第六話 十二支計画
第六話 十二支計画
これは十二の懐中時計と十二人の英雄によって構成される計画――
『十二支』だ。
どの時代にも、十二人の英雄が世界中に散らばっている。
私たち未来人は、これらの懐中時計を通じて迫りくる災厄を伝え、彼らに阻止させることで、
少しずつ――全人類滅亡をもたらす「大事件」の発生を遅らせている。
「全人類滅亡の事件......?」自称未来人の声を聞き、信じられない思いで尋ねた。
「いつ?阻止できるの?この任務をこなせば未来は変わるの?」
<辰也君、やる気満々だね~>
<でも、阻止はできないよ~>
「え......」私は呆然とした。
<私たちにできるのは、あの事件の発生を『遅らせる』ことだけだ>
<他の疑問があれば、もう一人の『時計の持ち主』に聞いてもいいよ~それでは、またね。>
時計は声を止めた。
「また勝手に切った!」もっと聞きたいことがあったのに。
私は手の中の懐中時計を見つめた。
しかし、なぜか口元が緩んでいた。
(でも、やっと何かできることが!)嬉しくなった。
(もちろん災害が起きてほしいわけじゃない......でも、でも......)
時計の蓋を閉める。
「何かできるって感じ......」
自分が必要とされているような気がした。
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場所は商店街の路地裏、時間は10月13日午後5時55分前。
(それに、今回はもう一人と一緒に行動する......)
私は顔を上げ、目の前の金髪の高校生を見た。
「てめえ、なぜここにいる?」
彼は私を壁に押し付け、鋭い目で睨みつけた。
「任務で......」
「任務?」彼は怪訝そうに眉をひそめた。
手が伸びてくるのに、私は思わず目を閉じた。
「まさか......」
ゆっくり目を開けると、彼は呆れたように額に手を当てていた――私の懐中時計を握りしめながら。
「まだ持ってやがる」
ぽいと時計を返してきた。
(まさか、今回の『もう一人』って、この人!?)心の中で叫んだ。
同じ学校だし、商店街も近いから、完全に予想外ではなかったけど。
「ひ、久しぶりですね......」緊張して口を開く。
「今回の任務、二人でやるみたいで......」
彼の鋭い視線が刺さる。
「お前......今回の任務の内容を知ってるのか?俺にはいつも場所と時間しか教えてくれない......」
焦って尋ねた。
(もしかして、人によって任務内容が違う?)
「だから30分も前からここをうろついてたのか?」不機嫌そうに言う。
「だ、だって何が起こるかわからないから......早めに来ただけ......」言い訳する。
「帰れ」冷たい一言。
「俺一人で十分だ」
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(何その態度!)
なぜか腹が立って、彼を見つめた。
「でも、未来人が二人必要だって......!」雰囲気を和らげようとする。
「前提として、お前が『当事者』にならない場合だ」冷たく言い放つ。
「それにお前、さっきから目立つように動き回ってたじゃないか」
ここは不良のたまり場なんだ。
「これ以上面倒ごとを増やすな」そう言って、去ろうとする。
途中でポケットが振動した。
(彼の時計は振動する......新しい任務か?)
でも、彼の任務って頻繁だな......私は2ヶ月も空いたのに。
緊張して見つめる。
しかし、ポケットから出てきたのは――携帯電話だった。
「もしもし?」電話に出る。
「辰也君、助けて!!」女子の悲鳴が聞こえる。
「今どこだ!」必死に尋ねる。
「商店街の路地裏に連れてこられた......」
「他校の男子が、クラスの女子にナンパして、断ったら......ナイフで脅されて!」
電話の向こうで別の声がした。
「おい、電話してんのか?」
携帯を奪われる音。
「こんなこと、大人に言いつけるなよ」
「ちょっと遊ぶだけだろ~」
女子の肩に手を回す声。
「触らないで!」女子の怒声。
ナイフを構える音。
「おいおい、顔に傷つけたくないだろ?」冷やかす声。
「うう......辰也君、助けて......」
――プツッ――
通信が切れた。
彼は携帯を握った手をだらりと下げ、一瞬にして駆け出した。
「待、待って!どこに行くの!」慌てて追いかける。
どんどん遠ざかる背中。
「速い......」とても追いつけない。
走りながら懐中時計で時刻を確認し、さらにスピードを上げる。
「はあ、はあ......」息を切らしながら必死についていく。
(そうだ、時間......)私も時計を取り出す。
「今は......5時50分」
未来人が言った時間は5時55分――あと5分しかない!
(でも具体的な場所も、誰がどこにいるかもわからない!)
それに、彼があんなに焦ったのは――私と話してたせいで時間をロスしたから?
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「見、見えた!」前方に――
もう息も絶え絶え、足が動かなくなりそうだった。
他校の上級生らしき不良が、私たちの学校の生徒を取り囲んでいる。
「辰也君!」「辰也!」クラスメイトが彼を見つけ、叫ぶ。
不良たちが近寄ってくる。
「お前が噂のやつか?」
「金髪のくせに、何ができるんだ?」
「連中を解放しろ」冷たい声。
「は?何言ってんだ?」ナイフを振り回す。
「もう警察には通報済みだ。面倒ごとを避けたければな」
鋭い視線を向ける。
「警察がこんな場所すぐに見つかるかよ?車も入れねえ」
「その前にいろいろできちゃうぜ」
「未成年のうちにやっておくべきことってあるんだよ~」
「捕まってもどうせ未成年だしな~」
彼は上着を脱いだ。
「合図で逃げろ」クラスメイトに指示する。
「おいおい、映画の真似事かよ?」
上着をナイフに絡め、一瞬で奪い取る。
そして、蹴りを腹部に入れ、不良は苦悶の表情で膝をついた。
「走れ!」叫ぶ声。
クラスメイトが四方八方に逃げ出す。
「クソ、逃がすな!」不良の怒号。
しかし次の瞬間、背後から腕が首を締め上げた。
もがく不良の目が虚ろになり、5秒も経たずに崩れ落ちる。
「お前らの相手は俺だ」巳藤が拳を握りしめる。
「一人でこいつら全部に勝てると思ってんのか?」
「俺は喧嘩はしない」冷たく言い放つ。
拳が閃き、また数人が地面に倒れる。
「制圧するだけだ」