70話 コカトリス
瞬く間に轟音が鳴り響いた。足場は不安定となり、立っていられるのが、困難なほど。
後ろからの呻き声。後ろからの羽ばたく音。元凶は後ろから始まっている。
鶏のような見た目、尻尾は蛇、空飛ぶそいつの名前は———“コカトリス”。
(なっ——!?)
コカトリスの特徴は、視線と吐く吐息には猛毒があり、近寄った生き物には死をもたらす怪物。バジリスクと同じ性質を持っているのだ。
「フフフッ!アハハハッ!アーハッハハハハハ!」
コカトリスを出したであろう元凶は、黒い影を持つ人物。その影は徐々に薄くなり、顔などがはっきり分かるようになってきた。
「さぁ、コカトリスよ…。その者達を殺したまえ!!」
そいつの掛け声と共に、コカトリスは大きく上昇し、鶏の鳴き声を発した。
(まずい……、視線を合わせたり、吐息に当たれば………死ぬ!)
遠距離魔法でしか、コカトリスを倒す方法はなかった。上へと上昇するコカトリスは、大きく叫ぶ。
まずい!と予感をし、イネスさんを連れて壁に身を隠した。隙を見つけない限り、倒すことは不可能。焦れば、死ぬだけ。チャンスを待たない限り、どうすることもできない……!
「ねぇ、どうする?」
「とにかく、隙を見つけないと」
小声で発し、確認する。相手の行動パターン、攻撃パターン、それら全てを見ない限り、倒す策は思いつかない。
(………………何か、遠距離魔法は………)
頭を押さえ、大魔導師であったときに、勉強した魔法の数々を思い出すこと。
(くそっ、マーティナのことが何か分かれば、ある程度の記憶の回路は出来ていたのに………!)
希望なしで、この状況だ。一つだけ方法があるのだとしたら………。
(………行動制限!!)
行動を制限させる目に見えない、糸にて拘束することができる魔法。今じゃ知る人はいなく、知っている人物がいるとすれば……。
その人は“考古学”の人物だけだろう。なぜなら、古代魔法の一種。
1万年前に確実に存在した魔法。それを使うことができれば、
(ある程度の時間稼ぎになる……!!)
それが終わった後は、解析魔法。
解析魔法も古代魔法の一種であり、知る人は居ない。
解析魔法は、弱点を知らせてくれる魔法だ。
大魔導師がいた時代では、古代文明なんてものは無く。原理を含め、どういう回路が繋がっているのかは、不明だが大魔導師の愛用していた、解析の瞳を使えば、弱点を知ることができる…。
(なんで今のいままで気づかなかったんだろうな………!)
そしてそれが終わり次第は、得意魔法でのお終い。
「イネスさん、よく聞いて」
先程考えた作戦を、イネスさんに伝えると止められた。
「そんなの危険すぎるよ!相手はコカトリス!いくらなんでも無理だよ!」
「………じゃあ、このまま死ぬまで待ってていいの?」
「………それは………っ」
「このまま、ここでジッと待ってると、相手の思う壺だ。相手がどちら様なのか知らないけど………。どっちにしろ、このままだったら死ぬんだよ。
なら、戦って生きれる確率が上がった方が、ぜってぇ良いに決まってる。相手がどちら様なのか、気になるしな」
(これはきっとエゴだ。だからこうするんだと思う。これ以上、相手の好きにはさせねぇからな)
物陰から飛び出し、コカトリスはこちらを向いた。だが———
「ふっ、聞かないぜ?お前の毒なんて」
(行動制限は、さっきから発動させてたからな)
「何!?なぜ効かない!!」
「さぁ?なんでだと思う?」
「クソが!!やっちまえ!!コカトリス!!!」
望遠鏡付きの眼鏡を装着し、目に見えない糸にて拘束されているコカトリスは、藻搔いていた。
それを隙にコカトリスの弱点を見つける。望遠鏡で距離を変え、一番効く場所…。それは———“心臓”だ。
(生物の多くが死ぬ、心臓。そこを狙えば、終わる………!!)
杖を召喚し、得意魔法の詠唱を唱える。
「『我の元へと来る、数多の灯火。幾つものを切り裂いた、遍く志。それは幾多で味わう残酷の死に様。それは、きっと訪れる死を表す。切断』!!」
現れる上下に魔法陣。そこから誘われる鋭き剣。コカトリスを切り裂いた剣は、そのまま空間へと帰り、コカトリスは灰となる。
驚きを隠せないその人物は、尋ねてきた。
「お前………何者なんだよ………!!!」
「さぁ?そもそも、あんたが誰なのか、教えられてないしね?まぁ、教えられたところだとしても、教えてあげない。これは、おそらく、永遠に閉ざされる秘密のようなものだから」
そう告げた。大魔導師はきっと時の旅人になるだろう。
「あ、そうだ。出口どこ?」
一番重要なことを聞くのを忘れていた。もう敵わないと感じたのか、あっさりと教えてくれた。
エレベータらしきもので、上に上昇することができるらしい。
そこは二人……いや、“三人”で乗り上へと上昇する。
「なんであんたまで来てんの?」
「いや、なんとなく」
「………えー………」
何故かそいつ自身まで付いてきていた。そして、上へ到達した時、そこは驚愕の風景だった。どんな原理を催したのか、それとも未知の魔法なのか…。
考えてもキリは無かったが、このまま到達することができた。
そう。“南の国”へと。
いち早く辿り着けたのだった。




