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魔物使いは繋がりたい!  作者: のえる
魔物使い見習い編
7/32

街に行って挨拶をしよう

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 ”月狼ムーンウルフ”の事件から、約3年が経った。

 いやはや、あっという間の日々だった。

 

 ”月狼ムーンウルフ”に跨り、蓋が付いた透明な円筒ケースには、スライムを入れて腰に下げる。

 そして、肩の上には”賢梟けんきょう”ソフィを乗せて、日々を過ごす。


 3匹の魔物と共に、村や森を駆け抜ける俺の姿を見て、村の中では"魔物使いのメルタ"と呼ばれるようになっていた。

 何だかこそばゆい。


 昨日は、俺の15歳の誕生日だった。

 村の人たちと挨拶した後、誕生日を盛大に祝ってもらい、中にはお祝いのプレゼントをくれた人もいて。

 それはもう、本当に楽しい一日だった。


 村の仕来りに従い、今日から3年間、俺はコルテーゼという街で住むことになる。


 いざ街に向けてと、リュックを背負い、3匹の魔物と家沿いの道まで出る。

 すると、祖父母が見送りに来てくれた。


「荷物は持った?

 コルテーゼまでら、迷わずに行けそう?」


「バッチリだよ、ばあちゃん。

 それに、ソフィも付いてきてくれるしね。

 街まで、迷わず行けると思う!」


「メルタにとっては初めての街だな。

 18歳までの街生活、頑張ってきなさい」


「うん! じいちゃんも、調査隊の仕事頑張ってね!」


 祖父母と挨拶をした後、”月狼ムーンウルフ”に跨る。

 着替えよし、お金よし。

 街でお世話になる人へのお土産もばっちりだ。


「では、そろそろ行くとしようか。

 シャルル、サロン、メルタのことは任せておけ」


「お願いね、ソフィ。

 メルタ、身体には気を付けるのよ。

 コルテーゼに着いたら、お手紙送ってね」


「ありがとう!

 じいちゃん、ばあちゃん、身体には気を付けてね!

 それじゃあ、行ってくる!」


 跨っている”月狼ムーンウルフ”に合図をし、村を出発した。


 コルテーゼは、セレノ村の北西に位置する街だ。

 距離にして、約100 kmほどだろう。


 15歳になった村の子供は、コルテーゼとセレノ村を行き来する商人の馬車に相乗りして旅立つことがほとんどだ。

 最も、稀に歩いて向かう強者もいるらしいが。


 片や俺は、”月狼ムーンウルフ”に乗ってゆっくり街に向かう予定だ。

 

 村を出てしばらく走ると、カレメの森に入った。

 それから更に走り続けること30分、森を流れる川が見えてきた。


「(ルナ、少し休憩にしよう)」


 ”月狼ムーンウルフ”こと、ルナに向かって”念話ねんわ”を飛ばした。

 使役して間もなく、名前を付けたのだ。


 この3年間で、ルナはとても成長した。

 それは大きさだけじゃない。


「(ご主人! まだ私は走れるよ!)」


「(ああごめん、川を見つけたからちょっと寄りたくてさ。

 俺の休憩に付き合ってよ)」


 なんと、”念話ねんわ”越しであれば、ソフィと遜色無いぐらい会話が出来るようになったのだ。

 初めてルナと出来るようになったときの感動といったら……。


 そしてもう1匹。

 スライムが入ったケースの蓋を開ける。


「(クレム、喉乾いてないか?)」


「(……、……)」


 スライムのクレム。

 いつまでも魔物名で呼ぶのはちょっと寂しいなと思い、名前を付けた。


 会話こそできないが、こちらの言葉が分かる様子。

 ”念話ねんわ”を飛ばすと、ケースの蓋を開けて外に出るや否や、川に向かって跳ねていった。


 クレムは、川の水を吸収しているようだ。


「ね、ソフィ。

 ここからずっと道なりに進めば着くんだっけ?」


「うむ。

 しばらくはカレメの森の中じゃが、やがて草原が見え、街に着く。

 休憩しながらだとしても、このペースなら、あと3時間程度で到着するじゃろうな」


 ルナが本気を出せば1時間ぐらいで着くかもしれないが、乗っている俺やソフィのことを考え、ペースを抑えてくれている。


 最も、商人の馬車に比べれば断然早い。

 ギリギリまで村にいたとはいえ、待ち合わせの時間まで余裕があるだろう。


 今日は、人と会う約束をしている。

 これから3年間、コルテーゼでお世話になる人だ。


 そして、挨拶を終えた後は引っ越し先に移動し、買い物をして荷物を整える。

 翌日には、仕事の説明を受けることになっているはずだ。

 

