表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/99

81話 黒虎

(なんで見つからない?サルヴァもその体も…)


神殿を探すも、サルヴァの姿やその体を見つけることができなかった。

体力と気力を消費していくだけで、なんの手がかりも見つけられない。途中で出会ったイネスと探しにいくアルベールたちは、それでも暗中模索する。


(一体、どこに居るんだ……?くそ、なんで見当たらない……。ルフレも知らないっていってたし……)


虫の知らせを感じるアルベール達は、そう感じた。なんの根拠もないはずなのに、胸元がざわつき始める。必死に呼び叫び、神殿の中ではそんな反響が響く。


そんな中、アルベールが首元にかけていた炎の晶石が、赤く光を放つ。何かが共鳴しているのか。炎の晶石の光は、次第に強くなっていく。

神殿は大きく揺れるように、地鳴りが鳴り、足元が不安定となる。何が起きているのか、さっぱりと分からないその光景に、ただ悲観するだけだった。


(何が起こっている…?そしてこの地鳴り……。ルフレと戦った時に起こる前に、なった地鳴りに似ている……。誰かがそうしているのか……?)


「なに…?なにが起こっているの?」


「サルヴァが危ない……」


まだ神殿にサルヴァトーレが居るかも、と感じたジュリオはサルヴァトーレの名前を、必死に呼ぶ。だが、彼からの声が聞こえることは無かった。


「サルヴァぁ!!」


「このままじゃ、下手したら神殿が崩れそう…。一旦戻らないと……!」


イネスはそう言う。確かにイネスの言う通りではある。だが、親友を見つけていなくて、そのまま帰ってしまうその心情。それはとても辛いこと。アルベールはそんなモヤモヤの中で、どうするか考えてしまう。


「このままサルヴァを置いて帰れないよ!サルヴァは……僕の友人なんだ!だから、だから、サルヴァを連れて帰らないと!!」


ジュリオの放った気持ちで、歪んでしまう。どうすればいいのか…と。

このままじゃ、神殿が崩れそうな、そんな予感までもして来た。そしてここは海の中。危険な魚だっている。どっちにしろこのままじゃお陀仏になるのは、火を見るよりも明らか。と言う状況だった。


(………どうすればいい。どこにいる。サルヴァ。せっかく君の友人を見つけたんだぞ。なのに、なんで見つからない……!!サルヴァ………)


心の中で必死に文句を言っていた。どうすれば、どうすれば!!と、アルベールは深く考える。


さらに、そんな状況に追い討ちをかけてくるのは、崩壊しそうな神殿だ。

まずい、直感でこの場にいる皆はそう考えた。


(そもそも、炎の晶石が光っているのは、魔波を検知してじゃないのか?ここに魔物はいない。なら、なぜ……。

———魔物がいない?どう考えたっておかしいだろ!って言うことはまさか………どこかで魔波を検知しているのか?そこに行けば———………もしかしたら)


一つのことを思い浮かんだアルベールは、崩壊しそうな神殿の中を走る。もしかしたら、と言う想定で。


「アルベール!?どこ行くの!」


アルベールが突然駆け出したことにより、イネスにジュリオは慌てて、アルベールの後ろ姿を追いかける。









突然姿を消したサルヴァトーレは、暗闇の中に一人で立っていた。

忽然と消えた、その彼の瞳にはなにも映っていない。何が起きているのか。誰が想像できるのか?誰にも想像できない。彼の片手にはズタズタに引き裂かれた、写真があった。

刃物で切り裂いたものなのか、その痕跡がはっきりと分かった。


「どうシて?あまりにもヘンだ…」


そう呟くサルヴァトーレは、無虚の目となっていた。心が空っぽになったような、そんな死んだ魚のような目。


サルヴァトーレの体は、徐々に黒く染められていた。それがどんな感情なのか。サルヴァトーレは分からない。誰にも分からない。そんな感情こそ、闇に紛れ込んだのだ。


『サルヴァぁ!!』


誰かが彼の名前を呼ぶ。それは、彼にとって聴き慣れたはずの声だ。その声にサルヴァトーレは、


「………ジュリお?」


親友の名前を呼ぶ。ジュリオ・レアンルドシ。ジュリオの名前を知っている。幼い頃からの幼馴染。そんなジュリオの顔を、姿を、声を、匂いを思い出し、そしてなぜ自分がここに居るのかを、疑問に思い始めた。


