第10話 天空戦線、俺たちの明日はここにある
「空空開場・開催!」
赤髪の少女がそう叫ぶと突如として暗い空が消え、青空が広がる。
足元を見るとそれは雲で実態がある。
「零!大丈夫か……!」
俺の視界に映ったのは右手を失った影狼だった。
「影……狼……手、大丈夫なのか……?」
「ああ、大丈夫だ」
「はあ、全く。まさか俺と零で例のバルザーヌと戦うのか……」〈れいだけに……なんつって
「我が……どれだけ……黒野零、貴様をどれだけ警戒視しているかわかるか?」
バルザーヌは俺のことを警戒しているようだ。理由なんてわからないが……
「そうか、でもそんなの関係ねえ!ただぶちのめすだけだからな!バルザーヌ!」
「空気反発!」
「思い知るが良い、我が最強の能力……」
「無限の死を……」
「オラッ!喰らえや!バルザーヌ!」
マックスの拳がバルザーヌの顔面を捉える。しかし、攻撃は止まない。未だにバルザーヌの手から邪悪を具現化したような塊がチャージされている。
「何ッ……!?止まってねえ!」
「これが無限の死……だッ!」
【同時刻】東方雅の戦線
「初めまして、我はルナドール」
「ふん、礼儀いいのね!私は東方雅よ!」
こいつがルナドールなのね!
よくもフレアちゃんを……!
許さないよ〜!
「喰らえ〜!燃ゆる軸!」
ルナドールちゃんの周りが業火で燃え上がる。さっすが私!もう追い詰めちゃったよ!
「月烈技迫……」
ルナドールちゃんの爪を焼き尽くす。私のフレインズ・ビヨンズは炎の回転。触れたら燃え切れちゃうんだよ〜!
「どう?ルナドールちゃん、これが私の実力よ!」
「その呼び方を止めろ、神経が苛立つ」
【同時刻】櫻堂要の戦線
ここは……
さっきまで皆居たはずだが……
「櫻堂要……こっちを見ろ」
「誰だ」
目を向けた先には影狼の腕を落とした男が居た。
「名乗らせていただこう。我が名は傀儡刃と申す」
傀儡……
そういえば零の友人に傀儡戒という男が居たはずだが……
そいつの親族か?
「まあいい、罪の重力!」
「傀儡月烈流・気象」
刃が刀を抜いた瞬間、急激に天候が荒れ、雷鳴が轟く。稲妻が刀身に直撃し、刀身が光り輝く。
「散れ、櫻堂要」
奴の刀から電撃が放たれた。
それと同時に刀を向けて突撃してくる。
「無駄だ!すでに罪の重力は展開している!」
「足元を見ろ、既に攻撃を受けているのは貴殿だ」
その言葉を聞き、咄嗟に飛び上がろうとしたが、間に合わなかった。その電撃は地面を通じて俺に直撃した。
「ウガガッ……!?」
【同時刻】傀儡戒の戦線
「うわっ!?なんだここわー!」
「おいおい!さっきまで夜だっだろーがッ!」
ここは……
確かにさっきまで神社にいたし、夜だった。それに一緒に居た零や影狼さん、要さんや雅課長もいない。
「君たちは既に私たちの術中にはまっているわ!」
「誰だ!」
「誰や!出てこい〜!ぶちのめしてやるぞ!」
次の瞬間、急に俺の体の周りに糸が出てきた。俺は瞬間的にそれが危険でと察した。
「あぶねっ……」
やっぱりあれは攻撃だった。
それに見た感じだが、あれを食らったら今頃体は真っ二つだっただろう……
「あら、君……案外やるのね」
声の主が話終わると、背後から冷たさを感じた。俺は恐怖で振り向けなかった。
「戒氏!後ろだ!」
焔がそういうが、言われなくてもわかっている。既に首元に糸が張り巡らされている。
「動いたら死ぬわよ」
「おい!クソアマ!戒を離しやがれ!」
赫が拳を振り上げながらあちら側に向かって走っている。
何故だ?バカなのか?
何故敵のいない方向に走っていくんだ?
「君たちは知らないのね」
「な……なんのことだ」
「神崩しは10人もいるのよ、ここにいるのは私だけではない」
黒野零の戦線
「喰らえ……無限の死……!」
「まずい……!?」
目の前で死を具現化したようなエネルギーが解放されかけている。
「闇の暗殺爪……!」
その時、間一髪のところで影狼がバルザーヌの攻撃を止めた。
「クソッ、やはり攻撃発生が遅すぎる……」
バルザーヌはそう愚痴を吐くと……
「まあいいさ、これだけは言っておく」
「死は貴様らに対する情けだ……それを拒否したのだ、貴様らに対する情けなぞもう存在しない」
そう言い放つと再び何かをチャージし始めた。
「いくぞ!零!」
影狼の鼓舞、俺は影狼に合わせて技を打ち込むだけだ!
「闇の極悪爪……!」
「空気反発……!」
俺と影狼の攻撃がバルザーヌに向けて、放たれた。その攻撃はバルザーヌの顔面に目掛けて降り注ぐ。
「ングハッ……!」
見事にバルザーヌの首を討ち取った。それは確実な勝利の証だ。
「ハァ……ハァ……」
「……なんかあっさりだったな」
「こっちは右腕を失ってんだぞ!」
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これは敗北ではなく勝利への一歩。
それは勝利ではなく敗北への慢心。
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「さて……どうやってここから離れるか?」
「さあな……?バルザーヌに聞いとけばよかったか?」
俺は完全に勝ちを確信していた……
それが敗北への慢心だと知らずに……
影狼の表情が変わった。
「零……!後だ……!危ない!」
俺は何が起きたのかわからなかった。急に影狼に突き飛ばされた。
わけもわからないままただ眺めるしかできなかった。
――俺はその光景に絶望した。
視界に映るのは死を具現化したようなエネルギーに飲み込まれる影狼とその弾道に立ち尽くす……
首から下の無いバルザーヌの姿が目に映った。
「影狼……!?」
「……」
へ……返事がない。
まさか……そんなはずは……
「影狼は死んだ。あっけなくな」
俺は言葉が出てこなかった。
影狼が死んだ。
それを顔がない男に言われたのだ。
「いや……そんなわけ……」
「そんなわけ……」
「ねーだろうが……!この面無しクソ野郎がッ……!」
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