 村長曰く、俺の受け入れ先を探すのは大変だったらしい。

 それもそうだろう。


 魔物と仲良くなりたい子です。

 3匹の魔物と一緒に暮らせる場所を探しています。

 スキルは魔物を使役することです。

 ……なんて条件の子供を受け入れてくれる人なんて、中々いないだろう。


 しかし、奇跡的に一人だけ、受け入れてくれる人が見つかったのだ。

 本当に、感謝しなきゃ。


「なんだか緊張するなぁ。

 ねぇソフィ、お世話になる人ってどんな人から知ってるんでしょ? 教えてよ〜」


「ほっほっほ、会ってからのお楽しみじゃよ」


 ソフィの知り合いらしいので、何度か聞いているのだが、

 いつもはぐらかされる。

 出来れば、優しい人が良いなぁ。


「ちぇ。ま、どっちにせよ今日会えるから良いか」


 ルナ、クレム、行こう!

 2匹に声を掛け、再び街に向かって走りだした。


 初めての街なんだ、楽しみは多いに越したことはないだろう。


    ◇


 あれから2時間ほど走り続けた。

 カレメの森を抜けると、目の前には見渡す限りの草原が広がった。


 遠くに見えた街は、近づくにつれ鮮明に姿を現していく。

 そしていよいよ、コルテーゼの入口に着いた。


「おおー、ようやく街に着いた!

 あれは、門番の人かな?」


 入口付近には、武装した2人組が立っている。

 街に怪しげな人が入らぬよう、責任ある仕事だと聞いた。


 最も、俺たちは問題無く入れるはずだ。

 なんせ、村長から街に入るための手形をもらってきたのだ。

 1人と魔物3匹の怪しい連中でも、この手形がきっと守ってくれる。


「手形をリュックから出してっと。

 あとは、ルナに首輪とリードを付けなきゃいけないんだっけ」


 使役している魔物の種類によっては、街の外で待ってもらうか、同伴するにしても首輪とリードを付けておく必要がある。

 街の人々を怖がらせないためのルールだ。


「ルナ、ごめんな。

 ちょっと我慢してくれよ~」


 首輪とリードは、祖母からもらったものだ。

 祖母が魔物使いだった頃、使役していた魔物に使っていたらしい。


 首輪は、魔物のサイズに合わせて伸縮するつくりになっている。

 つまり、魔物を苦しめず着けることが出来るのだ。

 これにリードを付ければ完成っと。


「(ご主人! これはプレゼントですか!?

 大事にします!)」


 あれ、喜んでくれている……。

 リードはともかく、首輪は付けっぱなしにしておこうかな。

 窮屈そうじゃないし、むしろ喜んでくれているのだ。

 取り上げるのも、何だか悪い気がする。


「これで準備バッチリだ。よし、街に入ろう!」


 皆を連れて門番のところに向かい、挨拶をする。


「すいませーん、セレノ村から引っ越してきた者ですー!」


「お、今年の子か! ようこそ、コルテーゼへ!」


「む?

 魔物を連れているな、君が例の魔物使いか」


 今、例のって言った?

 もしかして、噂になっているのかな……。


「今日からお世話になります!

 あの、アランって人に会いたいんですけど、どちらにいますか?

 村長からは、門番の人に聞けば分かるって言われてて……」


「アランさんか!

 街に入って中央の通りを突き進むと、ギルドと書かれた大きい建物が見える。

 ギルド本部という場所さ。

 アランさんは、そこにいるよ」


「分かりました、ありがとうございます!」


 ギルド?

 ギルドって、街を管理する組織のことだっけ?

 確か、困っている人から話を聞いて、報酬金を定めた後、依頼として冒険者に仲介する仕事もしていたはず。


「ギルド本部で会うってことは……。

 もしかして、依頼主さんとか?」


 明日からの説明って、依頼内容の説明ってこと?

