84話 北の国へ行く道中
暑い国、オーラドピア共和国に一週間滞在した。疲れた体は回復し、いよいよ北の国の方へ行く。だいぶ遠い北の国へ出発する為、馬車へ乗ろうと思うも、馬車は壊れ、馬もいない。
それを見兼ねたオーラドピアの大統領が、用意をしてくれたのだ。あんな優しそうな人の先祖が、殺人鬼の血が繋がっているとは、思えないほどだ。
馬と馬車を用意してもらった後、サルヴァとジュリオに挨拶をするため、全員で出向いた。俺はサルヴァ達にお礼を言った後、旅の準備を行う。ボロボロとなった服を仕立て屋の人が、仕立て直してくれて、更に機能をつけてくれた。
それに、制服とは別に新たな衣服を用意してくれた。全員の衣服を用意してくれたため、銀三枚を渡す。
俺たち男子組はシャツの上から、外套を着る。防寒着ともなる外套はエイダンとライアン、ディランが着ているが、俺は雪さんから繕って貰ったダッフルコートを着る。
女子組は制服の上着から、同じダッフルコートを着ている。
下準備である。
俺はダッフルコートの上から、ベルトをつけ、そこから銃と剣を納める。
戦闘準備も加えた格好で、俺たちはいよいよ馬車に乗り、北の国へ行く準備をする。
(さてと。そろそろ行かなくちゃ。今度こそは、これを無くさないようにしなくちゃ……)
首に出ている炎の晶石を掌に乗せ、日の光でピカリと光っていた。
「じゃ、アルベール。良い旅を」
「………あはは、そうなるように祈るばかりだけどね」
苦笑をし、馬車の手綱を掴む。新品な馬車と新たな馬と共に、再び魔獣騒動&炎の晶石が作られたとされる北の国へ行く事を決行させる。
「じゃあね〜!」
俺たちはサルヴァとジュリオに手を振り、オーラドピア共和国の門を出て行く。
北の国へ行く道中、時間は流れる。一ヶ月も経てば、風景はガラリと変わり、白銀の景色となった。つまりは雪が降っているのだ。雪が降り、肌寒い。防寒着を繕ってくれたオーラドピアの仕立て屋の人には、お礼を言わなくちゃいけない。
(それでも………寒い)
ダッフルコートを着ていたとしても、やはり肌寒さを感じる。俺はディランと共に地図を確認し、距離などを大まかで計算していた。
「———今ここだから、後もう少しで」
「———あぁ、そうだな。なら、時間は」
二人で話し合っている時、ライアンが馬を運転してくれていた。一ヶ月も馬車で走ればまぁまぁ疲れるものだ。だが、オーラドピアに売っていた栄養素を摂取し、何とか持ち堪えている。
「それにしても………鼻がムズムズする……」
こんだけ寒ければ、鼻水が出るのも仕方がない。イネスさんやリナさんもくしゃみをしており、それが伝染するかのように、その場にいる皆が次々とくしゃみをしてしまう。
「だけど、防寒着あっただけでもよかったよね。もしなかったら、多分ここまで来れてないよ」
「うんうん、確かに」
「ねぇ、ディラン。後どれくらい?」
「まだまだ」
そう会話するが耳に入ってくる。エイダンはエイダンで、何かをしていた。その様子をこっそり見ると、そこには魔導書の本をじっくりと見ていたエイダンがいた。俺たちに背中を見せて、一人で勉強をしていた。
「勉強?」
不意に声をかけたため、エイダンは後ろを慌てて振り向く。声も裏返っていて、それだけ焦っていたのかが様子から分かった。
「ま、まぁ。勉強だな。それにしても寒いなぁ」
周りは白い霧で覆われており、地元民じゃなければ、中々目が慣れる事はない。
馬車を停止させ、今日はこの場で終了させた。あたりに小屋などはなく、おそらく人里から離れた場所だろう。
そして吹雪が収まった時、その時はもう夜中だった。見張り担当だった俺は、久しぶりに長い夜を体験する。
吹雪が収まった景色は、まさに幻想的だ。雪が積もり、そして空には綺麗な星々が並んでいる。月は青白く光、大きく感じる。
ふと手を伸ばし、掴めそうな程だった。だが、雪のひんやりさがある。それに花が咲いていた。
(これは———………待雪草か…。初めて見るな)
白い花が咲いており、その上には深々とした雪が積もっていた。
(ふぅ…。雪が積もっている場所から、星を見ると輝きが増しているな。いや、それはあたりが暗いからか)
星が輝く空と、白銀の世界。そしてその中にバチバチと燃えたぎっている焚き火の炎。
(明日からまた頑張らないと…。俺には、やるべき事がある…。魔獣騒動と、炎の晶石の在処。そして、マーティナの事。きっと北の国に何かがあるはずだ…。それを確かめるために、俺は生まれ変わった……。ふっ、なんて、そんなはずないか)
心中でそう思いながら、俺は焚き火をじっと見ていた。
焚き火の暖かさが、俺の方へ来る。
そしてまた明日———。




