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英雄になれない僕/弱い英雄  作者: 若君
第一章 毎週水曜日更新。
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第二十一話 それぞれの家族

第二十一話 それぞれの家族


夜更けの人影まばらな道で、金髪の高校生が一人の少女を背負い、重い足取りで進んでいた。

街灯の鈍い光が二人の影を長く引き伸ばす。

「悪いな、送ってもらって」茶髪の少女が背中で気まずそうに呟く。

「ってか、臭いぞ」鼻をひくつかせ、遠慮なく嫌悪を示す。

「汗臭すぎ!」


「文句あるなら歩け……」金髪の高校生は疲れ切ったため息をつく。


「本当に病院に行かなくていいのか?」限界近い体を引きずりながら、再度尋ねる。

「いらない」少女はきっぱり拒否し、首に回した腕をきつくする。

「とりあえず手当ては済んだし」腿の痛みは依然鋭く耐えがたいが、病院行きを頑なに拒んだ。


「結局あいつ……」混乱の終わりを思い出し、声をひそめる。金髪の高校生だけに聞こえるように。

「私を救急隊に渡したら、さっさと行っちゃったし……」かすかな寂しさが滲む。

「あの黒髪の……名前なんて言ってたっけ?」前を歩く金髪の高校生が聞く。

「知らない」ふてくされた返事。

「冷血なやつめ……」不機嫌な結論。


「でも統率力は本当にすごかったよ」金髪の高校生は心から感嘆する。

(あの混乱の中で、あれだけ迅速に周囲を組織化できるとは……)自省する。

今回の事件への準備不足も痛感した。学園祭の篝火がこれほどの惨事を招くとは予想外だった。

「どうも……一人で行動する癖を直さないと……」思案しながら呟く。


「おい!お前」背中の少女が激しく反応し、不満げに抗議する。

「あの時あいつはお前を見捨てようとしたんだぞ!」(黒髪の少女が煙火運搬を阻止した件)

「話は聞いた」金髪の高校生は平静な声。

「炎の広がりや爆発の正確なタイミングが読めない状況で、不用意に人を近づけるのはリスクが高すぎる」

(それに、もし花火がその場で爆発したら、衝撃波と破片の被害範囲はもっと広がり、犠牲者は増えただろう。)

「彼女はその場で最も合理的な判断を下したと思う」率直な考えを述べ、黒髪の少女の決断を認める。


「私が一人で花火を運ぼうとした時」火元の危険を思い返す。

「特大サイズの箱があって、一人の力ではどうにもならなかった」

炎がすでに積み上げ場所に迫り、危機的状況だった。

(もし助けが来なければ、生き延びるため逃げるしかなかった。)

「幸い、すぐに人手が集まってくれた」(彼が人を呼んでくれたおかげだ。)

「何とか最後の花火も移動できた」最悪の連鎖爆発は免れた。


「今回の事件で、一人の力の限りを痛感した」苦い教訓を総括する。

背中の少女はこの言葉に、強い不満を顔に浮かべる。

「話が通じない奴だ!」腹立たしげに叫び、彼の頭を小突く。

「おい、やめろ!もう限界だ……」金髪の高校生はふらつき、バランスを崩しかける。


---

「本当に家まで送らなくていいのか?」金髪の高校生は慎重に少女を降ろし、アパートの前で立たせる。

薄暗がりの中、彼の金髪はくすんで見える。

「いいの。その格好で」少女はため息混じりに目立つ金髪を一瞥する。

「彼女の機嫌をまた損ねそうだ」(家の中の母親を指す)

「それにマジで臭すぎ!」躊躇いなく嫌悪を表し、匂いの移った自分の服に顔をしかめる。

「私まで汗臭くなっちゃった……」露骨に嫌そう。


「わかった、中には入らないよ……」金髪の高校生は気まずそうに頭を掻く。

(確かに、女子高生が深夜に男に送られてくるのは誤解を招きやすい。)

「そうだ」何か思い出したように携帯を取り出す。

「連絡先交換しないか?」黒髪のお嬢様に断られたばかりだが、改めて尋ねる。


(彼と交換すべきか? 以前は警戒してたけど……)

