87話 ベルトア帝国付近 村
北の国が存在する場所———。
【ベルザワス大陸———ベルザワス高山】に存在する。
冬の季節じゃなくとも、雪が降りやすいそんな寒帯気候でツンドラ気候の場所にある国は、夏であろうと、0度行くか行かないかの絶妙ラインだ。
そんな道中のベルザワス高山は、観光地として有名な場所ではある。北国ではスキー場もあり、そこは恋人や家族が遊びに行く、観光スポット。整地されたスキー場では、毎年楽しそうな雰囲気に包まれていると言う。
この情報は、掲示板に貼られている情報だ。
(スキーか。やってみたいなぁ…)
スキーなんていう遊びは、一度もやったことがない。帝国出身の人間なら、北国に足を赴かない限り、スキーという競技はほとんど出来ないだろう。帝国では雪が降るか降らないか。雪が積もったとしても、帝国内でやることは出来ず、国の外に出れば、魔物に襲われる。その為、そんな事をするのは、物好きしかいないだろう。
俺はそんな事を思いながら、道中を歩む。
ーーーーーーー
その日から一ヶ月の時間が故に超えた。時間が経つのは早い。今や二月である。あと一ヶ月も経てば、この場にいる全員三年生となる。
(早い。めちゃくちゃ早い!)
時間が経つのが早いことに、未だ実感が湧かないが、今はそれよりも、だ。
「なんでこうなってるんだぁーーーーー!!」
状況が意味不明だ。
何がどうなっている?なんだこれ。ホントになんだこれ。
そう思いながら、坂を猛スピードで降る。
「本当になにこれぇーーーーー!!」
「意味がわからーーーーん!!」
木にぶつかりそうとなった。もちろん、危ないと分かっていたため、魔法で馬車自体を浮かばせ、俺たちは一斉に馬車から飛び降りる。
杖を召喚している暇はない為、慣れない手動魔法を使い、浮遊魔法を扱う。
魔法陣が俺の手に展開され、馬車もろとも小さく光る。浮遊魔法は発揮され、馬車は空中を浮遊していた。
事故にならずに済み、俺たち全員怪我はなかった。雪がクッションとなり、痛みは走らない。
「ふぅ、助かったぁ…」
「一体、何だったんだ…。てか、坂があるとか聞いてない…」
「そりゃあ、高山地帯なんだから、坂があるのは確かでしょ」
「……………死ぬかと思った」
それぞれ思ったことを溢し、俺はそれに共感する。何がどうなっているんだ、と問いたくなる。
「それよりも、ここって一体……」
「………この近くにあるみたいだぞ」
地図を見ながらそう言うディランに、みんなの視線が一斉に向く。その時に、俺は丈一郎さんが言っていたことを思い出す。
(そういや、北国付近には村があるんだっけ?そこへ行ってみるか)
「なら、近くを歩いてみないか?地図見ながら」
「それはいいけどさ、どこにいるか分からないのに?」
「それなら、俺が何とかするから大丈夫だ」
ディランの一言でみんなの士気が、上がる。
心強い。ディランに委ねよう。
そう思った。ディランは地理が得意。それに方向音痴でもない。それに頭もいい。雰囲気も大人だし、顔立ちも綺麗だし。
いや、それは関係ないか。
とにかく、俺たちはディランの後ろをついていった。ディランは地図を見ながら、近くに生えている木に、石で矢印を書いていく。
(へぇ、そう言うやり方あるんだ)
ディランのそんな行動を見ながら、俺はそう思った。俺からしてみたら、やる事やる事に新鮮味を感じる。と言うのは、不思議な事ではない。初めて見るその光景に置いていかれている。と言う思いも何となくはあるが、あまり気にしていない。
ーーーディラン視点ーーーー
地図を見ながら、行くとまさか辿り着くとは思っていなかった。俺たちの目の前にあるのは、至って普通の村である。畑があり、木造の家がポツポツとある感じだ。
そこにはもこもことした帽子を被り、防寒着で完全防寒している村人が家から出てくる。
「ーーーーーーー」
