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第七話 高校生ナイフ事件

第七話 高校生ナイフ事件


「す……すげえ……」私は膝をつき、息を切らしながら見守っていた。

彼は一撃で相手を気絶させた。

「ナイフを持ってる相手なのに……」

こんなに圧倒できるなんて……


「おいおい、何してやがる?」

突然、後ろから同じ制服を着た集団が現れ、

その中には一人の女子生徒もいた。

「困ったことになったみたいだな?」彼らは女子を取り囲んだ。

「動くな」リーダー格が言い、仲間を次々と倒す金髪の高校生を見た。


「他校の女子まで連れてきたのか……」彼は動きを止めた。

女子の制服を見つめる。

「まず確認するが、お前は仲間じゃないだろうな」

手首を鳴らし、鋭い視線を向ける。

「俺は女子にも手を出すぞ」


不良に捕まっているのに、その女子の目には微塵も恐怖が見えない。

私は緊張しながら状況を観察していた。

(この格好……明らかに不良少女だ……)

(仲間の可能性もあるな……)


その時、地面から起き上がった不良たちが彼に襲いかかる。

(赤坂高校の制服だ……)

パンチをかわしながら考えた。

近くの学校ではない――

(こんなところにいるのは不自然だ)


「おい、動くなって言ってんだろ!」

リーダーが女子の肩を掴む。

「彼女の安全は気にしないの?」女子が挑発する。


「傷ついたら、人を守れなくなる」

彼は構えた。

「自己犠牲はみんなを死に追いやるだけだ」

決然とした眼差し。


「ふん……」女子の口元が緩む。

「ははは!」

突然笑い出した。

「面白い人ね」


「てめえ、立場わかってんのか!」

隣の不良が怒鳴る。


すると、女子は素早く――背負い投げ!

ポケットから白い長い鎖が飛び出した。

「あれは……」私は驚いて見つめた。


「もう……新しくできたスイーツ屋に連れてってくれるって言うからついてきたのに」

冷たく言い、服のほこりを払う。

「不良のくせに、道聞かれたら案内するのが筋でしょ」

「でなきゃ路地で何してるの?」

ため息をついた。


私は呆然としていた。

「この野郎!」

別の不良が襲いかかる。

「ほら!」また背負い投げ。


「お前、仲間じゃないなら早く逃げろ!」彼は不良を倒しながら叫ぶ。

「一人で大丈夫?」女子が聞く。

「手伝おうか?」

「見ての通り、空手やってるの」得意げに言う。


その時、一人の不良がナイフを抜き、女子に襲いかかった!

私は反射的に動いた――

駆け寄り、彼女の前に立ちはだかる。


---

警察が到着した。

「辰也!」「辰也君、大丈夫?」逃げたクラスメイトが駆け寄る。

「平気だ」肩を回しながら答える。

「すまない、今回は危険に気づけなかった」

汗だくの額を払う。


クラスメイトはその姿に魅了されていた。

「い、いいよ、辰也君が守ってくれた!」

「辰也君は私たちのヒーロー!」

感動の声が上がる。

「ヒーローか……」小さく繰り返す。


「負傷者1名、気絶15名」

警察が無線で報告する。


「辰也すごい!ナイフを持ってるのに制圧したんだよ!」

「いや、あの人は……」言いかけてやめる。

「しかも一度に大勢を倒した!」

賛嘆の声が上がる。

(一人で倒したわけじゃないのに……)

内心でため息をつく。


あの女子は、警察が来る前にいなくなっていた。

(どこへ行った……)考え込む。

(ポケットから出た白い鎖、普通の装飾品じゃない……)


---

翌朝、早くから。

「痛い……」ベッドで天井を見つめる。

包帯を巻いた手のひらを見上げる。

「ナイフを持った不良の前に飛び出して……」

正気じゃなかった。


唯一の負傷者は私だけ。

「考えずに飛び込んでしまった」

こんな結果になるとは。


「あの二人は無傷だったみたい……」

私だけが惨めな姿に。

「私が飛び出さなくても、あの子は避けられたかも……」

余計なことしたのか?


「痛い……」ベッドサイドの懐中時計を取る。

「8時45分……今日は休むか……」呟く。

(あ、違う……)

「おい、未来人!聞こえてるか?」

時計に呼びかける。


しかし反応はない。

「ちっ……」

ベッドに倒れ込み、時計を落とす。

「前にあんなに喋ってたくせに……」

任務を伝えるとすぐ切る。

「もしかして録音だったのか……」

いや、考えすぎだろう。


「ただ……」

今回の事件、本当に私が必要だった?

(ただ警察を呼んだだけ……)

何もしてないわけじゃない。


彼の行動を思い出す――

クラスメイトを助けに行く時、彼は警察を呼んでいなかった。

(「警察を呼んだ」は威嚇だったのか)

「でも、私を止める前に通報してた可能性もある」


天井を見つめたまま。

「私……役に立てたのかな?」


---

数日後、やっと包帯が外れた。

「先生の話では、まだ激しい動きはダメよ」母が注意する。

「わかってる」カバンを背負う。

「行ってきます」


学校でいつもの三人組を見つけ、隠れる。

「くそ……怪我してる今は会いたくない……」

柱の陰から見ている。


「辰也君、何日も学校来てないね~」

私のことを話している。

「転校したんじゃない?」

「蒼月高校の乱闘事件に巻き込まれたらしいよ!」

「しかも蒼月の上級生全員が倒されたんだって~」

「あいつがやったわけないだろ~」

「殴られた方だろうな!」


「ただボーッとしてただけかもよ!」

「何日も休んでるってことは、重症だな~」

笑いながら去っていく。


私はこっそり教室へ向かう。


---

教室はいつもと変わらない。

一人で席に着き、授業が始まる。

まるで私の不在に誰も気づかなかったようだ。


チャイムが鳴り、教室を出ようとする。

「失礼します」

入り口に金髪の生徒が立っている。

「辰也君いますか?」と聞く。


「辰也君だ!」

「また誰か探してる!」

「金髪かっこいいよね!」

「王子様みたい~」

女子たちの声。


「え……」呆然と立ち尽くす。

「来てたか」

私を見て、淡々と言う。

「話がある、ちょっと来い」

相変わらずの冷たい口調。


「辰也、今日も用事?」クラスメイトが声をかける。

「あ、この人か」

「無事みたいだね」

「朝飯買いに行こうよ、辰也~」


「いや、話がある。先に行ってて」

「わかった、何か買ってくる?」

「ああ、後で金渡すから――」言い終わらないうちに。

「タマゴサンド2つだろ?わかってるよ、またな~」

笑いながら去っていく。


私はまだ固まっている。

彼は振り返り、一言。

「こっちへ来い」そう言って歩き出す。


「あ、待って……」

我に返り、慌てて追いかけた。

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