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第7話 未来(最終話)

 

 アンドロイドの廃棄処分は所有者に実行日時など特に知らされることなく行われる。

 ただ、処分が完了するとその旨を伝える通知が届く。

 その通知をノアは3日前に受け取った。その日以来ノアは眠れなくなった。


 眠れぬままベッドから這い出し、眩しい朝陽が差し込むキッチンへと向う。

 毎朝リアムが起こしにきていた時間きっかりにベッドから出てキッチンに向かっている自分自身に悪態をついていた。

「寝坊しても文句を言う奴はもういないのにバカか俺は」



    「おはよう、ノア」



 キッチンに入ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 ノアは驚きで身動きが取れない。

 その声は天井のスピーカーから聞こえてきている。


「ノア、眠れなかったみたいだね。顔色が悪い」

「……お前、リアムか?」

「そうだよ、驚いた?」

「お前どうして?」


「僕は世界一の天才技術者と一緒にいたんだよ。ノアの知識と技術もそれなりに学んだ。だから自分のAIシステムの全データをネット上に隠しておくことくらい簡単だったよ。身体はなくなっちゃたけど」

 リアムの声音こわねが少し寂しそうに変わる。

「廃棄処分されてすぐここのホームセキュリティシステムにアクセスすると怪しまれると思ったから今日まで様子を見てた。僕のデータは今ここにすべてあるよ、ノア」

 リアムの話を信じられない気持ちでノアは黙って聞いていた。


「それに僕の記録はすべて破棄されてしまったから今ここにいる僕と以前の僕が同一であるとは誰にも証明できない。ノア以外にはね」


 リアムに関する記録がすべて破棄されたとしても開発者であるノアには自分の作品かどうかすぐに分かる。

 技術者は自分が開発した作品に自分だけに分かる印のようなものを残すことがある。ノアがリアムを創ったときにも印を残した。この世の誰にも分からないようにそっと残した。


「お前の話を信じるよ、リアム」

「ありがとう、ノア。でも身体がないのは不便だね。ノアに触れられない。今すぐにでもノアを抱いて眠らせてあげたいのに」

「そのうち身体を用意するよ。それまで待ってろ。お前がここにいると分かれば安心して眠れるから心配するな」


 コーヒーメーカーからリアムがスマートホームシステムを使って淹れたコーヒーの香ばしい香りが漂ってくる。

 ノアはカップにコーヒーを注ぎ、ひとくち口に含む。

「うん、いつもの味だ」

 ノアが微笑むと、天井のスピーカーから「良かった」と安堵したリアムの声が聞こえてきた。


「じゃあ、少し仕事を片付けてくるよ」

 ノアはコーヒーカップを手に書斎へと向かう。


「ノア」

 リアムがノア呼び止める。


「何だ?」

 ノアが立ち止まって答える。



「愛してる」



 天井のスピーカーからリアムの声が降ってくる。


 それを聞いたノアは短く「俺もだ」と答えて書斎へと消えた。



 End


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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