第1話 燃え揺らぐ心臓
世界が生まれたとき、我もまた“世界そのもの”として生まれた。
だが、その魂は四つに裂かれ、姿を消した。
我はそれぞれに、“原罪”を課した。
――これは、世界が神を裁くまでの、罪と罰の物語。
20XX年。
太陽は厚い雲に覆われ、街は重苦しい空気に沈んでいた。
――ドガァン。
轟音が遠くの街角を揺らす。
俺の目に雷光が焼き付く。
冷たい雨が頬を打ち、気分まで冷たく沈ませてくる。
「全く、最近の天気は荒れてんな…」
俺はため息をつく。黒野零――普通の高校生、のはずだった。
「こんな天気で学校とか、お偉いさんはどういう考えなんだ?」
隣から幼馴染の傀儡戒がぼやく。
「それな。部活やらねぇなら行かなくていいだろ」
雷鳴が轟いているのに、普通なら休みのはずだ。
「おい、零、危ないッ!」
――ガシャン!
身体が吹っ飛んだ。
「痛っ……!」
「大丈夫か?油断するなよ」
道路の向こうから猛スピードのトラックが迫ってきた。戒が俺をかばって押しのけてくれたのだ。
「助かった、ありがとな」
俺が服の泥を払いながら振り返ると、トラックのドアが荒々しく開いた。
「危ねえじゃねぇか!」
怒声が響くが、その声はどこか震えていた。
人間のそれじゃない、怯えを孕んだ何かが潜んでいた。
「たくっ」
男は吐き捨て、トラックへ戻った。
「やばい奴じゃなくてよかったな」
戒は安堵の息をつくが、俺はあの声の裏に違和感を感じていた。
【バカが……何やってんだよ……クソがっ……!】
「俺はこっちだから」
「……あッ、じゃあな!」
家に着く頃には、胸の中でざわつく声を無理に押し込んだ。
「ただいま」
いつもなら、母さんや妹の声が返ってくるはずなのに、今は静まり返っていた。
嫌な予感を胸に、リビングの扉に手をかける。
冷たい空気が雨で濡れた服を凍らせた。
視界に飛び込んできたのは、血にまみれた母と妹、そして愛犬の姿。
鼻を突く生臭い匂い。
胸が破裂今にも破裂しそう。
拳が痛い、強く握り過ぎて血が吹き出す。
涙は流れなかった。
目の前の景色がまるで夢でも見てるかのようにボヤける。
心臓の奥が、燃え滾っていた。
――その時、俺の中で何かが叫んだ。
『良好だ。貴様の怒り、しかと受け取った』
脳裏を震わす低く響く声。
「誰だ……?」
問いかけると、答えが返ってきた。
「我が名は全開。貴様の怒りが我を呼び覚ました」
体内で何かが弾けた。
俺の運命は、血の海の上で動き出したのだった。
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