表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

5話.天才騎士VS凡才

「なっ!?」

バカ妹!?なんでここにいる!?


「リア!?」

父上も驚いているようだった。


ここはリアの剣の間合いだ。

すぐさま俺はリアから距離を取る。


状況はイマイチ飲み込めないが、リアがここに来たという事は敵である事は間違いない。


リアを見て父上もこちらに駆け寄る。

「何しに来た。リア?」

「村人たちを守りに」

父上の問いにリアは馬鹿正直に答える。


そういうところは相変わらずだな。

追放直後は死んだような顔をしていたのに、今は強い顔になった。


やっぱりそういうところは可愛げがなく忌々しい。


「父上こそ何故ここに来たのですか?」

「お前には関係のないことだ」

「ボノクラ伯爵に言われてこの村を粛正にきたんですよね。けど、この村は国家反逆罪なんて企てていない。だからルナ王女からもこの村の襲撃は禁止されています。今すぐ帰ってください」

「お前は何か勘違いをしているな。私たちはボノクラ伯爵の命など受けていない。お前が失敗した任務を代わりに遂行しに来ただけだ。ルナ王女は確かこの国の頂点だが、彼女に我々騎士に対する直接の命令権はない。あくまで、王族が貴族に命を与え、貴族が我ら騎士に命令する。それが習わしだ。つまり、お前がいかにルナ王女殿下の名を出そうと私たちが止まることはない」

父上は冷たく言い放つ。


ボノクラ伯爵が命を出してないというのは嘘だけどな。


俺は父の言葉に心の中で突っ込む。

父上は何があろうと貴族の命を遂行する気だ。


けどリアと父上が戦ったら…


おそらくリアは負ける。


「…」


父上が腰の剣にをかける。

リアがそれに応じようとした。


「お待ちください!父上。この者は我が家から出た裏切り者です。だから次期当主である私に始末をつけさせてください!」

リアが父の闘気に応じる前に俺はリアと戦う覚悟を決めた。


「やってみろ」

父上は抑揚のない声で冷たく言った。



◇◇



「くっ、ぐっ、くそっ!」

リアと剣を交える音が辺りに鳴り響く。


分かってたけど、こいつやっぱり天才だ。 


一合、二合と剣をぶつけ合うたびに押されて、こちらがどんどん劣勢になっていく。


このままじゃ何もできないまま無数の剣撃に押しつぶされる。


分かってはいた。

俺がリアと剣で模擬戦をしたのは1年前。

その時から俺はこいつに勝つことを諦めてほとんど剣の鍛錬をしてこなかった。


けど、その時の模擬戦ではもっと接戦だった筈だ。


それがたった1年でこんなに突き離されるのかよ。


思えば俺は何で今コイツに挑んでるんだか。

勝てないことは分かりきってるのに。


何故かコイツが父上と戦うと考えたら、その前にどうしてもこいつに自分の全てをぶつけたくなったんだよな。


けど、このままじゃ何も残せないまま終わる。


とうとうリアの剣を受けきれなくなり、1つまた1つとかすり傷が増えていく。このままじゃ一気に押し切られる。


待ってくれ。まだ俺はお前に何も見せてないっ!!


兄として、もはや全く価値のない、ちっぽけな矜持がなすすべなく敗北することを許さなけった。


こうなったら一か八か。


戦闘用歩法、瞬歩!!

足にMPと呼ばれる魔法力を貯め、一瞬だけ爆発的にスピードを高める移動法だ。


基本騎士は魔法を使わないし、使うことを恥とさえ捉える風潮がある。

だが、こういった肉体強化の類の魔法は騎士の間でも偶にだが使われる。


当時リアを倒すために練習していて未完成のまま諦めて放置していた歩法。


その歩法をぶっつけ本番で試みる。

タイミングは一瞬、リアが剣を振り上げた瞬間、

一気に間合いを詰め、

カウンター気味に剣で斬りかかる。


狙うは胴体。


リアの目が大きく見開く。

その動きは完全にリアの虚をついていた。

それは間違いない。


が、なんとリアは反射で体をそらしつつ、かろうじて自身の剣を俺の剣撃にぶつけることで、ダメージを防いだのだ。


そこからは決着まで一瞬まばたきをする間さえなかった。


リアは俺の瞬歩の勢いを利用して、俺の剣とぶつかっていた自分の剣を斜めに傾かせ、俺の剣をいなしたのだ。

そして、俺が思わずバランスを崩し前のめりになったところを一太刀浴びせてきた。


その神技とも言える繊細で華麗な剣捌きは、憎々しいを通り過ぎてもはや美しかった。


「すっご」

思わず口をついて、言葉が出た。


切り口から血が吹き出し、俺はそのまま倒れ込んだ。

容赦ねぇ。こいつほんとに覚悟決めてきたんだな。


結局何もできずに負けか。


「あーあ、当主になってやっとお前を出し抜けたと思ったのによ」

「バカ兄貴…おにぃは騎士なんて本当は興味なかったでしょ」

「…!」


正直驚いた。妹は俺のことなんて興味がないと思っていた。道の上の小石とでも思っているのかと考えていた。


なーんだ。俺のことを見てたのはお前も一緒かよ。分かってんじゃん。


「ちっ、図星だよ。バカ妹!」

そのまま俺の意識は遠ざかっていく。


不思議と悔しくはなかった。

どころか清々しいきもちだった。

俺は多分諦めたって公言しても、心のどっかでリアのことが認められらなかったんだ。


けど、あんな剣技見せられちゃ黙るしかねぇわな。


だが、俺は見逃さなかった。縮歩で斬りつけた時、リアの防御は少し遅れ、胴体の鎧に僅かながら切り傷がついたのを。


あーあ。瞬歩をもっと極めてりゃもう少し善戦できたかもな。生き残れたら修行してぇ。





読んでくださりありがとうございます。


もし少しでも気に入っていただけたのであれば

下にある☆☆☆☆☆から、評価をくださると嬉しいです。


また、ブックマークや感想など気軽にしてくてくれると作者の励みになります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