 いやでも、依頼だとしたら、達成したら依頼主との関係はそれっきりになるはず。

 最も、別の任務で会うことになるかもしれないが。


 3年間継続して担当する仕事って考えると、多分違うよね?


 色々考えながら街の通りを歩いていく。

 村に比べると、もの凄い数の人だ。

 お店の規模も数も全然異なる。


 それにしても、やっぱり俺たち、見られているなぁ。

 村でもそうだったけど、魔物を連れ歩いていると人目を引いてしまう。

 

 コルテーゼにも、魔物使いはほとんどいないようだ。

 とはいえ、全くいないというわけじゃないらしい。

 中には、俺と同じく狼型の魔物を連れている人もいた。


「魔物使い同士、仲良くしたいな。

 うーん、どうすれば知り合えるんだろう」


「一番は、ギルドに聞くことじゃろうな。

 魔物使いの多くは、ギルドで冒険者登録をしておる。

 冒険者として、紹介してもらうことはできるじゃろう。

 最も、個人情報は教えられないがな」


 困ったときはギルドに聞くのが一番じゃと、ソフィが言う。


 この世界では、ギルドに自身の情報を登録している者が多い。

 名前や住所、年齢、使えるスキルや得意分野などをギルドに登録することで、街の中にある銀行が使えたり、冒険者として依頼を発注・受注したりが出来るようになる。


 セレノ村のような田舎ならともかく、コルテーゼのような街では、ギルドに登録された情報を元に、各種処理を行う場所が多いのだ。


 逆に言うと、もしギルドに自身の登録していない場合、各施設で諸々の手続きができず、生活に支障をきたしてしまう。


 俺はまだ、ギルドに情報を登録していない。

 ギルド本部に着いた後、合わせて登録手続きをした方が良いだろう。


「自分以外の魔物使いと話したこと無いからなぁ。

 よーし、ギルドに行ったら早速聞いてみよっと」


「その前に、やっておくべきことがあるじゃろう?

 アランに挨拶をしなくてはな。

 ほれ、もうギルド本部に着いたぞ」


 ソフィに言われて右を向くと、もの凄く大きな建物が立っていた。

 建物を出入りする人々が溢れている。

 上を見ると、建物にはギルドと書かれていた。


「凄いな、これがギルド本部か……。

 よし、入ってアランさんのこと聞かなくちゃ」


 入口からギルド本部に入ると、番号が書かれた紙を渡された。

 順番に番号が呼ばれているようだ。


 凄い数の受付窓口だが、冒険者と思われる人がそれ以上に多い。

 呼ばれるまで、まだまだ時間がかかりそう。


 しばらく様子を見ていると、俺の番号が呼ばれた。

 呼び出し元の受付窓口に向かうと、そこには綺麗な女性が立っていた。


「こんにちは! 番号札を頂戴しますね。

 本日はどういったご用件でしょうか?」


「えっと、セレノ村から来たメルタと言います。

 これからお世話になる、アランさんと約束をしていて……」


「あら、あなたがメルタ君ね!

 アランさんから話は聞いているわ、ちょっと待っててね」


 そう言って、女性は奥の方に行ってしまった。

 アランさんって、ひょっとしてギルド本部の人……?


 しばらくして、受付してくれた女性が男性を連れてこちらに戻ってきた。

 ガタイが良い大男だ。


「来たか、メルタ!

 コルテーゼのギルド長、アランだ。よろしくな!」


「よろしくお願いします!

 ……え、ギルド長?」


 この人、ギルド長って言った?

 ギルド長って、ギルドで一番偉い人だよね……?


「お前には明日から、ギルドの仕事を手伝ってもらうぞ。

 まぁ、冒険者代わりに依頼もある程度こなしてもらうがな。

 はっはっは!」


 え? え?

 戸惑う俺をよそに、アランは豪快に笑うのだった。


 名前:クレム

 種族:レアスライム

 スキル:

  伸縮しんしゅく

  ・体積を変え、身体を伸び縮みさせることができる。


 名前:ルナ

 種族:月狼ムーンウルフ

 スキル:

  念話ねんわ

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