表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれない僕/弱い英雄  作者: 若君
第一章 毎週水曜日更新。
10/20

第十話 ヒーロー登場

第十話 ヒーロー登場


「番、番長!あいつらです!」

「俺たちを倒した二人組!」

手下が入口の二人を指さす。


「おう、あいつらか」

拳を鳴らしながら低い声で。

「ぶっ殺せ!」


「お前、名前何だっけ?」

少女に振り返る。

「鬼塚申野、三回目よ!」拳を握りしめ、イラついた口調。

「やっと――ケンカできるわ!」楽しげに笑う。


「中学生は帰れ」

上着を脱ぎながら手袋をはめる。

「中学生じゃないわ!」

背負い投げで一人を吹っ飛ばす。


「じゃあ小学生?」

軽くパンチでまた一人。

「違うわよ!」

「若作りも程々に」口元が緩む。

「若作りじゃない!高校生よ!女子高生!」


「ん……中3の時留年しそうになったけど……」出席日数不足。

「でもちゃんと進級したわ!」自慢げ。

「ただ背は伸びなかった」冷やかす。

「うるさい!」

コンビネーションで次々と敵を倒す。


「まだ成長期なの!」

「高校生で成長期は終わってる」

「え!?マジで!?」


「あいつら……」

地面で弱々しく見上げる。

(なんで……あいつらが……)

金髪の腰の銀時計、少女のポケットから覗く白い鎖。

(なるほど……いや、わかってたはずだ)

(本当の二人組って、こういうことか……)


「ねえ、あんたの同級生じゃない?」

少女が気づく。

「何してるの?」

金髪がため息。

「同級生じゃない」

せいぜい同校。


「助けに来たんじゃないの?」

「いや、あの三人を助けに」

指さす先には倒れた三人組。

「今回は場所がわからず、人を追跡して来た」

高校生三人組の範囲が広く、時間がかかった。


「その変な時計の話?」

ポケットから白い鎖の時計を取り出す。

(それとこの偽火洞動かんと消えん……)怒りを抑える。

「お前も聞いてただろ……」

時計が話してた時、一緒に聞いてたはず。

「聞いてない」(聞けよ!)


時計をぶら下げる。

「変なおばあさんがケーキ食べてる時に押し付けた」

「もう一回説明して、この時計何なの?」

「三回目だぞ……」呆れた声。

「いいじゃない、名前も三回聞かれたし」

「名前聞く度に時計の話リセットされるんだよ……」

また一から説明。


「私の時計は新しいスイーツ店しか教えてくれない」

「なのに中に未来人がいるって」

「向こうに未来人がいるって……」

「でも実際行くと変な事件に巻き込まれるの」

「人気のない店ばっか教えるからだろ」

平然と言う。


「二人にも勝てねえのか?」

低い声に場が静まる。

「ん?」少女は退屈そうに声の主を見る。

「番長が出てきた」金髪は手袋を締める。


「とにかく警察は呼んだ、来るまで持ちこたえろ」拳を構える。

「あいつは俺が」

鋭い眼差し。


「そう言いながら……楽しそうじゃん」

少女が呆れたように。

(前回より手袋とか凝ってる。)

「じゃああんたはその名もなき三人組を守って」

番長に歩み寄る。

「怪我しないようにね」


「同級生は?」

「ついでに」

「だから……同級生じゃない」

「同校だ!」

突撃する。


---

拳が交錯、素早い回避。

「金髪……拳法かかるな」

番長が笑う。

「本気出そうかな」


金髪はきらめく髪をかき上げる。

「ふ――」呼吸を整える。

「拳法じゃない、殺せる――格闘技だ」

米海兵隊退役軍人に学んだ。

(実戦用の殺人技術!)


---

「ねえねえ~」

少女が私の傍にしゃがむ。

「生きてる?」

必死に顔を上げる。


「起きてるなら早く服着なよ」

上着を投げつける。

入口を見る。

「警察が来るわ」

(面倒な質問はごめんだ……逃げよう。)


「そ、その……時計……」

苦しそうに口を開く。

「ん?これ?」

ポケットから白い時計を出す。


「時間を知りたいの?」不思議そう。

「違、違う……俺の時計……俺も時計持ってる……!」

痛みに耐え、不良の持つ金色の時計を指さす。

「あ~なるほど」

すぐに理解し、笑う。


「取り返してあげる」

拳を鳴らし、歩き出す。

(ついでに私もサヨナラね。)


---

金髪は番長を倒した。

警察が現場を包囲。


「ほら」

少女が戻り、金色の時計を渡す。

「次はちゃんと持ってな」

眠りにつく私を見る。


「寝た?」せめて服は着せた。

そっと時計を手に置き、立ち上がる。

(じゃ、私は帰るとするか。)


「またお前か……」

警察は慣れた様子で金髪を見る。

「木村巳藤、白石高校1年1組、出席番号23番」

すらすらと答え、手袋を外す。

「またこんなことに、事前連絡は?」

「今回は場所が不明で連絡できず」

冷静に答える。


「その『霊感体質』、今日は不調だったのか?」

警察が笑う。

「まあ、現場に来ないと霊感は働かない」

慣れた口調。


「その体質、警察官に向いてるぞ」

「考えておきます」

手袋をポケットにしまう。


「署で事情聴取、パトカーで送る」

肩を組まれる。

「今日はカツ丼が食べたい」つぶやく。

「わがまま言うな……いいよ、奢ってやる」


「でも霊感が働いたら、次は教えてくれ~」

耳打ちする。

「大盛りで」

「はいはい、高校生はよく食べる!」


去り際、最後に私を見る。

そして振り返り、警察と共に去っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