91話 春でスキーって季節外れな気がするけど、楽しければいいよね!
ーーーエタン視点ーーーー
普段通り、学院で仕事をしていると一通の手紙が届く。赤い色の封蝋で止められており、それを丁寧に剥がすと、羊皮紙が姿を表す。
俺に送られてくる手紙は、大体縁談か、他国の貴族ぐらいだ。
また縁談の話か、もしくは他国の貴族からのお誘いか…と、最初は思っていた。
折り曲げられていた羊皮紙を開き、内容を確認すると、羽ペンで書かれたと思われ、黒いインクで綴られていた。
手紙の中身の内容からすると、デイヴィスの執筆だろうと思った。
なぜなら、封筒にはベルトア帝国…と丁寧に手紙を出した場所を記していたからだ。
ベルトアを知っているものは、ベルトア帝国付近の人間か、はたまたその国出身のものか。だが、俺はそこにいる奴らとは顔見知り程度であり、手紙を送るやりとりをするまで、親しい関係ではない。
旅に出していたデイヴィス一行からの、伝達だとすぐに分かるのは、そう言う事だ。
手紙内容はこうだ。
ベルトア帝国の帝王と、コンタクトをして欲しいです。
だった。どう言う意図でそう言う内容になったのかは、問いただしたい。だが、その方法は手紙でしかなく、尚且つベルトア帝国ならば、レーイルダからかなり遠い。
鳩の使者を送らせたとしても、約二ヶ月は故に超えるだろう。
と言うより、今はもう春だ。俺も23歳。レーイルダでは桜が満開に咲いている。と言うことは、これを書いたのが二月で、鳩か何かで送らせ、今やっと届いた。と言うわけだろう。
「と言うより、何がどうなってそう言う状況だ?」
疑問に思いつつ、確かめる方法はない。また二ヶ月かかる。それは十分に避けたいため、理由は問わず、即座に手紙を書く。鳩の使者を使わず、それよりも早く着く俺の使い魔であるライオンを使う。
「ケープ…この手紙をベルトア帝王に届けてくれ。分かるよな?」
「了解デス」
ケープは使い魔の中でも言葉を発する事ができる。そのため、ベルトア帝王に最後まで届けられると思い、召喚した。
「さて、デイヴィス。ベルトア帝王と何を話すのか…。逆鱗には触れるなよ。下手したら死ぬからさ」
そうならないように、願うばかりだ。そんな時、扉がノックされる。返事をすると扉が開かれ、そこには見知った顔が複数あった。
「………はぁ。しょうがないな」
この人たちの性格上、きっと追い出しても無駄だろうと感じた俺は、そのまま用事があるのか?と思いながら、話を交わした。
ーーーベルトア第一皇女ーーーーー
ものすごいスピードで走ってきたのは、一匹の虎だった。一体どこからやってきたのかと思いながら、その虎の首輪に挟まっていた、一つの紙を取り出す。
「えぇ、と。なんて書いてあるのかしら?」
紙には、綺麗な字で書かれている執筆と私のお父様———この国の帝王様に会いたいと言う手紙だった。
本来なら、無礼者!とか騒ぎ出すが、きちんと書かれた人の名前があった。
エタン・レーイルダ。レーイルダ家五男坊であるその人物は、私が好きな人である。
(エタン様からだわ!こうしちゃいられない!)
そう思い、急いでお父様に会いに行く。ライオンに関しては、渡した後はすぐさま帰った。
ーーーアルベール視点ーーーー
手紙を書き、鳩に咥えさせ、学院長に渡すようにレーイルダの方へ使者を出した。そんな日から二ヶ月が簡単に超えた。と言うことは、俺は三年生となる。三年生と言うことは、本来ならば学院に通い、後輩を迎え入れるんだろうが、生憎と学院長に言われたから、一度も戻っていない、学院に帰ることすら物理的に不可能だ。
(もう春じゃん)
毎日毎日返事を待つのみ。今日も再び外へ出かけようと私服に着替える。若干ここでの生活も慣れに慣れたもんだ。最初は異国の地へ足を踏み入れたときは、正直怖いと言う気持ちもあったが、エイダン達が付いて来てくれたおかげで、毎日が楽しい。と、思うようになっていた。
扉を開けようとした時、バッタリとイネスさん達に会う。
「あれ、どうかしたんですか?」
「そう言うアルベールこそ…」
互いに疑問符を浮かばせながら、リナさんが名案!みたいな顔をし、俺たちに提案してきた。
「なら、三人でどっか遊びに行かない?」
「………よし、そうしよう」
リナさんの案で一緒に外に出る事になった。二ヶ月経ち、ベルトア帝国の宿屋で二ヶ月住み、その間で魔獣騒動は未だに起こっているのは、普通に怖い。
外へ出て、その途中で買い物をしていたハンナさんに出会った。
「あ、おはようございます」
「おはよう。もう、四月だけどいいの?」
「まぁ、この国でのやる事がまだ起きてませんからね」
そう言うと、ハンナさんは目が点となる。首をコテンとし、曖昧に答えた。
その間俺たちは、四月であるはずなのに桜が咲いていない、ベルトア帝国でやるべき事が起こるまで、ここで待機をしなくちゃいけないのだ。
俺たちもベルトア帝国を存分に楽しんでいるのは、内緒である。それを学院長に知られれば、多分帰ってきた時が一番めんどくさい。
って言うより、学生が学業を放棄して、旅に出かけさせるって、それ自体おかしくないか?
って言うより、使い方荒くない?どんだけ大変な思いしたと思ってんの?多少の娯楽ぐらいいいじゃん。
なんて思う。これを学院長から文句を言われた時の、言い訳にするつもりだ。
「さ、最初はどこから行く?」
「うーん、スキー場に行ってみない?」
「うん、ちょっと待って?今、四月だよ?」
イネスさんのそんな図書館に寄ってみない?のノリで言わないでほしい。今、四月だよ?新たなシーズンだよ?なのになんで、冬の遊び?
と思っても、実際に楽しければいいかなぁ、と言う感じだ。
「それって……」
「うん?どうかした?リナ」
「冬に海に行くようなもんじゃない?」
純粋で行ったのか否や、確かに納得してしまった。俺たち……というより、俺の感覚は夏は海、冬は雪。と言った感覚だ。確かに春でスキーをするのは、季節外れな気がする。
「まぁ、いいんじゃない?ベルトア帝国の人たちは、四月でもスキーする人多いみたいだし」
と、なんとなくフォローする。リナさんのえ、そうなの?みたいな顔は、確かに同感してしまう。やべ、めちゃくちゃ気が合うじゃん。
(………クロードも誘えばよかったかな…)
あれからクロードとは、あまり話をしていない。多少気まずいと言うのもあるが、クロードの方が確実に俺を避けている。俺もいつか、クロードの想いに応えないといけないのだろう。
早めに返事をしなくちゃいけない。返事を遅らせてしまえば、クロードはきっと嫌な思いをするだろう。それがもし、俺に好きな人ができたと言うのなら、どう言う反応をするかはわからない。だけど、これと言ってそう言う人物はいない。
考える時間は沢山ある。そろそろ決めなくちゃならない。そんな時が———必ず来る。