なんて言っているのだろうか。遠くにいる為、よく分からない。だが、明らかに俺たちに言っているのだろう。俺たちの姿を目視している。
「俺たちの方を見ていっているのかな?」
「多分そうじゃないかな?」
後ろからアルベールとクロードの声が聞こえてくる。たしかに俺たちの方を見て何かを言っているのは、確かだ。
ーーーアルベール視点ーーーー
そうすると、一人の青年が近づいてくる。村の住人だろうと、俺たちはそのまま立ち止まっていた。
「観光ですか?」
と、聞いてくる穏やかそうな声と、爽やかな笑顔を浮かべるその人を見て、歓迎されているのかと思ってしまう。
観光———では無いが、素直に答えた。
「いえ、北国に行きたくて…」
「あぁ、ベルトア帝国の方へ…」
ジュリオから聞いたことある、その単語に関して俺たちは疑問符を浮かべた。
「ベルトア帝国…とは?」
ディランがそう聞くと、その青年は目を見開かせる。まるで「え、知らないのか?」と思っているかのような、そんな顔を。
ベルトア帝国?帝国はレーイルダだけなんじゃ…。
とも思った。なぜなら、帝国がつく国なんて、レーイルダしか思い浮かばない。
「ベルトア帝国と言うのは、北国にある国の名前です。昔から文明が栄えており、そこにはスキー場もあるそんな雪国なんですよ」
そう丁寧に説明された為、納得する。だが、聞いたことないと言うのは、不思議で仕方ない。ベルトア帝国と言うのは、誰も口にしていないからだ。したと言うのならば、ジュリオぐらい。
「みなさんはどこから来たんですか?」
「え?あぁ、えっと。元々はレーイルダ帝国からの方なんですよ。それでオーラドピアの方から」
「あー、なるほど。そう言うことですか。なら、中央大陸であるレーイルダ大陸では親しみのない、名前ですね。元々、ベルトア帝国と言うのは、【北国】もしくは、【雪国】と言うふうに呼称で呼ばれているのです。その為、本来の国の名前を存じ上げているものは、この辺あたりの人間、またはこの辺り出身のものだけです。ですが、この辺地域の人間でも、その呼称で呼ぶ人の方が多いですけどね」
と、またもや丁寧に説明を受ける。その為、この村出身である丈一郎さんが口にしないのは、そう言うことなのか、と感じ取れた。
「なるほど…」
納得した上で、俺はもう一つのことを聞く。
「あの、一ついいですか?」
「何でしょうか?」
「ルーロシ帝国と言うのは、知っていますか?」
そう聞くと、「あぁ」と言った声を出す。何か知っているかのようだった。
「ルーロシ帝国ですね。それなら、皆さんも見たことあると思います。ここへ行く道中に雲から顔を出していた天空にある浮いているものが」
「…………もしかして」
ここにくる道中、約二ヶ月前のことだ。馬車を走らせていた時に、久々に晴天だった時。その時に雲から顔を出していた空中に浮いている物体が。あれは何なのだろうと、疑問に思いながら、馬車を走らせていたのだ。
つまり、あれがルーロシ帝国。と言うことになるのだろう。
「正式名称はルーロシ天空帝国。神界に近いとされている国なんです。あれは、魔導回路の力を使い、宙に浮いているのです。あー言ったものは、昔から古代文明が使われていたとされているんですよ」
そう言われ、また納得してしまう。つまりは、古代文明で栄えていた時に、そう言った国が作られ、今も健在に浮いている。と言うのだろう。
「へぇ、初めて聞いたなぁ」
(俺も)
一応ではあるが、俺も一万年前の人間だ。そのため、この時代の人からしたら、古代人ともなる。だが、ああ言う国があるとは、思いもよらなかった。
「ともかく、お寒いので一晩どうですか?」
そんな事を言われ、俺たちは顔を見合わせる。確かに今は猛烈に寒い。防寒着では中々暖まらない。なら、この辺りの地域で住み慣れた人たちの家に、お邪魔した方がいいのではないかと、俺たちはそう感じる。その為、お言葉に甘え、家の中に入った。




