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落第烙印の戦乙女〜魔法が使えない少女達〜  作者: 黒野 白登
第1章 『十音色隊結成編』
1/6

プロローグ 『オワリのハジマリ』

 始めての投稿になります 黒野 白登です。

 異世界系になります。趣味の延長線で書く物語なので

 気楽に読んで頂ければ幸いです。


 ヒロインは多いですが、十人います。一人一人大切に過去の描写含め書いていく所存です。

 ストーリーの方も全13章を予定しています。書き切れるか分かりませんが、宜しくお願い致します。


 ※※※

 投稿頻度は一週間に一度程のペースとしていきます。

あまり頻繁な投稿が出来ないので、ご了承下さい。

 ー人間と魔族、そして『魔法』が存在する世界にて。


 いにしえの時代、人間と魔族の双方から遠ざけられている"とある種族"があった。

 その種族は男女共に美男美女ばかりであり、一見すると人間のようなのだが、その『背』には右に三、左に三。合計六つの三対六翼さんついろくよくとなる純白の異形なるものが生えており、人を遥かに凌駕する高度な頭脳と圧倒的な武力を持ち合わせていた。


 かつては人も魔族も全てを救済する"神の落し子"であったとされているが、それ自体はもうただの神話である。

 古の時代、人間と魔族双方から忌み嫌われていた"とある種族"。彼らはいつの頃からか、地上に存在するだけで害悪だった。人間と魔族の連合軍に種族の大半を虐殺され、残された同胞達で抵抗するも、いくらあらゆる面で優れていても人間と魔族が結託した"数の暴力"にはかなうはずも無く。


 彼らは元の住処すみかを追われ、逃走する間に何人も何人も何人も殺されていき。

 本来の種族数を半分以下まで減らした彼らは、決死の逃避行の末、やがて『とある場所』へと辿り着く。



 ーそれは、『世界の果て』。

 何人たりとも侵入を許されない"闇の領域"だったー。


◆◆◆


 『ーくさいな』


 種族の一人が、そう呟いた。

それに他の仲間達も"そうだな"と頷いた。

 彼らは逃避行の末、辺りを濃密な瘴気しょうきが漂う洞窟に辿り着いていた。この時、種族で残っていたのは男性と女性が複数人。そして大人達の後ろを怯えた様子で付いていく女の子が一人。


 『大丈夫よ。私達大人が守ってあげるからね』


 女の子の怯えた様子に気付いた女性の一人が優しく微笑み、女の子の頭を撫でた。


 『ーうん』


 女の子は安心したように表情を緩ませた。


 ー彼らは、『魔法』で灯りを生み出し、濃密な闇と瘴気が支配する洞窟を無言で、ただひたすらに進んでいった。種族としては最早壊滅状態。明確な目的は無く、ただ、ひたすらに。


 やがて、開けた場所に出た。だが闇の濃度は今までより高まっている事をその場の誰もが認識していた。

 種族の一人が、『魔法』で生み出した灯りを上にかかげた。幸い、天上はかなり高いようだった。灯りを掲げ続けているとしずくが一滴、落ちてきた。慌てたように灯りを前方に。すると、今度は大きな湖があるのが確認出来た。


