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魔物使いは繋がりたい!  作者: のえる
魔物使い見習い編
6/32

魔物使いになろう

体長崩して、一日投稿できずでした……

お昼休み中に加筆できたので、投稿です!

 気が付くと、自分の部屋のベッドだった。

 身体を起こすと、魔物に噛まれた箇所が痛む。

 全体の倦怠感も酷い、熱が出ているようだ。

 でも良かった、生きている……。


「目を覚ましたか!」


 止まり木の上から、ソフィが声を上げる。

 その後、すぐに祖父母が部屋に飛び込んできた。

 ソフィが2人に"念話ねんわ"を飛ばしたのだろうか。


「メルタ!」


 祖母が僕を抱き締める。


「ばあちゃん、ごめん。

 僕、調査隊の約束を破って危険なことをしちゃった」


「分かってくれているのなら、私からは何も言わないわ。

 とにかく、無事で良かった……」


「大分無茶をしたようだな……。

 ゆっくり休みなさい」


 皆にどれだけ心配をかけてしまったのだろう。

 申し訳無さでいっぱいだ。


 聞くと、あの日から丸二日も寝ていたようだ。

 

 調査隊の約束を破るだけでなく、”森狼ボワウルフ”を逃がし、森に危険を残してしまった。

 その上、倒した”森狼ボワウルフ”も回収できていない。


 魔物の死体や血痕の匂いを嗅ぎ付け、新たな魔物が寄ってくる可能性だってある。

 僕が弱いせいだ。


 もっと強ければ、”森狼ボワウルフ”3匹を相手取り、新手にだって対応できたかもしれない。

 怪我を負わずに対処出来れば、魔物の死体を持ち帰ることが出来た。


 いやそもそも、”森狼ボワウルフ”を殺さず、捕まえる方法だって取れただろう。


「じいちゃん、カレメの森は今どうなっているの?」


 村人が入った結果、”森狼ボワウルフ”に襲われたりなんてしたら……。


「調査隊で確認中だ。

 森は当面、村人の立ち入りを禁止としているよ」


 良かった。

 自分のせいで他の人が傷ついたらと思うと、ぞっとする。


「メルタのせいじゃないさ。

 全ての”森狼ボワウルフ”に対処出来たとしても、近くに数匹隠れている可能性だってある。


 どちらにせよ、危険な魔物が現れた時点で、カレメの森は立ち入り禁止にしていた」


 ただ、調査隊の約束を破った罰として、当面は仕事の手伝いと稽古の量を増やすけどなと笑う。


 心の中を見透かされているようだ。

 もっと強くなりたい。

 そのためには、もっと特訓しなくちゃならない。


 自分の身も守れない奴が、魔物と仲良くなりたいなんて夢は語れないんだ。


「とにかく、今はゆっくり休みなさい。

 まだ12歳、子供なんだ。

 メルタは十分頑張っているよ、私が保証する。

 焦らなくて良い、今回の落ち度は全て私にある」


 それに、と祖父は続ける。


「落ち込むことばかりじゃない。

 メルタが頑張ったおかげで、救われた命がある。


 あの”月狼ムーンウルフ”は、お前が守ったのだろう?

 魔物を想う気持ち、行動で示すとは見事なものだよ」


 ……え?

 今、”月狼ムーンウルフ”が救われた、って言った?


「じいちゃん、”月狼ムーンウルフ”は助かったの?」


「ああ。

 ”月狼ムーンウルフ”も助けてやってくれと、ソフィが言うものでな。

 おばあちゃんに治療してもらったよ。

 今も家で保護している。

 落ち着いたら、一度様子を見に来ると良い」


「そうなんだ、良かった……。

 じいちゃん、ばあちゃん、ソフィ、本当にありがとう!」


 ソフィ、僕の代わりに事情を話してくれたんだ。


 安心したと同時に、またフラフラしてきた。

 うーん、まだ起き上がって行動するのは無理そうだな。


 もう少し寝るよ、と伝えた後、ベッドで再び眠りにつくのだった。


    ◇


 さらに1週間ほど経過すると、熱が大分引いてきた。

 傷はまだ痛むものの、車イスであれば移動できる。

 

 起床後、車イスに乗って祖父と一緒に祖母の元へ向かう。

 リビングには、大きなケージの中に”月狼ムーンウルフ”がいた。

 脚に包帯を巻いているが、元気そうだ。


 ”月狼ムーンウルフ”は僕に気付くと、身体を起こしてこっちを見つめた。

 しっぽを大きく振ってくれている。


「あらメルタ、大分元気になってきたようね」


 祖母が、こちらに気付いて話してくれる。


「”月狼ムーンウルフ”だけど、回復が凄く早いわ。

 さすがは魔物ね。

 ただ、ずっと元気が無かったのよ。

 それが、今メルタの姿を見て、急に元気が出てきたみたい」


 あなたが守ってくれたこと、分かっているのかもね、と付け加えた。


 汚れが落ちた”月狼ムーンウルフ”を見てみる。

 改めて、幻想的な魔物だと感じる。

 白い毛並みに青い瞳。

 まだ子供なのだろうか、体長は1mもないぐらいだ。


「この子、どうしてカレメの森にいたんだろう?

