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魔物使いは繋がりたい!  作者: のえる
魔物使い見習い編
8/32

ギルドに登録してみよう

評価もいただき、ありがとうございます!!

まだまだ続ける予定なので、これからも読んでいただけると嬉しいです!

「コルテーゼには着いたばかりだろう?

 ゆっくり街を見てくると良い。

 エマ、案内してやってくれ。

 じゃあなメルタ、明日からよろしくな!」


 アレンさんはそう言うと、ギルドの奥に戻って行った。

 台風みたいな人だ。


「アランさん、挨拶それだけですか!?

 まったくもう……。

 ごめんねメルタ君、うちのギルド長、あんな人で……」


「あ、いえいえ!

 ギルド長ってことは忙しいでしょうし、お気になさらないでください!」


 俺の受付を担当してくれた女性、エマさんは恥ずかしそうに謝る。

 ただ、こちらとしてもありがたい。

 あれ以上アランさんと会話すれば、緊張しすぎて変なことを口走りそうだ。


「それにしても、メルタ君の受付を担当出来て良かったわ。

 あなたが来た後は、私が色々と案内する予定だったから」


 エマさんは、こほんと咳払いしたあと続ける。


「改めて、コルテーゼへようこそ、メルタ君!

 私は、エマ・フローリオといいます。

 ギルドで働くことになったあなたに、色々と案内するわね。

 これからよろしく!」


「はい、よろしくお願いします!

 ……あれ、俺ってこれからギルドで働くんですか!?」


「ええ、そうよ。

 まさか、何も聞いていないのかしら?」


 本当にアランさんは……。

 と、エマさんはため息をついた。


 俺が、ギルドで働く?

 

 確かに村長からは、特別な仕事をやってもらうことになった。

 コルテーゼに着くまで秘密だ、と言われていたが……。

 まさか、ギルドで働くとは思いもよらなかった。

 ていうかソフィも、知っていたのか?


「ほっほっほ。

 ほれ、楽しみは多い方が何とか、と言っておったろう?

 若人から楽しみを奪うなど、年寄りのすることではないからな」


 いや、これは言ってほしかったよね……。

 村長といいソフィといい、困った人達だ。


「すみません。

 ここで働こと、今初めて聞きまして…。

 あの、ギルドで働くってことですけど、エマさんみたいに受付窓口の仕事を担当するってことでしょうか?」


「ううん、メルタ君には別の仕事をお願いする予定なの。

 どちらかと言えば、裏方でのお仕事になるかな。

 魔物に凄く詳しいって聞いたから、是非力を貸してほしくって!」


「裏方での仕事、ですか……?」


「ごめんね、色々と困惑しちゃうよね。

 具体的なことは明日説明するから、今は気にしないで!」


 何だか気になるけど、確かに今日教わっても混乱しちゃいそうだ。

 それよりも、今日は色々と街生活の準備をしないとだった。


「そういえばメルタ君、ギルドの登録はまだだっけ?」


「はい。

 ずっとセレノ村に生活していたので、まだしていないんです」


「それならせっかくだし、このままギルドの登録をしちゃいましょ!」


 エマさんはそう言うと、受付窓口の机の上に置いてある石板のようなものを真中に寄せてくれた。


「ここに手を置いて、魔力を流し込んでみて。

 その後は私が色々質問するから、回答してね。

 答えてもらった内容に、私のほうで登録しちゃうね!」


 エマさんに言われた通り、石板の窪みに手を置いて、魔力を流し込む。

 すると石板は、青色に輝き始めた。


 石板の反応を見た後、エマさんは俺の名前や年齢、住所などの情報を聞く。

 エマさんは、俺の回答内容を紙に記録していくのだった。


「じゃあ最後に、スキルと得意分野だね。

 ギルドが冒険者に依頼の紹介をするときや、他の冒険者が仲間を募集する時には、ギルドに登録されたスキルと得意分野を参考にするの」


 今まで回答した個人情報(名前は除く)と異なり、登録されたスキルや得意分野というのは、他の人にも公開する情報らしい。


 つまり、俺が”魔物使役まものしえき”のスキルを持つ人を探したいときは、ギルドで管理されている情報を参考に出来るというわけだ。

 その逆も然り、である。


 一方で、全てのスキルを登録すると、それはそれでリスクがあるらしい。

 例えば、暗殺系のスキルを持っている場合。


 冒険者として募集される可能性がある一方、役人の暗殺等、ギルドが追跡できないような危険な依頼が本人に直接回ってくる場合もあるらしい。

 

