6話.騎士の親子対決
「うわっ!」
「なんだ!!」
この村を襲っていた騎士達が僕たちが作った落とし穴に落ちていく。
「今だ!一斉攻撃!!」
僕のパーティの魔法使い、クラインが号令し、冒険者達は魔法を使って攻撃をした。
村人達も攻撃に参加した。
攻撃性は低いが初球魔法くらいならできる村人は何人かいるし、できないものは石を投擲した。
そうして、ヴァイロン家が連れてきた騎士たちは
一網打尽だ。
リアさんが言っていた通り、騎士達に対して落とし穴作戦の効果は絶大だった。
けど、ヴァイロン家の当主とその長男には通用しないし、敵わない。
そんなことは僕でも一目見て分かった。
実力の差が違いすぎる。
◇◇
「リアさん!!話は聞きました。僕たちも連れて行ってください!」
ルナ王女とリアさんの話を盗み聞きし、僕とケインとクラインは共に戦いたいと懇願した。
「ダメよ。危険すぎる」
「アルマ村は僕達の村です。今度こそ自分たちも力になりたい!!それに、アルマ村までの道のりなら近道を知ってます!」
僕の熱意に押されてリアさんは渋々受け入れてくれた。
けど、代わりに条件が提示された。
ヴァイロン家出身者とは何があっても戦わないこと。
いざという時以外、村人の避難誘導に専念することだ。
他のアルマ村出身者も話を聞きつけ、参戦してくれた。
◇◇
アルマ村についてからリアさんとは別れたが、その後ヴァイロン家が連れてきた騎士達が襲ってきて、今何とか倒せたというわけだ。
接近戦が主流の僕たち剣士、戦士職は落とし穴まで騎士達を誘導する役割を担当したが、実力の不足を嫌というほど痛感した。
逃げながら戦うことでなんとか、自分の役割を果たせた。
僕だってできるならリアさん達騎士のように、正々堂々勝負したいさ。けど僕は弱い。
真っ向から戦ったら一瞬で殺されてしまう。
だから、僕はリアさんに憧れていた。
あの真っ向から敵を打ち砕く美しい剣技に。
凛とした態度に。強い正義の心に。
リアさんならきっと、僕たちを助けてくれる。
騎士達との戦闘が終わり、ヴァイロン家同士の戦いがどうなったのか、全員が注目する。
ちょうどリアがヴァイロン家の長男を倒したところだった。
その凄まじく、華麗な剣技に全員が魅せられた。
長男が倒れ、次は現当主にしてリアさんの父、ノア・ルーシャス・ヴァイロンが剣を抜いた。
「ノア・ルーシャス・ヴァイロン」
「リア・エリーゼ・ヴァイロン」
名乗りは騎士の間でお互い命を賭けた真剣勝負を意味する。
全員その重苦しいまでの雰囲気に声が出せず、ただ息を呑み、勝負の行方を見守る。
リアさんは道中、父であるノアには一度も勝てたことがないと言っていた。
正直リアさんのことがとても心配だ。
だけど、今の僕じゃ何の力にもなれない。
リアさん、頑張ってください。僕たちの村を救ってください。お願いします!
不甲斐なさを感じながらも、僕はただひたすらに心の中で応援を続けた。
◇◇
リアはノアと剣を向け合った。
「……」
道中ユウくんにも言ったように私は父に訓練では1度も勝てたことはない。
しかも、本気になった父上と戦うのは初めてだ。
今までの訓練では私に合わせて手を抜いていたことがよく分かる。
…隙がない。
攻め方が分からない。
これが最強と謳われる騎士、
ノア・ルーシャス・ヴァイロン。
「こないのか?ならこちらから行くぞ」
そう言ってノアはゆっくりと無防備に歩いて私の間合いに近づく。
父上、私なんて赤子扱いでも倒せるって言うのですか?
なめないでくださいっ!!
さっきおにぃが使ってた歩法を今度は私が使う。
瞬歩のさらに上の、発展版とでも言うべき歩法、
縮地!!
足に魔法力を纏い、ダンッと力強く踏み込み一気に加速する。
この距離を考えれば、たとえ父上だろうと倒し切れる筈だった。
「見事な縮地だ。あの兄とは段違いの技のキレ。やはり惜しいな」
「なっ!?」
父は横から薙ぎ払った私の剣を上段から押さえ込むように止めたのだ。
それも難なく済ました顔で。
「だが、忘れたか。我らヴァイロン家の剣の真髄は、相手の攻撃を全て受け切って捻じ伏せるカウンターだ!」
そのまま父上は剣を力一杯振るった。
私は回避のため後ろに退くが、かわしきれず左肩が
ざっくり切れる。
「くっ」
痛い。けど、まだ左肩は動かせそうだ。
だが、そのまま父上は上段から思いっきり剣を振り下ろした。
剣で受けるが、ズシッと重い衝撃で押し潰されそうだ。
剣が軋むような音もしている。
左肩もズキズキと痛む。
このままじゃ剣を折られてそのまま斬られると判断した。私はアランにやったように、父上の剣の勢いを利用して受け流そうとする。
だが、思ったようにはいかない。父の剣を振る力が強すぎるんだ。
辛うじていなすが、それでも父上の剣は私の額を切り裂き、まぶたをかすった。
さらに、父の剣が地面に突き刺さる衝撃で私の体は吹き飛ばされる。
「あぁっ!!」
私の体は地面に叩きつけられた。
何とか受け身を取り体勢を立て直して距離を取る。
良かった。
まぶたはかすっただけみたいだ。ちゃんと見える。
血が流れ落ち、目の中に入ったのを拭う。
これが父上の剣。
私の剣が精密な剣だとしたら、父上の剣はその精密さに加えて並外れた腕力が加えられてるってとこね。
精密さ×剛力の剣か。
真っ向勝負じゃ勝てない。
チラリとユウ君の方を見る。
かつてユウ君が見せた戦慄するほどの気迫。必要なのはあれと同じ覚悟と知恵だ。
私が冒険者の体験で学んだこと、それは父上が知らない私。そこに勝機があるはずだ。
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