今回の事件では確かに協力してくれた。ただ個人的にはこれ以上の関与は望まないが。

(彼女も今回傷を負った……)服の匂いを気にする少女を見て、一抹の後悔がよぎる。

(もっと迅速な危機対応を学ばないと……)あらゆる緊急事態に対処できるようにならなければ。


「まあ……いいよ……」少女は少し躊躇い、結局携帯を取り出した。


---

金髪の高校生が去り、少女が一人でドアを開ける。

「いないのか……」室内は真っ暗で、明かりもついていない。

小声で呟き、そっとドアを閉める。

「帰った?」低い声が突然リビングの暗がりから響く。


女の影がゆっくりと床から立ち上がる。

「どうしてこんなに遅くまで……」疲れた平板な声で繰り返す。

「また何かやらかしたの?」振り向くと、窓からの微かな光に浮かぶ絶望に満ちた目が少女をまっすぐ見つめる。


少女は彼女を見て、一瞬で表情が冷える。昼間抑えていた不快感が再び湧き上がる。

腿の傷がちょうど鋭く疼き、神経を刺激する。

唇を堅く結び、女から目を逸らし、痛む足を引きずりながら黙って室内へ入り、重いドアを閉めて外界と絶望の視線を遮断する。


---

「昨日の学園祭、楽しかった、辰也?」

「うん」私(薄田辰也)は朝食を食べながら短く答える。

私はごく普通の男子高校生、薄田辰也だ。

「昨日の花垣高校で発生した火災について、イベント責任者は……」テレビが昨日の事件を報じている。


「火事だったんだ……」母が皿を運びながら、ニュースに目を奪われる。

「あなたが行った学園祭、この学校じゃない?」私を見る目にはっきりとした疑念が浮かぶ。

「また怪我してないの? なんで帰って来て言わないの?」早口の質問が続く。

「どうしていつもこんな危ないところに行くの?」躊躇いなく非難する。


私は食器を置き、顔を上げる。平静でよそよそしい微笑みを浮かべる。

「ニュースでも言ってる通り、事故だよ」自分とは無関係のことを話すような淡々とした声。

「事故が起きた時、とっくに学校から出てた」

「そうなの……」母は半信半疑でテレビに目を戻すが、眉間の曇りは消えない。


---

学校に着き、教室に入る前に、よく知った三人組のチンピラに人気のない角で詰め寄られる。

「おい、辰也!お前のせいで俺たちどれだけ迷惑被ったと思ってるんだ!」リーダー格が怒鳴る。

「お前が連れてくるって約束したんだろ!」

(金髪の高校生を指定場所へ誘導する約束)


「その結果どうだ? 今じゃ蒼月高校の親分にまでマークされる羽目だ!」

「どうしてくれるんだ!」三人が取り囲み、口々に罵声を浴びせる。


辰也は黙ってうつむいたまま。貼り薬の下の目は霜が降りたように冷たい。

「金は持ってない」ようやく口を開くが、温度のない声。

「用がなければ先に行く」人垣を押しのけようとする。

「おい!その態度はなんだ!」一人が突然肩を掴み、ぐらりとよろめかせる。

「はは、相手にぶん殴られて頭おかしくなったか?」他の二人が甲高い嘲笑。

辰也はゆっくりと顔を上げ、肩を掴む手に冷たい視線を落とし、動こうとした瞬間──


「何してる?」聞き覚えのある声が路地口で響く。

金髪の高校生がいつしかそこに立っていた。

三人は彼を見るなり、顔から血の気が引き、威勢が消えうせる。

「あ、あっ、巳藤さんでございますか……」たちまち媚びへつらう態度に変わり、吃りながら挨拶。

「お前たちに、二度と彼に近づくなと言ったはずだ」金髪の高校生──巳藤の目が鋭く光る。


「今、今度は保証しかねますよ……」巳藤の声は冷たく、無形の圧力を放つ。

「足を一本折られる前に、間に合うかどうか」


「そ、そんな!おかげさまで私たちの足は無事で……」恐怖にまともに言葉も出ない。

「で、ですから!蒼月高校の連中が現れたらすぐにご連絡します!」もう一人が必死に約束する。

「というか……もう完全にマークされてまして、ははは……」三人目は乾いた笑いで恐怖をごまかそうとするが、ひどく気まずい。


(今は彼の庇護が必要だ……)

(俺たち三人じゃ、蒼月高校のあの凶暴な連中には太刀打ちできねえ……)

(だが好きにはなれねえな)この憎たらしいイケメンめ!

三人は苦い笑みを浮かべ、内心は矛盾と恐怖でいっぱいだ。


チンピラたちが慌てて逃げ去った後、巳藤は黙り込む辰也に近づく。

「昨日は先に帰っちゃったね……」冷たさが一瞬で消え、声は柔らかく、かすかに緊張さえ滲ませる。

「本当に助かった」心から感謝する。

「ちゃんとお礼も言えてなかった。君が現れて、人を呼んでくれなかったら……」一人で感謝の言葉を並べる。

辰也はただ静かに聞き、巳藤の腰から微かに覗く銀の鎖に視線を落とす。何かを考えているようだ。


「行くよ」辰也が肩のバッグ紐を引き、低く言い残して巳藤の傍らを通り過ぎようとする。

巳藤は思わず振り向き、呼び止めようとする。


「そうだ」辰也が足を止め、振り向く。

朝日の中、頬や腕の貼り薬がくっきり見える。

「次があるなら」相変わらず平坦だが、わずかに約束を含ませた声。

「時間通りに行く」


「ただ……」一呼吸置いて付け加える。

「何かできるとは期待するな」

そう言い残し、再び歩き出し、校舎の角に消える。


巳藤一人が取り残される。微風が金色の前髪を揺らし、陽光が輝く髪に躍り、複雑な感情を浮かべた目を照らす。

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