 もちろん、スキルを持っている冒険者が悪いのではなく、そういった依頼を持ってくる者が悪い。

 だが、一流の冒険者は、そういったリスクも考えた上で、ギルドに登録する情報を取捨選択するのだとか。


 得意分野についても、考え方は同じだ。


「貴重なスキルや得意分野は、待遇が良い仕事や任務が回ってくる可能性が高いの。

 でも、変な輩から急に声がかかるリスクもある。

 本当はギルドが防ぐべきなんだけど、怪しい組織って日夜増えるし、正直なところ、追いかけられていないのが実態なの」


 皆が安心してギルドに情報を登録出来るようにしたいのだけど、難しくてね。

 エマさんが付け加える。


「”魔物使役まものしえき”については、多分大丈夫だと思う。

 世の中には、魔物を根絶やしにしようとする考えの人も一定数いるんだけど、魔物使いや使役している魔物にまで危害が及んだケースは無いはず。

 少なくとも、私は聞いたことはないわ」


 なるほど。

 確かに、魔物を滅ぼそうとする人はいても不思議じゃないか……。

 とはいえ、危害が及んだことが無いというのであれば安心か。


「分かりました。

 じゃあ俺は、所有している全てのスキルを登録しますね」


 そう言った後、所有しているスキルを順番に伝える。


「“魔物使役まものしえき”、”念話ねんわ”の2つだね。

 はい、記録したよ!

 ギルドに登録する得意分野は、どうしようか?」


 得意分野か……。

 ここに登録する内容次第で、声がかかる任務や仕事が変わってくる。

 これから3年間はコルテーゼでギルドの仕事らしいが、それ以降のことを考えると、慎重に考えなくてはならないか。


「メルタ、そう悩む必要はない。

 ギルドに登録した情報は、後から変えることも出来るぞ。

 スキルだって、これから増えるかもしれんしの」


 ソフィに言われて、なーんだ、と肩透かしをくらう。

 そっか、後から変えられるのか。

 それなら、難しく考えなくても良いのかな?


「ふふ、物知りな梟さんだね。

 登録した情報は後で変えられるから、シンプルで良いと思うよ。

 "魔物についての知識が豊富です"、って登録しておく?」


「はい、それでお願いします!」


 エマさんは、記録した内容を元に登録処理を進めてくれた。

 ちなみに、ソフィが普通に喋っていることには時間差で驚いていた。


 少しの間待つと、エマさんが声を掛けてくれた。


「よし、これでギルドの登録処理が完了したわ。

 お疲れさま!」


「エマさん、ありがとうございました!

 ギルドに登録した情報って、これからずっと有効なんですか?」


「ええ、ずっと有効よ。

 魔力が変わらない限りはね」


 この世界で人を認証できる唯一の方法は、魔力。

 姿は”擬態ぎたい”系のスキル、知識は”透視とうし”系スキルなどで偽装できるが、魔力の質だけは絶対に偽装ができない。


 ただし、魔物の場合は進化すると、身体に流れる魔力が変わることもあるとか。


「さて、ギルドの登録手続きも終わったし、街を案内するね!

 私は少し準備があるから、メルタ君は先にギルド本部を出たところで待ってて!」


 そう言うと、エマさんはギルド本部の奥に戻って行った。

 しまった、アレンさんとエマさんに、セレノ村から持ってきたお土産を渡すのを忘れていた。

 後で渡さなくちゃ。


    ◇


 ギルド本部前の広場にあるベンチで座っていると、エマさんが走ってきた。

 さっきまではギルドの制服だったが、今は私服に着替えている。

 女性にはあまり慣れていないので、何だかドキドキする。


「お待たせ、メルタ君!

 時間かかっちゃってごめんね~」


「いえ、とんでもないです!

 街も案内してもらえるなんて、何から何まですみません……」


「ふふ、気にしないで!

 セレノ村からコルテーゼの街まで遠かったでしょ?

