74話 異常な猛暑
南の国であるオーラドピア共和国は、十一月なはずなのに、猛暑に襲われていた。これが本来な共和国と感じたが、街の人たちの様子はおかしい。
「なんだ、これ……」
「わからない。ねぇ、何が起こってるの?」
サルヴァトーレに聞くイネスだが、サルヴァトーレは黙ったまま俯いた。
それに不審を感じたアルベールは、彼に聞いた。
「ねぇ、どうしたんだ?」
そう聞くと、サルヴァトーレは震える声で答える。それは———。
「あいつらかもしれない……。影族だ」
「それって、親友が捕らえた奴ら……だよな?」
「あぁ。もしかしたら、そいつらかもしれない……」
「でも、この気温に関しては、自然でしょ?」
イネスと同じことを考えたアルベールだが、サルヴァトーレは首を横に振った。
“違う”と訴えかけているように。
「場所を変えよう」
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場所を変えたアルベールたちは、サルヴァトーレに問いかける。
“一体、何が起こっているのか?”と。
もう一度震える声で、サルヴァトーレは答えた。
「あいつらの中に、天候を操る事ができる、いわゆるチートな奴がいるんだ。そいつらは、毎年共和国の気温を上げ、死者を起こす。それは、必要な事だと……。あいつらは言っていた。何やら、共和国にいる人たちの魂を集め、世界を終焉に迎えるんだと」
「……はっ?」
サルヴァトーレの言っている事が、意味不明だった。アルベールたちは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をし、頭の整理が追いつかなかった。
「魂を集めて、終焉を迎える?」
「あぁ、そのためにあいつらはジュリオを人質に取った。俺は、そいつらに命令されて、人を殺すように命令された………」
「だから、私たちを襲った……って事?」
「あぁ、本当にすまない」
もう一度深々と頭を下げるサルヴァトーレの様子を見た、アルベールたちは、“気にしなくていい”と答える。だが、サルヴァトーレは血相を変えて、アルベールの胸元を掴み、
「なんでそんなこと言えんだよ!!俺は、お前らを殺そうとしたんだぞ!?それなのに、気にしなくていい?!お前らは、俺を叱る権利があるんだ!!ぶっ叩く事ができるんだ!!なのに、どうしてやらない!!俺の事情を知って同情しているのか!?」
怒鳴る声でアルベールに問うサルヴァトーレの肩に、手を置いたアルベールは、もう片手でサルヴァトーレの頬を殴った。
「同情なんてしてない!言っただろう?お前は、俺の友達に似てるって!!誰かを守るために自分の命を犠牲にしたあいつに似てるって!!だから、放っておけないって!!同情も、多少はしているかもしれない。だけど、殺そうとしたことに関しても、最初は警戒した。何を考えているんだ。って。だけど、お前はお前なりの考えがあった!!命令に従わなければ、その親友が殺されるって!!だけど、俺たちは俺たちを殺そうとしたことなんて、今はどうでもいいんだ。今は、お前と、その親友を助ける事が、大事だって言っただろ?」
アルベールも血相を変え、怒鳴る。それは彼の心内にあったことを、必死に伝えた。
猛暑の中、怒鳴ったりしたため、汗が流れる。
アルベールたちに取って、自分たちを殺そうとした人物のことなんて、今どうだっていいって。今は、一人の“友達”として彼らは見ている。
「私も……同じ考え。だから、気にしないで?一緒に助けようよ。その人を。その人をそんな人たちから取り返そう」
「………………ッ……なんなんだよ……ッ………お前らッ……」
そう泣きながら、涙を拭う彼の姿が目に入る。おそらく、一人で抱え、一人で助けるつもりだったんだろう。そんな彼の姿を見たアルベールは、彼が、本当は友達想いのいい奴だっていう事が、改めて認識される。
そう。その姿はライリーに似ていたことから。
おそらく、同情の気持ちも多少は混ざっているだろう。だが、今度こそ失いたく無い。そんな気持ち心を駆られる。
今度こそ、死人を出したく無いために。




