69話 影の人物達
歩いて行った先、壁が立ちはだかる。光の玉は壁をすり抜け、俺たちはどうすればいいのか、分からなかった。
「何か、仕掛けがある……とか?」
「ありそう……」
イネスさんの見所として、行き止まりの壁を色々と触っていると、一つの魔石らしきものがあった。
間違いなく、これに何かをすれば仕掛けが開かれると見込み、全属性の魔法を放つ。だが、反応は一切なし。
「えー?違うの?」
腕につけているブレスレットは、どうかと思いブレスレットについてある魔石を、仕掛けに当てる。そうすると、眩い光が放たれた。
「ぐっ………!!」
目を塞ぐほど、強い光が暗い渓谷の下を照らす。それは神々しい光が、辺りに物凄いスピードで光が放たれる。
「ぐっ…………」
目を少しずつ開けると、先程の光は目の前にはなく、後ろを振り向くと、まだ後ろの方では光が放っていた。
前を向くと、魔石のある仕掛けから青く光る一線が、一直線で上の方へと行く。その衝撃で何もなかったはずの壁には、亀裂が走り、扉状となる。
重い壁が自動で開かれ、その中には広大な景色が広がっていた。
「な、なんだこれ……!?」
目の前に広がる光景は、驚くほどのものであった。上には青空が広がり、下には自然の光景が広がっていた。まるで俺たちが落ちる前までに、広がっていた景色そのものだった。
「まるで………地上に広がっている景色みたい………」
イネスさんも驚く顔で、そう言った。どのような原理でこうなっているのか。幻でも見ているのか。そう思うほど、驚愕的な光景だった。
「………すごい…。幻想的な景色………」
見惚れてしまうほどの光景だ。誘われるかのように、足を踏み入れる。
(………………!?)
魔法の波動が肌にピリピリつく。先程まで見惚れていた気持ちが、吹っ飛ぶほどだった。
「な、何……?」
どこから放たれているのか、辺りを見渡すと、イネスさんの影が大きくなる。ジッと見ていると、その影から謎な人物が現れた。
「………!?イネスさん!!」
「………え……?」
その影に包まれている人物は、ロープを握っていた。
心がざわめき始める。急いでイネスさんから離すために、行動するが後ろからも気配を感じた。
(………なっ!?まさかの………二人!?)
俺の影からも黒い人物が現れる。ニヤリと笑うその人物から感じ取れたのは、間違いなく殺意だ。
「ぐっ!」
片手に持っているであろうハンカチで、口を押さえられ、抵抗できないと測ったのか、ドスの聞いた笑い声が発せられる。
(俺を———大魔導師を舐めるんじゃねぇよ………!!)
足でお腹部分を思いっきり蹴り、狼狽えている間に杖を召喚、そして無詠唱で風魔法を放った。
「ぐはっ!」
思いっきり吹き飛ばされた相手は、地面に思いっきり頭を撃ち、動かなくなった。
「さぁ、イネスさんから手を離してくんない?」
「ぐっ……!」
表情はわからないが、間違いなく俺を睨んでいるだろう。大魔導師の本来の力を知らない相手からしたら、厄介な魔法。
「………だめ………!アルベール」
掠れる声で必死に止めるイネスさん。そしてニッと不敵な笑みを浮かべる黒い人物。俺の足元には赤く光る魔法陣が描かれていた。
(いつの間に………)
特に焦る表情は見せない。俺はそのままイネスさんの方に杖を向ける。
(………………この魔法陣は攻撃魔法類………だろうな。それを消すためには………)
魔法陣を壊すには、正確な魔法陣にしなくていい。つまりは、別の線を入れればいいだけだ。
指を傷つけ、自身の血を流し、魔法陣に別の線を入れる。
正確だった魔法陣から攻撃魔法は発せられず、不発のままで終わった。
驚いた表情を見せる黒い人物は、隙を作り、そこを俺は突いた。
「『氷の矢、再び引かれる一つの鋭き爪。我の元へと惹かれる数多の狂気。誘われる時間時空への旅人。
狂気の矢』!!」
俺の後ろに展開させる魔法陣から、氷の矢がものすごいスピードで進み、その隙でイネスさんを解放する。
当たらないように武器らしきもので跳ね返しているが、そのまま落ちず空間に刺さり、作られた亜空間の中へと悲鳴を上げながら、落ちて行った。
「………………えっと………」
驚いた表情で俺の方を見るイネスさんに対して、俺はなんと説明すればいいのか分からなかったが、この時は何も言わずにした。
「ともかく、どうやって戻るか考えるか」
「………そうだね」
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終わったかと思いきや、後ろで伸びていたもう一人が起き上がったことを、俺たちはまだ知らなかった———。
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ムクッと起き上がる黒い人物は、不敵な笑みでアルベールたちを見ていた。それは、恐怖に感じるほどの笑み。
ニヤリと笑みを浮かべるそいつは、地面に手を置き、魔法陣を描いた。密かに。バレずに。