 疲れているだろうし、まずはお茶でもいこうか!」


 ついてきて、とエマさんが案内してくれる。

 しばらく歩くと、静かで雰囲気の良いカフェが見えた。


「ここのカフェ、最近見つけた穴場なの。

 美味しくて凄く気に入っているのよ」


 店舗に入った後、店員に案内してもらい席に着く。

 スペースも広く、ルナとソフィも席の近くで座れた。


 慣れない人込み続きだったが、やっと静かな場所でゆっくりできる。

 お店の人に頼み、ソフィとルナ、クレムの水をもらう。

 エマさんと俺は、コーヒーを頼んだ。


「それにしても、珍しい魔物を使役しているんだね~。

 確か、”月狼ムーンウルフ”だっけ?

 あと、少し小さいけどスライムかな?

 梟さんは、何の種類の魔物だろう……」


「”賢梟けんきょう”っていう魔物で、ソフィっていいます。

 こっちは"レアスライム"のクレムと、”月狼ムーンウルフ”のルナです」


「わ、名前も付けてるんだね!

 ”成長促進せいちょうそくしん”スキルのためじゃなく、愛称として名前を付けるなんて……。

 やっぱり魔物を大切にしているんだね」


 ”成長促進せいちょうそくしん”?

 初めて聞くスキルだ。

 それに、普通は魔物に名前を付けないのかな?


「大体の魔物使いって、1匹の使役が限界なのよ。

 使役対象が多いと、制御しきれないケースもあるらしくてね。

 ”念話ねんわ”で指示する対象も1匹しかいないから、名前を付けなくても困らないらしいの」


 それに、多くの魔物使いにとって使役した魔物は、道具というか武器みたいなものだから、と。


 大抵の魔物使いは、自身で戦えるほどの力が無いため、仕方なく魔物に頼った戦い方をしている。


 曰く、子供の魔物を使役し、戦わせながら成長させ、強くなりすぎたら使役を解除して……。

 を繰り返すのだとか。


 これは魔物使いとしても、苦渋の決断らしい。

 自身が弱いために選択肢が無く、止むを得ず、恐怖の象徴である魔物を従わせて戦うしかない。


「ちなみに”成長促進せいちょうそくしん”は、上位の魔物使いが持つ上級スキルのことよ。

 幾つか条件を満たしてスキルを使用すると、魔物を成長させることが出来るらしいの。


 条件の内容は私も分からないけど、確か、魔物に名前を付けることが条件の1つだった気がする」


 魔物を成長させるために名前を付ける人は聞いたことがあるけど、それ以外に、愛称として名前を付ける人は聞いたことなかったとのこと。


 うーん。

 でも、名前が無いと何だか寂しい感じがするんだよなぁ。

 ソフィっていう、身近な例がいるからかな?


「話が色々脱線しちゃってごめんね。

 実は私、魔物に興味があって勉強しているの。

 それで、魔物の知識を生かしたギルドの仕事も任されているのよ。


 とはいえ、まだまだ魔物の知識が浅くて……。

 仕事で色々苦戦している時に、アレンさんから、今年はセレノ村から魔物に詳しい子が来るって聞いたの。

 ギルドの仕事を手伝ってもらえないか、って話をしたら、アレンさんが色々調整してくれたみたいなの!」


 街や引っ越し先のこと、私が案内することを前提条件にね、と付け加えて。


 てことは、コルテーゼで仕事先が見つけられたのは、エマさんのおかげだったんだ。

 それに、アレンさんの力があってこそ、この街に来ることができた。

 俺が出来ることは、この人たちの恩に報いることだけだ。


 運ばれてきたコーヒーを少し飲んでから、席を立つ。


「俺、エマさんのおかげでコルテーゼに来れたんだ。

 凄く感謝してます!

 精一杯頑張るので、ギルドの仕事、是非お手伝いさせてください!」


 するとエマさんは、笑って握手をしてくれた。


 初めての街、初めての一人暮らしで不安もあるけど、迎え入れた人たちの力になれるよう頑張りたい。


 疲れたこともすっかり忘れ、俺は気合を入れなおしたのだった。

夢中になると、ついつい書きすぎてしまいますね……

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