表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

第八話 蒼月高校の番長

第八話 蒼月高校の番長


彼はクラス全員の前で、私を教室から呼び出した。

二人きりでの話し合い。

「何、何の用……?」緊張して尋ねる。

校舎の隅に連れて行かれ、彼は私をじっと見下ろした。


「傷は?」冷たい口調。

「あ、今日包帯取れたから……」

しばらく見つめられた後、

「そうか」それだけ言って沈黙。

私はきょとんとしていた。


(それだけ……?)内心で焦る。

呼び出したのはこのため?

自問自答していると、彼が再び口を開いた。


「二度と現場に出るな」

厳しい口調になった。

「助けるのに自分が傷つくとか……」

呆れたように言い放つ。

「死んだらどうする!」


「それに何日も学校休んで……」

独り言のように教室へ歩き出す。

「早く時計を手放せ」

振り返らずに去っていった。


一人取り残される。

「な、何だよ!」声を荒げる。

「あいつ、私が怪我したのに!」

確かに自分から飛び出したのは事実だけど……

「相手はナイフだぞ!」

誰もがあんなに強くないんだ。


「くそ……」拳を握りしめる。

「あんな事になるなんて……」


時計はいつも最低限の情報しか教えてくれない。

(今回は対象者の特徴さえわからなかった)

人数が多すぎたからか。

(少しでも役に立ちたいと思って行ったのに)

もっと情報があれば、準備できたのに。


「私はただ……」

「英雄になれると証明したかった」

拳に力を入れると、傷が疼いた。

「役立たずでも、誰かの力になりたかった」

でも現実は違う。弱い者は英雄になれない。


「そんなの、とっくにわかってた」


カフェで一人の少女がケーキを食べながら、白い懐中時計を手にしていた。

『こんにちは、鬼塚申野ちゃん~』

時計が話し出す。

「え!?時計が喋る!?」

驚きながらも、フォークでケーキを口に運ぶ。

『運命を信じる?』

鬼塚「申」野、申の刻(15:00-17:00)。


---

「高校生ナイフ事件」から一週間後。

「行ってきます」

カバンを背負い登校する。

薄田辰也、喋る懐中時計を拾った元・高校生。

(普通の生活に戻れた……)

(時計は引き出しにしまったまま)


なぜ捨てなかったか――それはまだ言えない。

あの日以来、一度も開いていない。

ただの学生生活に戻りたかった。

(もう時計とは関わりたくない!)


---

「辰也君、久しぶり~」

いつもの三人組が朝から待ち構えていた。

(本当に元通りだ……)

「蒼月高校の上級生と殴り合ったんだって?」

「めっちゃ倒したらしいよ~」


(何の話だ!?)

「違、違います……」震える声。

行く手を塞がれる。

「謙遜するなよ~」肩を掴まれる。

「蒼月の番長がお前に会いたがってるんだ~」


(は、はあ!?)頭が真っ白に。

「間違えてると思います……」震える声。

「いやいや、番長がそう言ってた」

「『ナイフを素手で防いだ高校生』――」

三人の視線が私の傷に集まる。


慌てて手を隠す。

「今日は授業ないよね、辰也君~」

肩を叩かれる。

「あ、あります……」助けを求める目線も、誰も振り向かない。


「番長の誘いを断る気?」

「残念~『連れて来い』って頼まれたんだよ」

「選べるよ:殴られて連れて行かれるか、素直についてくるか」


選択肢などない。

学校とは逆方向に押しやられる。


「刮目したよ、辰也君~」

からかいながら進む。

「蒼月の連中に手を出すなんてすげえ」

「この辺で一番恐れられてる暴走族だぞ~」

押し進められるまま。

(私は何もしてない!ただ……見てただけ……)

なぜこうなった?


---

見知らぬ場所に連れて行かれた。

ひっそりとした建物の中。


「連れてきたか?」

がっしりとした体躯の高校生が座っていた。

周囲には蒼月高校の生徒が睨みを利かせる。

(人多すぎ……)

(授業時間なのに、全員サボってる……)

私もだけど、強制的だが。


「はい、九頭番長!」

ぺこぺこと頭を下げる。

「約束通りです~」


番長がゆっくり近づいてくる。

(逃げるべき……だがチャンスは?)

(こんな人数で……無理だ)

(誰か助けて……)


「名前は?」低い声。

「薄、薄田辰也です……」

「ふ~ん」


次の瞬間、腹部に強烈なパンチ。

「うぐっ……!」のたうち回る。

髪を掴まれ引き上げられる。

「辰也よ、俺たちは探してる――あの金髪を」

「今日の5時、一人で連れて来い」


顔を近づけられ、

「できるか?」

「できねえなら、死ね」

三人組を睨みつける。

「連れて来れなかったら、お前らもな」


「は、はい!必ず連れて来させます!」

「ご安心ください!」

震え上がる三人。

私はまだ地面で、腹を押さえていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