 ”月狼ムーンウルフ”って、山の上の方にいる魔物だよね?」


「多分、別の場所からカレメの森に逃げてきたのね。

 一番近い山だとしても、かなり距離があるわ。

 相当遠くから移動してきたのだと思う。」


 ”月狼ムーンウルフ”は、集団で生活する魔物だ。

 子供で1匹ということは、群れからはぐれてしまったのだろう。


 そして、カレメの森に逃げ込んだ。

 その結果、”森狼ボワウルフ”の縄張に入ってしまい、必死に抵抗していた、といったところか。


 心細かっただろうな……。


「あのさ、この”月狼ムーンウルフ”って、これからどうなるの?」


「ああ、そのことだが……。

 残念だが、処分をすることになるだろうな。


 カレメの森に返しても、また別の魔物に襲われるだろう。

 仮に生き延びたとしても、森の生態系を崩してしまう」


 祖父の言葉を聞いて唖然とする。

 そんな……。

 それじゃあ、何のために助けたんだ……


 いや、祖父母は俺のわがままを聞いてくれただけだ。

 ”月狼ムーンウルフ”が襲われている時、横から助けたのは僕じゃないか。


「おばあちゃんと話してな。

 一つだけ、この子が助かる道がある」


「え、そんな方法があるの?」


「ああ。メルタの魔物として、使役をするんだ」


 “野生の魔物”であれば、野生に返すか、処分をする必要がある。

 だが、”魔物使いが使役する魔物”であれば別だ。


「でも、15歳になるまでの間、僕が”魔物使役まものしえき”を使うのは禁止なんじゃ……」


「メルタはもう、”魔物使役まものしえき”のことをしっかり理解しているはずよ。

 だから大丈夫、私が保証するわ」


「ああ、おばあちゃんの言う通りだ。

 今のメルタなら問題ないと思うがな。


 さあ、どうする?

 今、”月狼ムーンウルフ”を救えるのは、お前だけだぞ?」


 マジか……。

 “魔物使役まものしえき”とはすなわち、魔物の命に責任を持つということ。


 大人になってから解禁だ!

 なんて思っていたけど、まさかこんなに早くスキルを使うことになるとは……。

 いや、覚悟を決めるしかない!


 気合を入れた後、僕は”月狼ムーンウルフ”が入ったケージに近付いた。


 “魔物使役まものしえき”は、大きく2種類存在する。


 1つは、”強制”。

 魔物に有無を言わさず、無理矢理使役する方法だ。


 対象の魔物よりも、魔物使いが圧倒的に強ければ行使できる。

 分かりやすい指標は、魔力量だろう。


 最も、魔物よりも圧倒的に強い魔物使いは、世の中には中々いないらしい。

 なので、この方法で使役出来るのは弱い魔物に限られる。


 それにそもそも、魔物使い自身が強いのなら魔物を使役せず、自分で戦えば良いのだから。

 ちなみに、僕が行ったスライムの使役は、こちらの方法が該当する。


 もう1つは、”友好”。

 魔物に認められて、合意のもと使役をするというものだ。


 ここでのポイントは、魔物と人間がどれだけ仲良くても、使役関係。

 つまりは、上下関係を作る必要があるということ。


 いざ戦闘となったとき、魔物使いと魔物の間で指示系統が明確になっていないと、大変なことになる。

 ただの仲良し関係では、命を懸けて相手を守るなど出来ないのだ。


 ちなみに魔物使いは、使役した魔物が成長した場合にも備えておく必要がある。

 噂だが、いくら”友好”で使役したとしても、魔物が強くなりすぎれば、制御が出来なくなるらしい。


 そうなる前に”使役解除しえきかいじょ”をしなければ、暴走した魔物によって自身はおろか、身の回りの人にも危険が及ぶのだ。


 最も、対象となる魔物が生息する地域に解放できないのであれば、人間の手で処分するしかない。


「よし、決めた。

 僕はこの”月狼ムーンウルフ”を元いた場所に返すよ。

 この子が安心して暮らせる場所を見つけるまで、責任を持つ!」


 そのためには、まず使役が出来るかを確認しないといけないんだけど……。


 ”月狼ムーンウルフ”の方に手を伸ばすと、鼻を近づけてスンスンしている。

 しばらくしてから、尻尾を振って、フンフン言っている様子だ。

 懐いてくれているのかな……?


