金魚鉢【WEB】
金魚鉢
ここに壱つの金魚鉢がある。
主はまだいない。
その隣に連なり真新しい金魚鉢があった。
咽返るようなあっつあつの工房に、たらたらと汗を流し鋭い眼光に映る火群。
灼熱の熱球に情熱の息吹を吹き込み
まるで飴細工の様に何の躊躇も迷いも無く、淡々と手速く形造られてゆく。
まだ熱し冷めやらぬ、金魚鉢が並んでいく。
無造作に積み上げられた、金魚鉢の山があった……。
チリン! チリンチリン……。
天井に吊り下げられた、色とりどり無数の風鈴が重ねる音。
壁際に先代の造りし何の変哲も無い、御馴染みの形の金魚鉢の中……くぽぽぽぽ……くぽぽぽぽ……赤金色の鱗を煌めかせ壱尾のらんちゅうが、磐清水と硝子の歪んだ世界をを覗いておりました……。