とすことができる)


(我が光円アディの範囲内に入っている神格者や神崩しのような能力者は能力の仕様を制限できる)


(つまり一度でも拘束してしまえばそのまま切り落とせるんだ)


「そうか……それは予想外の使い方だ」


「なんだよ……殺すぞ……!」


「頭の良い俺でも考えられないことだったよ……!」


フィネスの能力は拘束だけではない、拘束して切り落とす。

これがフィネスの隠された能力か……


「わかったよ!フィネス!」


「ッチ……もういい!死ね!」


フォルトーヌが糸を引く……

しかし、既にフィネスが糸に絡みついている。

糸が徐々に消えていき、フォルトーヌの腕に付く。


「なッ……糸が消えた……!?」


「何これ……変なのが腕に張り付いて糸が出せない……!」


「フィネスの光円アディはどんな能力者も一度でも拘束されたら逃れることはできない」


「そしてお前が糸をで攻撃するように、俺も光円アディを引くことによって切り刻むことができる」


俺がフィネスとアディの能力を説明したらフォルトーヌの表情が変わった。


「ま……待って……!」


光円アディがどんどんフォルトーヌの体を移動していく。そしてついに腹部に到達した。


「離してッ……!お願いッ……!」


光円アディが腹部を締め付けるように動き、痛みが彼女の身体に波紋のように広がる。


「ガッ……やめッ……!」


「話すッ……話すから……!」


「話すって何をだ……?」


少し油断をしてしまった。

俺は死を覚悟した。

神崩しの奴なだけあって、少しの隙でも俺を殺すことなぞ容易だろう。しかし彼女は殺さなかった。

俺が彼女の立場だったら確実に殺していただろう。


「神崩しの事ッ……この空間のことも……!」


「話せ」


心が痛む。

いくら相手が悪だろうと、女性を痛めつけるのは流石に心が痛む。


「神崩しは……終怒シュートを止めるために……君たちを襲った……」


「この空間は……神崩しの8位のアルスが……作った空間で……」


「戦線で……空間が分かれてて……

私がいる戦線には……イルスカと言う男と……カリガーという男がいる……」


彼女の瞳からは涙が溢れていた。

それは確かな死に対する恐怖だ。


「私がアルスに言えば……この空間を戻してくれる……」


「じゃあ言ってこい」


「ッ……」


「言ってこい」


俺がそういうとフォルトーヌが目の前から姿を消した。


【同時刻】櫻堂要の戦線


「はぁ……はぁ……流石だ」


「櫻堂要、先に一つ言っておく」


「これは決して貴様らに対する宣戦布告ではない」


「世界を維持する為の正義にすぎない」


「何を言っているんだ貴様は」


何が正義だ。

俺が神崩しを悪と認めればそれは悪なんだよ。


「終わりにしよう、黒野零を差し出せ」


と言い刀を俺に向けてくる。

なぜ神崩しは黒野零を特別視しているのだ。


逆転重力リバースグラヴィティ……!」


ジェーエーの逆転重力リバースグラヴィティは対象の重力を逆転させることができる。


「なッなんだこれは……」


傀儡刃の体が宙に向かって飛んでいく。


「今、貴様の周りの重力は上へと向かっている」


「何が言いたい……!」


「解除したらどうなるか……わかるかな」


俺がそういうと、傀儡刃の表情が変わった。それは絶望の顔でもなく、覚悟を決めた顔でもない。


――勝ちを確信した勝利の笑みだった。


「傀儡月烈流・由糸」


傀儡刃の刀身から糸が飛び出してきた。その糸は俺の体を縛り持ち上げる。


「ま……まさかッ……」


「ただじゃ死ねない、貴様も共に死のうではないか」


クソっ……ここから落ちたら、確実に詰む……だが、ここで落ちなければどちらにせよ死ぬ……


「ジェーエー……!逆転重力リバースグラヴィティを解除しろッ……!」


次の瞬間……

一気に体が地面に向かって落ちてゆく。そして俺の体が地面に打ちつけられる。


「グハッ……!?」


身体中が痛む。

おそらく臓器の1〜2個は潰れているだろう……

息苦しい……


「傀儡月烈流・水流」


傀儡刃も落下した。

しかし落下寸前に水を生成し、ほぼ無傷で着地しやがった。


「なっ……んだと……」


「もはや王手……と言ったところかな、櫻堂要」


王手……チェックメイトだ……

もう、あとは殺されるのを待つだけだ。

くそっ……小癪だ。

気に食わん……ただで死ぬのは俺に面子というものがあるんだ。


(櫻堂要……死ぬ覚悟はできたか……?)


は……?死ぬ覚悟だ……?