「ここは、いったい…」


そして何かの呻き声も聞こえてくる。サルヴァトーレの顔に、何やらベタつく液体が降って来た。そして臭い。


「な、なんだ……これ」


光魔法を放ち、空間に光を灯らせた。視界がだんだんと分かって来た時、そこは大きな部屋の中央部分に立っていた。ここが海の中にある神殿とは想像もつかないほど、大きな部屋。

そしてサルヴァトーレの体を覆い尽くすほどの、大きな影。上を見上げると、そこには大きな体をし、黒をベースとした体に、白色の毛並みが混じっている。その姿は【黒虎】だ。


「………う、嘘」


秋の象徴、【白虎】とは正反対な色の【黒虎】


「………ま、まじかよ………に、逃げなきゃ………!!」


その巨体な虎に足元を掬われそうなほど、度肝を吐かれていた。入り口らしき扉を開けようとするも、何かが引っかかっているのか、扉は開かない。

黒虎はサルヴァトーレを獲物と思っているのか、その巨体な体が、大きな足で確実に距離を詰めてくる。

それを避け、黒虎は扉らしき場所に激突する。


だが、それは運が良かったのか、扉の方から走る足音が聞こえてくる。

靴の確実な歩幅を走る音が。おそらく、さっきの激突した音で、“偶然”に近くにいた誰かが走って来たのだろう。


扉を必死に叩き、そこから声が漏れ出る。


「サルヴァ!サルヴァ!!」


「………!ジュリオ!!」


サルヴァトーレの友人、ジュリオの声だった。


「扉が開かない………!!どうしよう………。サルヴァ、そこで何が起こってるの!?」


「黒い虎に追われているんだ!!」


「…………黒い虎…?」


ジュリオとは別の声が聞こえてくる。だが、それにもサルヴァトーレは聞き覚えがあった。その声は、大魔導師アーベルの声。


「…………!アルベール!」


だが、今は庶民アルベールである事を、サルヴァトーレは知っている。アルベールの正体を知っている、数少ない人物という事を。


外から物音が聞こえてくる。それは炎のバチバチ音だ。

それが鳴り止むと、それと同時に扉が開かれる。そして扉の隙間からは、炎の光が強く光っていた。

その光に遮られた視覚で、見えなくなった黒虎は、その光に圧倒されていた。


「大丈夫か!?サルヴァ!!」


「ジュリオ、無事なのか!?」


「あぁ、僕は無事だ。ともかく、何が起きているのか、説明してほしい!」


説明を求めるジュリオであるが、それを遮ったのは、紛れもないアルベールだ。


「今は、そんな事をしている場合じゃなさそうだ」


「えぇ、そうね。黒虎が再び動き出しそうだわ」


続いてイネスが言う。二人の判断は確かに正しいものだった。だが、ここで不安が生じる。それは、イネスの魔力はあまり回復していないと言う事。戦えるのは、アルベール、ジュリオ、サルヴァトーレの三人となる。だが———、


「イネスさん、これを使って」


アルベールが召喚したのは、東側に位置するユスフリカ王国よりも、さらに東側の国。そこで作ってもらった黒椿だ。


「………うん、ありがとう」


武器を手にしたイネスは、魔力があまりなくとも、戦えることができるようになった。そのため、前に立ちはだかる黒虎を相手にするには、十分な戦略層である。


四人の顔は、剣幕そのもので黒虎を睨んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