 『ー!お、おい!水だ!水があるぞっ!』


 逃げるばかりで、のどが乾いていた。

 その一言がきっかけだったか。張り詰めていた空気が弛緩しかんしていく。男性も、女性も。皆が皆、乾き切った喉を潤そうと湖に殺到していく。


 ーだが。


 『ーあ』


 その"事実"にいち早く気付いたのは。


 『ー待ってッ!』


 ー"ただ一人"の、女の子だった。


 が、その声が届く前に。


 『ー近寄るな、愚物共が』


 重くのしかかるような、潰してくるような声。

 それと同時に、湖に"紅いモノ"が飛散していった。湖に殺到していた何人かの"首から上が無かった"。

 途端、辺りに漂う腐乱臭と冷たい岩肌に崩れ落ちる無数の死体。


 『ーあ、ああ』


 突然の事態に誰もが呆然ぼうぜんとする中、ただ一人、女の子だけは"その存在"に気付いていた。

 闇に紛れてよく目をらさなければ認識すら出来ないだろうがー


 『ーあああっ』



 ー竜が、いた。


 闇に浮かび上がる鋭い眼光。見上げてもその全貌は恐らく見えないだろう巨躯きょく。何でも切り裂くだろう竜爪りゅうそう。あらゆる障害を薙ぎ飛ばす尾。


 他の大人達も、やがて気付き始める。自分達の目の前に、常識を簡単に破壊する規格外の存在がたたずんでいる事に。


 『ーこの確固たる存在である我に近寄るなど』


 『ーああああ、ああっ』


 『ー貴様等愚物全て、"死罪"である』


 具体的な姿は見えない。が、声は微塵たりとも冗談では無いとその場の全員が理解をした。


 そして。


 『うおあああああーっ!』

 『く、喰らえーっ!』

 『死ねぇぇぇぇぇっ!!』


 彼らは、その時その場にて、一番してはいけない愚かな行動を起こしてしまった。

 暗い洞窟内に『魔法』が吹き荒れた。


 炎が、水が、風が、雷が、光の槍が、無尽蔵に湧く闇の腕が、荒れる氷のつぶてが、降り注ぐ落石が。

 あらゆる『魔法』が、竜をー


 ー傷付けなかった。掠り傷一つ、無かった。


 『ー』


 女の子が見た光景は。

 『魔法』を使って戦う大人達。だが、眼前の竜には何一つ効く気配が無く。真上から叩き付けられる竜爪に、勢い良く振られた長大な尾に。または、竜のまるで処刑場のギロチンのように鋭利な牙に、強力なエネルギー波に。


 一人、また一人と確実に殺されていった。



 『ー』


 どれ程の時間が流れただろうか。女の子は、目の前の光景に悲鳴を上げるでもなく、ただ呆然と、まるで他人事のように、同胞達の悲惨な最期を見届けていた。


 ーびちゃっ


 不意に、そんなねっとりとした音が女の子のすぐ近くで発生した。

 涙すら出ない、乾いた瞳で音のした方向へ顔を向ける。


 そこには、ほとんど原形を留めず、最早誰であったのかすら分からない肉の塊があった。

 だが、女の子には何となく、それが誰なのか分かった。


 そして、そう認識した瞬間。全てどうでも良くなって。


 ーわらった。


 『ーあははははははははっ!』


 両腕で己の体を抱き、ねじれて、まるで狂ったように。


 『ははははははははははっ!』


 嗤った。嗤って、嗤い続けて。

  ーやがて。


 『ははははは!ははーは?』


 その嗤い声が、不意に止んだ。

 その理由は、明白。


 ー竜が"殺意"を込めて、睨んでいたからだ。


 『貴様、一体何のつもりで嗤っていた?』


 竜のまとうオーラのようなものが、その瞬間増大したように女の子には感じられた。


 『その特徴的な美貌と"翼"ー貴様、奴らの同胞であろう?何故、嗤ったのだ?情が無いのか?』


 竜は、女の子にそう語りかけた。が、女の子には理解出来なかった。情が無い?殺したのはそっちの癖に?

 ーいや、違う。"同胞達は自ら死んだ"。私はしっかりと警告した。『待って』と。彼らはそれを聞かなかった。聞かなかったから、竜に殺された。もしかしたら、この洞窟の瘴気でおかしくなっていたのかもしれない。全員、もうまともな思考をしていなかったのだ。だから、私を守ると言いながら皆死んだ。そもそも、誰も私を愛していなかったのに。自己中な連中の癖に、生き汚いから。ああ、そうだ。私はー


 ー私は『被害者』だ。


 そして、その瞬間。


 『もうい。ー死せ』


 竜がしびれを切らしたか。女の子の眼前に降り立った。

  そして、水滴が舞い散る中で、破壊的な竜爪を、女の子へ向かって振り下ろしー


 『ー何のつもりだ?』


 竜は、振り下ろそうとした竜爪を、女の子の寸前で止めた。

 ひざまずき、両手を組んで"祈っていた"から。


 『確かに私はこのまま死んだ方が良いのかもしれません。ですが、私は同胞達の中では嫌われ者だったんです。だから、"邪竜様"には心から感謝しております!私を"嫌っていた同胞達"を全員殺してくれたから!ありがとうございます!』


 ーすると。


 『ー』


 竜は、竜爪を静かに降ろした。女の子を避けながら。


 『ー貴様、我を"邪竜"と呼んだな』

 『はい』

 『ーフッ、面白い小娘よ。い。寄る辺が無いのであれば、我が根城にいるが良い』


 そして、"許した"。


 『良いんですか?ありがとうございます!私、ここを出ても居場所が無いのでー』

 『ーそうか。難儀な種族よな』


 死体だらけとなった洞窟の中で、そんなやり取りを交わす女の子と竜。

 しかし。跪いたまま竜に顔を見せなかった女の子は。


 『ー』


 その口元に"退廃的な笑み"を浮かべていたー。


 竜は気付いていない。

  ー自身が女の子、いな。"悪魔のような天使"に手玉に取られた事実を。


◆◆◆


 これは、一つの種族の終わりとある始まりの物語。

  女の子と竜が出会い、一人と一匹が物語を紡いでいき、やがて世界は大きく揺れ動く。


 ー最悪の復讐劇 『聖魔大戦せいまたいせん』が、幕を開ける。

 




 




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