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英雄になれない僕/弱い英雄  作者: 若君
第一章 毎週水曜日更新。
17/31

第十七話 突如の警告

第十七話 突如の警告


懐中時計の所持者三名と、整った執事服を着た一人の女性が、高校の校門の外に静かに佇んでいた。

暮れゆく空の下、学園祭の喧騒は薄いベールのように、迫り来る恐怖の影を覆い隠しているようだった。彼らは心の底で理解していた――人の命を奪いかねない災厄が、この賑わう学校に静かに近づいていることを。


---

「推測では……ガス爆発のような災害だろう」

金髪の高校生が眉をひそめ、他の三人に向かって判断を述べた。声にはかすかな緊張が滲んでいた。

「この時間は夕食時で、出店に人が集中している」校門外の賑わう屋台街を見渡す。

「爆発が起これば、取り返しのつかないことになる」

(それにしても、なぜ四人が必要なのか……)心の奥の疑問は消えなかった。


「おそらく……複数箇所で同時発生する災害だ」人数の多さに合理性を見出そうと、言葉を続ける。

そうでなければ、これほどの人手は必要ないはずだ。

しかしこの推論自体も矛盾に満ち、解けない絡まった糸のようだった。

「二手に分かれよう」即断した。

「危険が潜む場所は、外の屋台街と、校内の調理実習教室だ」素早く任務を割り振る。

「二人一組で、屋内組と屋外組に分かれる」


---

屋台街は明かりに照らされ、食べ物の香りと人声が混ざり合い、祭りの陽気が空気に満ちていた。

茶髪の少女と黒髪の少女が並んで歩いている。

「普通の学校の学園祭って、こんな感じなんだ~」白いドレス姿の黒髪少女は、この雰囲気に明らかにそぐわなかった。

目には新奇さと距離感が浮かび、周囲の屋台と人混みを静かに観察する。


「なんで私がこいつと組まなきゃいけないんだよ」茶髪の少女がぶつくさ呟く。不満と困惑がにじむ声だ。

「確かに私が屋台を見たいって言ったけど……」先ほどの組分けを思い返し、諦めの色が見える。

横の気品ある黒髪少女を一瞥する。


「そしたらこいつも『屋台を見たい』って言い出して……」結果的に二人が自然と組むことになった。

金髪の高校生と厳格な執事は現在、校内の料理の香りがする教室を回っている。

「はあ……」茶髪の少女が深いため息をつき、習慣的にポケットに手を伸ばす。

「あ、金ないんだった」いくつもの空っぽの財布をぞんざいに取り出す様子は、小銭を探すようだった。


「チンピラから巻き上げよう」平然と言い放つ。日常茶飯事のように。目にいつもの悪戯っぽさが光る。

黒髪の少女が振り向き、澄んだ視線を彼女に向ける。

「その財布たち……どうしたの?」茶髪の少女の手首を優しく、しかし確実に掴む。穏やかながらも無視できない問いかけだ。

茶髪の少女の表情が一気に曇り、不快感を露わにする。


「関係ないでしょ」ぶっきらぼうに答えると、手を振り払う。

「それより早く私の財布返せよ」わがままを言うように付け加える。

「あなたのせいで金を入れる財布がないんだ」文句を言いながら、持ち帰った財布を片っ端から掌に広げる。

(いつの間にかこんなに……)色とりどりの戦利品を見て、一瞬目を丸くする。

(気に入ったのを新しい財布にしよう)楽しげに選び始める。

黒髪の少女はその様子を静かに見つめ、微かに眉を寄せる。澄んだ瞳には不賛成が書き込まれていた。


突然、明らかに粗暴な若者たちが道を塞いだ。

「おい、二人だけか~」リーダー格のチンピラが歯を見せ、黒髪の少女の全身を躊躇なく舐め回すように見る。軽薄な笑みを浮かべながら。

その清楚なお嬢様気質に引き寄せられたのか、無意識に手を伸ばし、黒髪の少女の肩に触れようとする。

「一緒に回らないか?」曖昧な誘いのこもった声。

黒髪の少女の表情は変わらない。ただ静かに近づくその手を見つめるだけ。瞳は穏やかで波立たない。


「おごってくれるなら」茶髪の少女が腕組みをしたまま、だらりと口を挟む。

「お腹空いてるんだ」厚かましく宣言する。

「ああ、もちろん構わねえよ」リーダーは快く承諾するが、視線は黒髪の少女から離れない。

「ちょ、兄貴!」傍らの子分が突然叫ぶ。何か恐ろしいことを思い出したように、震えながら茶髪の少女を指差す。

「こいつ!俺たちの財布を奪った張本人だ!」


「なんだと?」リーダーの表情が一変し、凶暴な目つきで茶髪の少女を睨みつける。先ほどの軽薄さは跡形もない。

