表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特異事案調査官・霧島冬馬  作者: たけるん
10/10

エピローグ:赫き余燼

東京・中野区。

狭い団地の一室。静かな夜だった。


カップ麺の湯を捨て、霧島冬馬は湯気越しにテレビを見ていた。

ニュースでは、先日山中で崩落事故が発生し、違法宗教団体の残骸が発見されたと報じている。

「公安が調査中」と言うナレーションの下で、映るのは焼け焦げた神殿跡地の航空写真。


霧島はふうっとため息をつき、カップ麺に粉末スープをぶちまけた。


(表向きは事故。裏は封印。……これで、よかったのか)


床には報告書のドラフトが散らばっていた。

「赫き神に関する特異宗教事案の一件、完結」とあるその上に、霧島の手書きのメモが置かれている。


《対象S(沙耶)の心理状態、安定。

 対象H(陽菜)は保護観察中。依然として低強度の幻視あり。

 “赫い胎”はすべて無力化。》


報告書に挟んだ封筒には、沙耶からの短い手紙が入っていた。


> 「霧島さんへ

 私はまだ、地上が怖い。だけど歩くよ。

 今度また地獄があったら、隣で歩いてください」


              沙耶




「……まったく、お人好しすぎんだよ」


霧島は笑いながら、湯の戻りきった麺をすすった。

目の下にはクマ、机には未処理の書類。

だが、その瞳だけはまだ、地下に棲む何かを見つめている。


ふと、スマホが震えた。

公安の内部ネットからの暗号通信。


画面に表示された一文――


> 《特異生命痕跡、都内複数箇所にて同時検出。

  名称:CHIMERA》

《調査要請対象:特異事案調査官・霧島冬馬》




「……キメラ、だと?」


霧島はスマホを伏せ、立ち上がった。


窓の外――高層ビル群の隙間から覗く夜空に、どこか見覚えのある赫さが揺らめいていた。


「ったく、今度は何匹混ぜやがった」


ぐっとネクタイを締め、スーツのジャケットに袖を通す。


――霧島冬馬、再び。

“神”が死んでも、“人間の怪物”はまだ生きている。



---


―次回予告:「CHIMERA|キメラ」


> 解剖不可能な死体。

生きているはずのない構造。

そして、“混ざった声”が叫ぶ。


「カミが つくった ボクたちは なにもの――?」


特異事案調査官・霧島冬馬、

次なる舞台は東京――

人が人を超えて混ざる、禁忌の街へ。

今回、読んでいただきありがとうございます。「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、評価をよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