 これなら、"友好"による使役ができるかも。


「(こっちにおいで、座って)」


 ”月狼ムーンウルフ”に”念話ねんわ”を飛ばす。

 言葉を理解したのか、ケージの端、僕の近くに座ってくれた。

 よし、やってみよう!


 ”月狼ムーンウルフ”に手を当てて、集中する。

 使役はスライム以来だが、この感じ、出来そうだ。


「スキル、『魔物使役まものしえき』!」


 僕の魔力が”月狼ムーンウルフ”に流れ込む。


「――使役を承認します」


 頭の中で声が響いた。

 使役は無事完了したようだ。


「(”月狼ムーンウルフ”、これからよろしくね!)」


 ”念話ねんわ”を送ると、目の前の”月狼ムーンウルフ”は、鳴いて返してくれた。


 かくして、スライムに続き2匹目の魔物を使役した僕は、本格的に魔物使いになれたのだった。


    ◇


 ここまででこの一日は終わったかと思ったんだけど……。

 部屋に戻ってから、更にまた、一波乱があった。


 なんと、スライムがビックリするぐらい小さくなっていた。


 まさか、僕が休んでいる間、魔草と水が無かったのか!?

 ソフィが面倒を見てくれていたと聞いていたのだが……。


「む?

 メルタがベッドで休んでいた期間、儂が代わりに魔草と水をケージに入れたはずじゃが」


 確かに、ケージの中にはソフィの魔力が宿った魔草が入っている。

 お皿には水も入っているが、減っていない。

 ダイエットってことも無いだろうし、どうしたんだろう。


「……ねぇソフィ。

 ソフィの魔力が宿った魔草って、ひょっとして不味いの?」


「失礼な、そんな訳ないじゃろう!」


 うーん。

 確かに、魔力コントロールが出来ていない頃、スライムは、ソフィに準備してもらった魔草を吸収していた。


 いや、ものは試しだ。


 新しく草を用意して僕の魔力を流し込み、ケージの中に置いた。

 すると、スライムがすぐにその魔草を吸収し始めた。


 僕はソフィを見つめた。


「そんなバカな!

 スライムが魔草の好き嫌いをするじゃと!?

 それもよりによって、儂の魔力を嫌うなど……」


 ソフィは納得していないようだが、僕の魔力が宿った魔草であれば食べてくれるようだ。


 ……そして、なんとなくだが。

 スライムがもっと魔草をちょうだい、と求めている気がする。

 草に魔力を込めて、ケージの中に入れて、を繰り返す。


「この子、一日でこんなに食べたかな」


 吸収する魔草の量が、明らかに増えている。

 ずっと魔草が無くて、お腹が空いていたのかな?


 しかし、身体は小さいままだった。

 足りないのかな?

 試しに”念話ねんわ”を送ってみる。


「(大きくなれー、元の大きさに戻れー)」


 なんてね。


 すると、スライムが反応し、元の大きさに戻った。

 え、”念話ねんわ”が通じた……?

 それに、大きさを自分で変えたのか……?


「これは……。

 信じられん、スライムが進化しておる……」


 ソフィ曰く、スライムが"レアスライム"に進化したらしい。


 よく見るのが"コモンスライム"だとしたら、"レアスライム"は、魔素が潤沢にある場所で発生する種族だ。


 スライムはスライムだが、能力が異なる。


 まず、ある程度身体の伸び縮みが出来ること。

 そして何より、蓄えられる魔力量がとても多いという違いがあるのだとか。


 2年間世話をし続けたが、なんで今になって進化したんだろう……。

 謎は深まるばかりだが、とにかく……。


 毎朝与える魔草の量が増えたことで、草に魔力を付与する日課がハードとなり、僕の特訓はより加速するのだった。


 名前:?

 種族:レアスライム

 スキル:?


 名前:?

 種族:月狼ムーンウルフ

 スキル:?


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― 新着の感想 ―
[一言]  いや、祖父母は俺のわがままを聞いてくれただけだ。”月狼ムーンウルフ”が襲われている時、横から助けたのは俺じゃないか。 ここだけ、僕じゃなく 俺 になってます。
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