とっくに出来てるが……ただで死ぬのは癪なだけだ。


(そうか……なら完璧だ、我も死ぬ覚悟はできた。これが能力の完成……)


能力の……完成……?

急に何を言い出す、ジェーエー……


(貴様ら神格者ヘヴンデウスが死を覚悟した時に、能力が覚醒する。死に対する恐怖がないのだからな)


死に際の覚醒……

そうか……そうなのか……


――死なば諸共ということか……


(天国の重力ヘブンズグラヴィティ……!死なば諸共、自分が重力となることだ……!我がジェーエー4、櫻堂要と共に儚く美しく散る)


「遺言はあるか……?櫻堂要」


俺は……


「それとも喋る力すらないのか……?」


ジェーエーと……

ジェーエー4と……

儚く美しく散る……

有終の美を飾る……

常闇影狼……東方雅……黒野零……

お前らに会えて本当に良かったよ……


「答え……」


「貴様はッ……」


「天国の重力ヘブンズグラヴィティの射程距離内に入ったようだなッ!」


「何言って……」


次の瞬間、俺の身体が物凄い力で押し潰される。これが……死を覚悟した能力の覚醒……


「ウガっ……な……グアぁ……」


「なん……だこの……力は……」


「傀儡刃……つよ……かったぜ……」


________________


重力が消えた……

重過ぎた身体が急に軽くなった。


「きえ……た……?」


我の目の前にはもう動く気配のない、櫻堂要の姿があった。


「と……トドメを……」


我……俺は鞘から刀を抜き、櫻堂要に向ける。だが……振り上げる気力が湧かない。


「ッチ……」


もう死んだだろう……あれだけの力をボロボロの身体で使ったのだから。


「アルス……来てくれ……」


俺がそう呟くと、空から赤髪の女の子が降ってきた。


「わあぁぁぁ……!?」ドカーン


「イテてて……」


「ハッ……!?刃くん、大丈夫……?」


彼女は心配してくれているようだが、心配する必要はない……もう身体が持たない……


「大丈夫……だ……」


「それより……黒野零を……連れてきてくれ……」


「わ……わかったよ!」


そういうと、アルスは空間を作り出し、そこから零を引っ張り出してきた。


「離せッ……!?」


零はブチ切れているようだ……

そっちで何があってのかは知らないが……


「黒野……零……」


「誰だよっ……!?早くアイツを……」


「傀儡戒にこう伝えてくれ……」


「お前は……何処にいても、最愛の弟だ……だから許してくれ……叱ってくれ……忘れないで……く……れ……」バサッ


________________

【視点】黒野零


影狼が死んだ……

訳もわからないまま、謎の女に連れてこられた先に影狼の腕を切り落とした男がいた……

何が何だかわからない、急に語り始めたと思ったら、言い終わる前に倒れた。一体何があったん……だ……


俺の視界に映ったのは……

血の海の中央に居る、要だ……


「要ッ……!?」


俺は全力疾走で要の元に駆け寄ろうとした……

しかし、要の手前で弾き飛ばされる。


「ウガッ……なんだこれ……」


「要……要ッ……!?」


俺が叫ぶと、ボロボロの身体から細々とした最後の力を振り絞るような声が聞こえた……


「お前と……出会った事は……後悔……している……」


その言葉にショックを受けた……

要は俺の事が嫌いだったのだ……と本人に言われたのだから。

確かに、要とはあまり関われなかった。本当に少しの時間だった。


「なんで……そんなこと言うんだよ……」


「だって……」


「――別れるのって……寂しい……だろッ……!」


その顔は見たこともない満面の笑みだ……

要はその表情のまま、目を閉じた……


「か……かッ……」


「――要゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛」


前が見えない、音が聞こえない。

視界がぼやけて、要が見えない……

要は死んだんだ……その事実を受け入れたから泣いているんだ……

受け止めたくない真実を受け入れてしまった……それは何よりも辛いことだ……


「要ッ……どうして……どうしてッ……」


「もっと喋って……もっと遊んでくれなかったんだッ……!」


いくら叫ぼうと要は起きない。

何度も朝日が昇っても、太陽が要を照らしても……もう起きる事はない。それが定め、この世の条理というものだ……それでも、俺たちはそれを受け入れたんだ、だから死んだ。影狼だって、死ぬのは怖かっただろうが、覚悟を持ってここに来た。そんな中、俺は味方の死を受け入れようとはしなかった……

情けねーや……俺ッて……


読んでくださってありがとうございます!


もし「続き気になる」と思ってもらえたなら、

ぜひブックマーク・評価・感想のいずれかを!

めちゃくちゃ励みになりますし、続きへの勢いにも繋がります!


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