「来る途中、財布をすられたんです!」子分が慌てて補足する。

「あ~あなたたちか~」茶髪の少女は悟ったように、冷たい笑みを浮かべる。

「家で金は用意してきた?」軽快に、からかうような調子で聞く。旧友に挨拶するかのようだ。


---

校舎の廊下で、金髪の高校生と厳格な執事が並んで歩く異様な組み合わせが、生徒たちの視線と囁きを集めていた。

「やはり、あなたの執事服が目立ちすぎる」金髪の高校生が声を潜め、呆れたように言う。

「失礼ながら」執事が少し体を傾け、平然としながらも反論する。

「あなたの輝くような金髪の方が目立っています」


「後ろに執事までついて……」周囲を見回す金髪の高校生。

「海外帰りのお坊ちゃまか何か……」かすかな噂話が聞こえてくる。


執事は彼について幾つもの調理中の教室を回り、生徒たちの驚いた視線にも職業的な冷静さを保っていた。

金髪の高校生は学園祭のパンフレットを手に急ぎ足で移動し、危険がありそうな教室に印をつけていく。

「さっき一通りチェックしたが……」賑やかな廊下を歩きながら、眉をひそめて独り言。

「ガス管に特別な問題は見当たらなかった……」


(推測が間違っていたのか?)不安が頭を離れない。

(これほどの犠牲者が出る状況とは……)ありとあらゆる可能性を脳内で検索する。

傍らで執事は彼の焦燥に満ちた横顔を静かに見つめる。


「失礼」執事が適切に口を開く。落ち着いた声だ。

「そろそろお嬢様の元に戻らねば」黒髪の少女に言及する時、微かに気遣いが滲む。

「そうか……」金髪の高校生が振り向き、携帯で時刻を確認する。

「七時ちょうどに重要なディナーの約束がございます」時間の緊迫さを説明する執事。


「あの子……本物のお嬢様なのか……」金髪の高校生が思わず呟く。信じがたいという調子。

(見た目と雰囲気からは、確かに強く感じるが……)黒髪の少女のたなびく髪と軽やかな白いドレスが脳裏に浮かぶ。

携帯をしまい、複雑な感情が湧き上がる。

(そんな人間が……懐中時計の所持者だなんて……)世の中は奇妙なものだ。


(あいつもそうだった……)臆病で弱々しい顔が不意に脳裏に浮かぶ。

(来るはずがない)すぐに自分を戒め、あってはならない期待を押し殺す。

(来たとしても邪魔なだけだ)窓の外を見る。校庭には学園祭のクライマックスを迎えようとする人だかりができていた。

「外で合流しよう……」雑念を振り払おうと提案する。


その時、懐中時計が激しく振動した!

胸が騒ぎ、急いで取り出すと、パチンと蓋を開く。

<花垣高校学園祭最終日、午後6時30分頃、大規模爆発により多数の死傷者発生……>

懐中時計特有の、感情のない短い音声が迫り来る惨事を告げる。

「爆発……!」金髪の高校生の瞳が縮む。衝撃で言葉を繰り返す。執事も即座に警戒し、鋭い視線を銀色に光る懐中時計に向ける。


---

一方、屋台街。

黒髪の少女も漆黒の懐中時計を取り出し、冷たい予告に耳を傾けていた。

その傍らで、茶髪の少女が鮮やかな背負い投げを決め、最後のチンピラを地面に叩きつけるところだった。

<篝火台の崩壊、その傍に積まれた未使用の花火に引火……>災厄の源を明かす懐中時計の声。

黒髪の少女は伏し目がちに、懐中時計の明確な針を見つめる。


「6時25分か……」静かな声に、時間の迫りを感じさせる緊張があるが、瞳は微動だにしない。

(残り5分……どう阻止する……)この重要な情報を即座に処理し、振り向いて「戦い」を終えたもう一人を見る。


茶髪の少女はすでにしゃがみ込み、呻くチンピラたちのポケットから容赦なく財布を漁り始めていた。

「おい、持ち金少なすぎだろ」一人の財布から札束を抜き取り、不満そうに舌打ちする。

「なんだよ……あ、あれは俺のへそくりだぞ!」掠奪されたチンピラが痛みに耐えながら抗議。

「へそくりか……」茶髪の少女の声はさらに嫌味っぽくなり、札を抜き取る手は止まらない。


黒髪の少女が手を伸ばし、忙しく動く彼女の手首を優しく、しかし確実に掴んだ。

「行きましょう」疑いようのない口調で、まだ「戦利品」収集中の茶髪の少女を引きずり上げる。

「待てよ!まだ全部掠め取ってないんだ!」茶髪の少女が抗議するが、そのまま速足で連れ去られていく。

残されたチンピラたちは見物人の好奇と軽蔑の視線の中、痛みに呻くしかなかった。

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