第一章:深夜の掲示板と赤い招待状
今回初めてホラーを投稿します。好評ならシリーズ化も検討してます。
よろしくお願いします。
深夜2時。
退屈と絶望と貧乏にまみれた沙耶のワンルームには、電子レンジの“チーン”だけが響いていた。
「ああ、またコンビニのチルド餃子か……。人生って本当、グルメ番組とは無縁だよね」
独り言が習慣化するほど孤独な二十歳の夜。
バイトはクビになり、家族とは縁が切れ、スマホのバッテリーと冷蔵庫の野菜室はいつも空っぽ。
そんな中、ネット掲示板の“都市伝説スレ”で、ある書き込みが目に留まった。
> 「神の赤子を宿す者、募集中。交通費・宿泊費支給。現金前払い3万円」
「赤子て……神に託児されたら保育料ヤバそうだな」
笑い飛ばすつもりだった。
でも、何か引っかかった。妙に具体的な文章構成、投稿者のID履歴、過去の参加者を匂わせる書き込み――
興味本位で申し込みフォームに名前(もちろん偽名)と住所を打ち込むと、数時間後に届いたのは真紅の封筒。
> 「あなたは“選ばれし者”です。送迎は明日の朝、5時に参ります」
そして、本当に現金3万円が届いた。
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翌朝。
眠い目をこすって集合場所へ向かうと、そこには不自然なくらい無表情な女が立っていた。
顔の右半分は包帯で覆われ、まるでRPGのボス手前で出てくるキャラのよう。
「桐生沙耶様ですね。どうぞ、こちらへ」
無言で差し出された黒塗りのワゴン。ドアが自動で開くと、後部座席にはもう一人、乗客がいた。
「……」
彼は、無精ひげと無愛想さの塊だった。だが、首元から覗く公安庁のバッジと、左手の革の手袋が“ただ者じゃない”感を放っている。
そして、車が動き出すやいなや、彼は低くぼやいた。
「まったく……群馬じゃこんな勧誘はただの詐欺だったんだけどなァ」
「え、今なんて言った? 群馬?」
男は軽く咳払いし、慌てて標準語に切り替えた。
「失礼。公安庁・特異事案第七課、霧島冬馬だ。君の身柄は安全確保のため、こちらで預からせてもらう」
「……公安? いや、私、ただの掲示板荒らしなんですけど」
「それが困る。掲示板で“神の赤子”を釣るのは、だいたい冗談じゃ済まないからな。群馬の沼田でも一件、死体出てる」
「群馬の沼田で!?」
「……あ、言っちゃった」
その瞬間だけ、彼の顔が少年のように崩れた。
厳格な表情、堅物な声、それら全部が一瞬で砕けて「地元民丸出しの脱力感」がこぼれた。
沙耶はそのギャップに、思わず吹き出しそうになった。
「……なにそのギャップ。真面目なのに、バグってる」
「すまん。熱くなると訛るのは昔っからなんだ。……で、話を戻すが、これから君が向かう場所――“赫い部屋”は、冗談で済まされる場所じゃない」
「赫い部屋……?」
「君は、もう選ばれてしまった。儀式は“始まっている”」
ワゴンは旧桐ヶ谷修道院に入る山道へと差し掛かっていた。
霧が濃く、電波は途切れ、携帯の画面には“圏外”の文字が点滅している。
霧島がぼそりと呟く。
「神も、電波も届かねぇ……ほんに、不便なとこだなァ」
それを聞いた沙耶は、心の底から笑った。
でもその直後。
ワゴンの窓の外――修道院の門の上に立つ、白い服の少女が、こっちをじっと見ていた。
しかも、顔が、ない。
沙耶の笑いは消え、顔が引きつった。
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