8話 少女二人
レーイルダ魔術学院では、桜
の花が散り、五月もあと少しで終わり、もうすぐで六月が始まる。
魔術学院の授業では、一年生は幻獣の召喚儀式を行なっている。
「まず、幻獣とは何かを説明するぞ。
幻獣には、様々な個体系が多く、大きさも様々だ。
そして、力も強いものや、弱いもの多数存在する。
そして、より上位な幻獣を、召喚するには自身の魔力量が有無を言う。
不死鳥の鳥や、東洋で伝えられている霊獣なんかも、条件に合えば召喚する事が可能だ。そして、召喚する事ができれば、その幻獣や霊獣達はお前らの使い魔となる」
幻獣召喚魔術及び、霊獣召喚魔術では、自身の魔力量で召喚される強さが違う。召喚獣担当の、ジュリアス・ミッドサは説明を続けた。
「じゃあ、召喚獣の儀式を教える。まずそこにナイフがあるだろ。召喚の儀式では、自身の“血”が必要だ。血で描いた魔法陣を描かれている通りに、描く。そして、こう唱えればいい。
『我の元に来たれし幻獣』
とな。まず俺がお手本を見せるから、よーく見ておけ」
ジュリアスは教壇に置かれている、ダガーナイフを手に取り、自身の指先を傷つけた。切れたところから、赤い液体の血が流れ滴れ、その血で魔法陣を描く。
「よし、これで完成…っと。じゃあ見とけよ。
『我の元に来たれし幻獣』」
そう唱えると、魔法陣が光り輝き、魔法陣の真ん中には、不死鳥が居た。業火に燃えたぎる真っ赤な色の不死鳥が。
「「おー!」」
クラスからは歓喜の声が鳴り響く。
(すげぇ、今じゃそんなことできんの?)
大魔導師のいた時代では、こんな魔法はなく、幻獣なんて存在もしていなかった。
「じゃあやってみろー」
気の抜けた声で言ったジュリアスは、生徒達がやっているのを、見ながら、回っていた。
(さて、俺もやりますか!)
まず、教科書で確認したアルベールは、形を覚え、それが終わったらダガーナイフで指先を傷つけ、血が滴れ、それで先ほど確認した魔法陣を生成する。
「おけ、出来た。で、あとは〜……」
杖を召喚し、目を瞑り、ジュリアスが言っていた詠唱をアルベールは呟く。
「『我の元に来たれし幻獣』」
詠唱を言うと、魔法陣はピカッー!と光、そこから幻獣が呼び出された。
「お、おぉ〜!」
アルベールの召喚した幻獣はカーパンクルだった。
「かわいい!先生!この子ってなんで言うんですか?」
「あぁ〜、それか。それはな、カーパンクルって言う幻獣だ」
「へぇー!」
小さいリスのような見た目をしているが、色は水色に近い色、額のところに赤い宝石があった。
(これならたくさん幻獣呼び出せるじゃん!)
と、仲間を増やして行こうとも思ったアルベールだが、一つだけ忘れていた。
「おかしいな」
「え………!?な、何がですか?」
「デイヴィスほどの奴なら、もっと上の幻獣を呼び出せるはず。もしくは、二年か三年で習う、聖獣、神獣を呼び出せるはずなのに………」
眉間に皺を寄せて、うーん、とジュリアスは唸っていた。
(やっば。下手したら魔力制御ができるってバレたら………。色んな意味で危うい!)
そう。もしバレてしまえば、色々と調査されかねない。
(いやいやいや、流石に俺が大魔導師なんて気づかないだろうから………。てか気づかないで。気づかれたりでもしたら、暗殺、抹殺、下手したら実験台にされかねない!)
アルベールは考えただけで、心臓がギュッとなる。今もあるはマールの心臓はバクバクとなっている。
「き、気のせいじゃないですか?」
「そうだな。多分気のせいだ。よし、じゃあ幻獣を呼び出せたら、名前をつけるといい。そうすれば、そいつらはお前らのことを主人と思い、言うことを聞いてくれるぞ」
アルベールの周りにいる、アルベールのクラスメイト達も、大小と幻獣を呼び出し、名前をどうするか考えていた。
(名前………名前………)
「あ、フォルディ………フォルディにしよう!」
アルベールはカーパンクルに“フォルディ”と名付けた。改め、フォルディはアルベールのことを主人として認識し、肩に乗り移った。
「おぉ、かわいい」
「デイヴィス、なんでそんな名前にしたんだ?」
「え、うーん………なんとなく………ですかね?」
「なんとなくか?」
「はい。なんかそう頭に降り立ちました」
フォルディは名前が気になったのか、ご機嫌良く、アルベールの頬をすりすりした。
「んわぁ、かわいい!」
アルベールはフォルディの可愛さに、胸を打たれ、我が子のように可愛がる。
幻獣の召喚授業が終わり、校舎内にある食堂に行く途中の廊下で、何やら揉めている連中を発見する。
(すごいやたらと絡まれるね。ここにいる人たち)
誰がいじめられているのか、確認するためその光景をじっと見つめていると、
「………………!?」
度肝を抜かれた。いや、それぐらいやばいと言うことだ。
「マジ?」
(いや、そんなの関係なしに………だな)
アルベールはその連中達の元へいく。
「やめなよ」
「あぁ?」
「何?あんた」
「そんなの関係ないだろ?だから2人をとっとと離してくんない?」
「ハァ?なんであたしらがあんたの言うこと聞かないと、いけないのよ!」
(なんだこいつ)
流石に腹が立ち、アルベールは無意識のうちに殺気がダダ漏れであった。
「これでもそう言うつもり?」
「「ヒィッ!」」
栗色の髪の男と桃色の髪の女は小さな悲鳴をあげ、その場から走り去っていった。
「ねぇ、平気?」
「あ、はい」
「ありがとうございます」
アルベールは胸元についているやつを、じっと見つめる。
「あ、あの……?なんですか?」
「え?あ、すいません。何でもないです。じゃあまた」
二人の元から去っていった。が、アルベールの様子がおかしい。去っていったとしても、何やらあの二人のことが頭から離れない。
(………あの二人の胸元にあったあの紋章………。あれって………えーと、どこだっけ。図書館で読んだんだけど………えーと………あっ!思い出した!)
十分ぐらい考えてると、答えに辿り着いた。先程あった黄緑色の髪をしている子、紫の髪をしている子の出身地。そして出達。
(あーあぁ、いじめてたあの二人は、学院から退学だろうな。もしくは、人生の終わりか………)
それほど、手を出しちゃいけない人物達であった。あの二人は———東側にある国、ユスフリカ王国の王家の人物。第一王女と第二王女であった———。